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2009年09月 アーカイブ

2009年09月10日

保護観察付き執行猶予――裁判員制度とは何か

以下今日の朝日新聞一面。いずれも判決は保護観察付き懲役3年執行猶予4年である。

「介護に疲れて寝たきりの妻を包丁で刺した夫。無理心中しようと父親の頭をガラス製の灰皿で殴った息子。家族間で起きた二つの殺人未遂事件の裁判員裁判で、山口、神戸両地裁の裁判員らが9日に言い渡した判決は、いずれも被告の立ち直りを求めるものだった。市民に身近な事件。裁判員は何を考えたのか――」

裁判員裁判の市民感覚が生かされた云々……と、評価する向きが多いようだが、これはやばいと思ったのはわたし一人ではないと思う。
「介護疲れ」「生活苦」「被害者となった家族自身が情状酌量を訴え」「社会が悪い」……そして加害者に集まる同情、「他人事とは思えない」という裁判員の声。

これはいつか来た道なのではないか。またぞろ、というより一層強化される形で、障害をもった子や人が、親や親族によって殺され、なのに同情は加害者に集まり、そして「国民」「市民」が参加しているという免罪符のもとに裁判員裁判で「減刑」されていく、そんな流れが現実になろうとしている。
裁判員制度批判の中でよく語られるのが「冤罪の温床」になるということだが、ことはそれだけに留まらない。感情が理性を支配し、「だからといって許されない」ことが、「許されてしまう」ということだって、きっと出てくる。

「国民の司法参加」と聞こえはいいが、要はめんどくさいもの、あとからごたごたしそうな事案はすべて「市民」におっつけて知らん振りという(しかも専門家が誘導して望むような結論にもっていっておいてということも…)、「司法の責任放棄」が裁判員制度の本質であり、わたしたちはそれにいいように使われようとしているだけではないのか。

最後は自社本の宣伝かと言われればそれまでだが、来週15日に出来てくる、岡島実弁護士の『裁判員制度とは何か』は、この杜撰な制度が生れた背景、導入の真の狙いを明らかにするとともに、制度をどう突き崩していくか、本来の「国民の司法参加」はどうあるべきかまでを簡明に論じている。「良心的裁判員拒否のススメ」とでも言うべき具体的方策も盛り込んであり、制度への賛否はともかくとして、まず事の本質を理解し知るために是非お読みいただきたいと思う。

2009年09月18日

書評情報――お詫びと言い訳

HPの書評情報の更新を気がつけば2月ぐらいからしていません。やれていません。書いてくださったかたたち、取り上げていただいた本の著者の皆さんに本当に申し訳なく思っています。「持っている力をこえている」という状況が続いていましたが、9月から働き手が一人増えました。HPもなんとかあと2月ぐらいのあいだには今少し、動きをよくしようと思っています。しばらくのご猶予を(もう一つ、新刊書のテキストデータの提供も遅れ気味になっています。こちらも早急に対処します。重ねてのお詫びです)。

というわけで、情けない言い訳とお詫びをさせていただいたところで、以下今年2月から現在までのとり上げていただいた書評と媒体名、とり急ぎの列挙です(敬称略)。

2月 山下幸子『「健常」であることを見つめる』図書新聞2905号、評者・岡原正幸
   寺本晃久他『良い支援?』出版ニュース2月中旬号
   立岩真也他『流儀』インパクション167号、評者・鈴木ふみ
   ポール・スピッカー『貧困の概念』生活協同組合研究397号、評者・鈴木岳
   吉川かおり『発達障害のある子どものきょうだいたち』ふぇみん2883号
3月 同上、精神科看護2009/3号
   同上、部落解放2009/3号
4月 寺本晃久他『良い支援?』精神科看護2009/4号 
   同上、手をつなぐ2009/4号
   乘富秀人『手話で生きたい』聴覚障害者の情報と文化2009春号
5月 寺本晃久他『良い支援?』図書新聞2916号、評者・三井さよ
   長瀬修他『障害者の権利条約と日本』精神医学2009/5号、評者・伊藤哲寛
   立命館大学生存学研究センター『生存学vol.1』出版ニュース5月中下旬合併号
   玉井真理子他『捨てられるいのち、利用されるいのち』ふぇみん2891号
   倉石一郎『差別と日常の経験社会学』ソシオロジ165号、評者・伊地知紀子
   同上、ヒューマンライツ254号
   岡本正子他『教員のための子ども虐待理解と対応』部落解放2009/5号
6月 同上、児童心理2009/6号
   山下幸子『「健常」であることを見つめる』福祉労働123号、評者・深田耕一郎
   障害と人権全国弁護士ネット『ケーススタディ障がいと人権』法律新聞1813号
   立岩真也他『流儀』オルタ2009/5-6号、評者・藤本拓自
   飯野由里子『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』社会学評論237号、評者・杉浦郁子
7月 浮ヶ谷幸代『ケアと共同性の人類学』出版ニュース7月下旬号
8月 同上、看護学雑誌2009/8号
   西倉実季『顔にあざのある女性たち』紀伊國屋書店書評空間、評者・石井政之
   障害と人権全国弁護士ネット『ケーススタディ障がいと人権』いくおーる2009/8
9月 同上、リハビリテーション516号、評者・関哉直人
   浮ヶ谷幸代『ケアと共同性の人類学』北海道新聞2009/9/6、評者・立岩真也
   同上、看護2009/10号、評者・長山亜紀子
   西倉実季『顔にあざのある女性たち』週刊読書人2806号、評者・好井裕明

*こちらで把握していないものございましたら、是非ご指摘をお願いします。

   

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