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2008年12月 アーカイブ

2008年12月03日

流儀

あまのじゃくかもしれないが、「ササッとわかる〜」とか「これでわかる〜」といったタイトルを見ると(中身は素晴らしいものであったりすることはもちろん前提した上で)、そんな風にタイトルづけしてしまっていいのだろうかと、なんだか少し思ってしまう。
「ササッと」わからない、「これで」と言われてもなかなか…ということのほうが多いから、みんな悩んで考えて、思いあぐねては、他人(ひと)に聞いたり、ものを読んだりして、また考えている。なにか、そういう営みに「ササッと」はあまりそぐわない気がする。出掛けの掃除じゃないんだし…。 

新刊『流儀』が昨日、できてきた。第二部の山田真さんと立岩真也さんの対話を編集者として読ませていただいて、ときには「解」がないことをむしろ大事にせねばならないということを教わった。それは「ササッと」とか「これで」といって「解」をあらかじめ設定して、強制力をもった「安心」を与えるような仕方とは対極にいて、だけれどずっと誠実な思索の作法だ。「解」はさがす、しかし安易な「妥協」はしない。択一を求められて、どちらも「違う」と言わねばならないことがあると、そう語られている。

一方、第一部の稲場雅紀さんと立岩さんの対話で語られている「流儀」は、二つのどちらをも大事にすべきだというお話であったりする。ロビーイングを嗤わず真っ当に評価する、そしてそれと同時に、いやどちらも欠かすことのできぬものとして、扇動し挑発するラディカルな騒ぎも正等に認め必要だとする。それで物事は前に転がるといったことが話されている。

帯にも書いたが、「これまで」を知り、「これから」を見通すために、読んでおくべくことがぎっしりと詰まっている本だと思う。稲場さんの書き物がまとまった形で読めて、そのお考えの全体像がつかめる第一部の、そして立岩さんのマニアックとも言え、それ単独で一つの書き物ともなっている注・引用で構成された第二部の、それぞれ「下段」にも注目!

ネット、リアルを含め書店での発売は今月10日前後からです。是非お読み下さいますように。

2008年12月29日

年の終わりにサード に加えて『良い支援?』出版記念企画など

生活書院3年目の年も暮れようとしている。今年は14点の本を世に送り出した。

まっとうに生きようとしている人たちをこき使い、ウソやズルの錬金術で金を儲けて来たまっとうではない連中が、そのウソやズルがほころぶことによって儲けを失いそうになり、またぞろまっとうな人たちにその失敗のつけを押し付け、この暮れは人びとの「生存」すら脅かされるそんな年の瀬になってしまった。「なんかありませんかねじゃ、仕事は見つからない」などどこの期に及んで言い放つ人に、今日のねぐらも一切れのパンのあてさえもない人びとの姿など見えるはずはないと、それは思いつつも…翻って自分はどうだろう。

不当に生き難い生を生きざるを得なくさせられている人たちに寄り添い、またその不当に対抗する理屈を本を通してと思い、そうした本は出してきたし、出して行きたいと自分を納得させつつも、はたしてどれだけそれは人びとに届き、かつ力になっているのか。「本なんて読んでる場合ではない」という言葉に対し、「本の力」のことをもちろんいくつかの理屈で述べることは出来ても、現実に、本の売れ行き一つとってもそれはなかなかに厳しい。ただそれはこれまでもそうだったし、これからも大きく変わることはないだろう。それはまあいい。

むしろ、考えるべきは、そうした(寄り添う)本を出していることが、なにかの免罪符になっていはしないかということへの怖れであり、そこへの自省だ。本を作る日常の仕事の過程で、あるいは仕事を離れた時間の中で、人や人との関係性や場へのコミットの仕方などで、抑圧的になっていたり、打算的になっていたりしたとして――もちろんそうしたことが全くないなどということはあり得ず、ではあるが――出している本たちに壁になってもらって、言い訳をしている、あるいは居直っている、そんなことはないか。もっと言えば、(そうした)本を作っていればいいだろう偉いだろうといった気分に、どこかでなっていたことはないか。もちろん、それだけでいいはずもなく偉くもまったくないわけで、そのことを常に思いつつ、その上でなおということを自分に問いかけつつ、また来年も本を作っていくということなのだろう。

そんなことを考えたひとつのきっかけが、『良い支援?』刊行後、この本と絡みつつ開催されている、たこの木クラブ主催の連続講座であったりする。もちろん成り立ちがそうではない本もたくさんあって、そうした本はまたそれでいいのだが、『良い支援?』の著者の一人であり、たこの木主宰の岩橋さんの姿を見ていると、書くこと話すことと日々の仕事・生活が見事に本当にべたっと当たり前のようにくっつき重なりあっていてかつ、「え、それがどうしたの」という感じなのである。その感じ、上手く説明できないので、是非、連続講座に来ていただければと思う(毎回、生活書院の本を私が売っています)。
さらに、『良い支援?』については、ずばり出版記念企画と銘うった、第13回パーソナルアシスタンスフォーラム〈嫁〉にだす人/貰う人が明けて1月17日に開催される。こちらは4名の著者そろい踏み。あわせて是非お出かけを。

というわけで、今年も一年お世話になりました。きつかったり、難しかったり、色々とするわけですが、それでもなお、明日へと向かう理屈は紡ぎださねばならず、それは一方でけっこう楽しいことでもあると信じて、来年もまたそのお手伝いが出来ればと、思っています。

良い年を!

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