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2010年08月 アーカイブ

2010年08月12日

お盆休みの前に――臓器移植がよいこととされることについて

交替で休んであけておくというわけにもいかず、明日から17日まで事務所もしめて盆休みをとらせていただきます。

このところ気持ちがザワザワするニュースが続きました。新聞など読んでいると、こんなこと言うのは少数派なのかもしれませんが、臓器移植が家族の同意だけで認められ、切り分けられた臓器が各地で利用され、これを「命のリレー」のはじまり、などとする。このことが存外すんなりと世間に受け入れられ、「私たちもいざというときのために話し合いしておこうか」といった光景が好ましいものとして語られる。本当に恐ろしい時代が始まったものだと思います。

じゃあ、「オマエは5年も6年も臓器を待ち続けている、いたいけな子どもとその家族のことをなんとも思わないのか」と言われる。でも、くり返し言わざるを得ないのですが、そのことと、家族同意だけでいわば「殺されていい命」があるなどということとは、同列においていい話ではないのです。障害者とりわけ知的の当事者の姿などここではひとかけらも考えられていません。「いらない命」と「救うべき命」を、「善意や同情」というオブラートにくるんで、実は冷徹に切り分けていく事態がここにある、といったら言いすぎでしょうか。ネットでは死刑囚の人の臓器ならどうだなどということまで、平気で議論する人までいます。暗澹たる気分とはこのことです。

死刑の執行についても裏切られた気持ちで一杯です。他になんのとりえがなくとも、少なくもこの政権の間はあるいはこの法務大臣の間は死刑は執行されないだろう、その一点だけで票をあの党に入れた(私はそうでした)人もいるのではないでしょうか。社会の安寧と言う。「被害者遺族の気持ちを考えたことがあるのか」と言う。しかし、またぞろそれでも言わねばならないのですが、そのことと、国家が人を殺すことを認めてよいということとは、同列におかれていい話ではないと思うのです。冤罪の可能性のことももちろんあります。ただそれだけではないと思います。国が人を殺すことで、罪と罰の意味すら奪ってしまう、何もなかったことに却ってしてしまう、なぜと考えることは止めよと私たちすべてに強要する(その意味で終身刑にも私は反対です)。それはとても怖いことです。

ザワザワします。でも考えるのは止めず、それはどうしても納得しがたいということは、最後までぶつぶつぶつぶつ文句を言っていこうと思います。

2010年08月31日

「感動どうでしょう」と言われても

見てもいない24時間テレビのことをああだこうだは言いたくはありませんが、なぜ何年もあのような番組が続き、今年は歴代9位の視聴率だなどということになっているかが、さっぱり分かりません。昔も安鶴さんの言葉を引いてブログに書いたことがありますが、おそらく何かに感動しているのではなく、そういう事柄や人に感動している/できている「良い人としての自分」に感動しているのだと思うのです。したがってその感動とやらはその場限りのものであり、決して持続したり自分を何か具体的な行動に突き動かすものにはつながらない。言い過ぎなのかもしれませんし、確かに当事者の方も含めああいう番組に参加し、紹介もされということは、紛れもなく喜びなのだろうし、ひねくれもんは黙っておれというあたりが妥当なところとも思います。

でも感動は、持続して考えたり本当に難儀な事柄からは目をそらし、たまさかの免罪符として機能しているだけではないかと疑ってみるのは、やはり大事だと思います。しかもそれが、こう作ればこう反応するだろうという仕掛け・演出の中で、悪い言葉で言えば「強要」されたものであると、もしするなら、実はこれほど人をなめた話もないように思うのです。安易に感動なんかせんぞ、そんな感情で一時カタルシスを味わって、明日からはまた何事もなかったように自分の日常に埋没するなんてことは、あたしはイヤだ、ぐらいの気分で付き合って、この手の「感動どうでしょう」系のお話はちょうどいい、そんなふうに感じます。

見てもいないで言うなと言われるかもしれませんが、中のひとつひとつの話を問題にしたいのではなくて、そういうものの集積としてああいう番組が構成されているというあり方そのものに、違和感を覚えるのです。もちろんチャリティーのお金やその使われ方に、けちをつけているわけではありません。ただ、地域での日常を誰もが不当な差別を被ることなく生きていくということの持続と展開のためには、価値観そのものの問い直しだとか、その転換に伴っての具体的な制度の変更だとか、が必要な気がして、そのために大事になってくる、多くは面白くもなく感動的でもなかったりする、とても様々なこととは、少しばかり遠くに位置しているのではないかなあと、やはり思ってしまいます。

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