「あやしい。お迎えが妙に早すぎる。そっちがその気なら打つ手は選ばん」
――比類なきグラフィックノベル
塩とコインと元カノと
シャドウライフ
「こんなところで生きたくはない」。
娘たちにケアつきホームに入れられてしまったクミコは76歳の日系カナダ人、夫はとうに亡い。よかれと思って決めてくれたのだからと一度は従ってみたものの、ひそかに逃げだしてイースト・バンクーバーの街なかに小さな部屋を借りた。
長女とはメールで連絡をとっているものの、住所は明かしていない。
部屋を自分好みにしつらえ、食べたくなったものを食べ、公営プールで泳ぐささやかな楽しみを満喫するクミコを狙い、ケアホームからあとをつけてきたのは「死の影」だった。
死神の子分として働く「影」がクミコを連れ去るべく押し入ってきたその日、気楽な日常は一変する。
持ち前の頭脳、ユーモアのセンス、新しく得た味方たち、昔なじみとの絆――すべてを動員して生きるための闘いが始まったが、老いの身でいつまで運命に抗えるだろうか?
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【著者紹介】
ヒロミ・ゴトー
日本からの移民で、マスキーアム、スコーミッシュ、スレイル・ワトゥースの人々から正当な手続きを経て譲渡されたのではない地に感謝の念をもって住んでいる。"Chorus of Mushrooms"(=『コーラス・オブ・マッシュルーム』増谷松樹訳 2015年、彩流社)、"The Kappa Child" のほか、児童やヤングアダルトのための小説3篇、詩集1冊、短編集1冊がある。本書は初のグラフィックノベルである。
【漫画家紹介】
アン・ズー
漫画家、イラストレーターで、イグナッツ賞のノミネート経験をもつ。メリーランド芸術大学卒業。
【訳者紹介】
ニキ リンコ
翻訳者。訳書にジェフ・ワイズ『奇跡の生還を科学する』(青土社)、キャスリン・アースキン『モッキンバード』(明石書店)、モリー・バーンバウム『アノスミア』(勁草書房)、アーヴィング・ケネス・ゾラ『ミッシング・ピーシズ』(生活書院)など。
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【原著推薦文】
「人が老いていくということを、そして、精いっぱい生きる日々の喜びとままならなさとを見つめるその観察眼は、人々の内部に息づいていた感情をよびさます。読み終えたあとも心の片隅に食いこんで、あなたと共に長く生き続ける。そんな物語だ」
――ジェフ・ヴァンダミア(『全滅領域』シリーズ他)
「ヒロミ・ゴトーの物語には類例がない。超自然を書きながらすさまじく人間くさく、神話や伝説を扱いつつもしっかりと今、ここに根をおろしている」
――ジリアン・タマキ(『THIS ONE SUMMER』他)
【目次】
プロローグ
Chapter One
Chapter Two
Chapter Three
Chapter Four
Chapter Five
Chapter Six
Chapter Seven
Chapter Eight
Chapter Nine
Chapter Ten
Chapter Eleven
Chapter Twelve
Chapter Thirteen
Chapter Fourteen
Chapter Fifteen
Chapter Sixteen
スケッチ
著者あとがき
謝辞