誰ひとりとして虐待の被害者・加害者にしてはならない
自分で自分を不幸にしない
「性的虐待」を受けた女性の語りから
人が人として生きられない現実をもたらすこともある性的虐待。
その現実に目を背けないユウと周りの人たち。
マザーテレサは「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」と言う。
周りの人たちの温かな関心に支えられ、ユウは自らの物語を語り直し続ける。
──田尻由貴子
(女性のためのシェアハウス「由来ハウス」代表、慈恵病院「こうのとりのゆりかご」設置時の看護部長)
【目次】
PARTⅠ 自分を語る
第1章 子ども時代を思い出す
幼い頃のわたしの家族/おしゃべりなわたし/思い出の中のきれいな母/母に叱られた記憶
「継父」を招き入れたわたし/「継父」から受けた「性的虐待」/誰も助けてくれない日々
学校は救いの場/我慢の限界/周りにわかってもらえないつらさ/人づてに聞いたその後の「継父」
第2章 施設で暮らす
母への執拗で過激な暴力/母に与えた恐怖/「なんでわたしを置いてくんだ!」
生きている価値のないわたし/わたしを変えた出来事/児童養護施設の暮らし/楽しかった高校時代
通帳をつくってくれた姉/カズキとの出会い/「この人しかいない」/カズキの子どもを妊娠
はしかに罹って中絶/罰せられない苦しさ/「あんた、い女だね」/「ユウは少しも汚くない」
第3章 自分の家庭をもつ
再び妊娠そして結婚/結婚までの道のり/産科の先生との出会い/初めての出産/二四時間三六五日
誰にも頼らないで頑張る決意/後輩のお母さんによる手助け/その人との訣別/ワンオペ育児の限界
お義父さんお義母さんとの関係/「おばあちゃん」としての母/次女ミズキの誕生
優先順位はまず子ども/二人三脚の子育て/子どもに届けたいメッセージ/わが家は五人家族
第4章 娘たちと一緒に育つ
ゆらぐ子育ての責任/子どもにとっての「よい親」/なんて幸せな子たち/娘たちに教えてもらうこと
かつて見た光景/怠ってはならない子どもへの説明/やっとの思いで一時保護/ゆれる気もち
わたしだからこその子どもの目線/いろいろあってよい子育ての方法/自分で決められること
覚えていないのがあたりまえ/苦しみながら生きている人間のひとり
PARTⅡ 母を語る
インタビュー1 わたしの中のふたりの自分
インタビュー2 大事にするための距離
PARTⅢ 語りから見えてきたこと
第1章 ユウさんと母親の関係――親役割意識の変化をとおして
1 ユウさんの母親への思い
2 母になったユウさんの親役割意識
3 親役割意識の移り変わりとともに変わる母親への思い
第2章 「その後に生きる者」の可能性――ユウさんの語りの特徴をとおして
1 「語り」の世界
2 カズキさんとの間で起こった出来事――その後の生き方が影響する継続的な語り直し
3 母親との間で起こった出来事――行き詰まりに陥らない継続的な語り直し
4 胎児との間で起こった出来事――主体的な書き換えによる継続的な語り直し
おわりに
謝辞