« 西国旅日記 第三夜 | メイン | 明晴学園開校! »

流行歌

「きみはきみのことが好きでありますように」というサビの加川良の歌*1)は好きなのだが、
感動したい人が集まっているような場所で、「きみはきみのままでいいんだよ」「ちがっていてみんないいんだよ」といったことを(「障害は個性」―いろいろに議論はあるにせよ―と当事者が立てて切り開いてきたものが、なにか当事者不在のきれいごと、感動ネタにズラされて使われている―「いいんだよ」って誰が言っているのかという問題でもある)、あんまりたくさん聞かされると、なんだか金子みすゞじゃあるまいしと、ひねくれものの私は思ってしまうのでした。

自閉の子どもの素晴らしい能力や、中途障害の人の受容と共感といった話はいいのだけれど、しだいに、障害をもった人がいることで他の人々が生かされているとか、神様が作った存在にはみんな意味があるなんていう話になってくると、それって社会的に作られた不利や差別ということを捨象して、問題を棚上げしてしまうことにかえって加担してるのでは、少し転んだらなんたら宗教の宿痾論と変わらないところに行ってしまうのではと(後世の人を救うために「障害」をもって生まれたなんていう話など)、少し文句の一つや二つは言いたくなり、でも一方で、当事者も親の人たちもこんなに集まって、上映された映画に涙し感動し、映画の主人公で講演もされた養護教員のかたの本も飛ぶように売れている現実に*2)、「ああ、これでは私たちが作りたい売りたいような本はなかなかに厳しいわけだ」と妙に納得してしまったりもした次第。

「流行歌」はそっちなのでありましょう。けれども、「そればかりではないでしょう」と言わなくてはいけないと思います。
そんなふうに奉られて怒っている人たちだって(たぶん)たくさんいるし、「美しい心」の人たちだけが物事を語るのはやはりどうなのだろうと思うし、「愛と正義を否定する」ってことはやはり大事なものを含んでいるだろうと……。

*1) 去年だったか、NHKBSの「フォークの達人」なる番組で、良さんが、ハンバートハンバートの佐野さんをゲストに呼んで、やや照れくさそうに一緒にやったバージョンがなかなか良かったのです。

*2) タイトルに数字が入っている映画と言えば、わかる人にはわかるのだそうで……。私がなぜ見に行くことになったかは……ちょっと言えない。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seikatsushoin.com/seika/mt-tb.cgi/64

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2008年02月26日 19:11に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「西国旅日記 第三夜」です。

次の投稿は「明晴学園開校!」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.