ずっと前から会うたびに「よろしくね」と頼んでいた人の原稿が、わけが少しあって最終稿ではないが、手許に届いた。期末月末で零細企業とはいえ、なかなかに忙しいのだが、嬉しくてちょこちょこ読んでみたりする。やっぱり面白い。他の誰にもあまり似ていないが人をひきこむ文章が書ける。何より、多くは見過ごしたり、そう大事なものとは考えない“出来事”やら“摩擦”やらを、そうっと掬いだしてきて、どうだ見つけてすごいだろうなどとは少しも自慢せずに、大事にゆっくり考えてみるというスタンスが心地よい。
扱っている問題はけっこうやっかいだ。これまで語られてきたことのうち引継ぎくり返し語られるべきは、何度でもという立場にたちつつ、一方納得いかぬ枠組みに組み込まれることはなんとしても避けつつ、絵空事ではないリアリティを獲得しつつというのは容易ではない。容易ではないが、生意気なことを言わせてもらえば、この書き物でのこの人の仕事はそこをかなり頑張れている(まだ読み始めたばかりだが)ように思う。
「わけ」に関わる形式の制約もあってか、くり返し語ることになっている部分が少しあるようにも思い、全体ととして「量」がもっとあってもいいようにも思ったりするが、もろもろのことは「出版」の最終稿に向かう過程でクリアできる問題だろう。何について考えている書き物かは、このブログを読んでもさっぱり分かっていただけないと思うが(エントリーのタイトルで想像はつくかしらん)、まだそこまで言うわけにもいかず、でも、やっぱり嬉しかったので原稿をいただけたことだけは書きたかった。
今年の秋までにはと、私は思っています。刊行されたら、ああこれだったのかということで、是非お読みいただければと……。