日本の児童虐待対応制度は、つまるところ何が十分で何が足りないのか
被虐待児の視点からみる児童虐待対応法制度
その構想と制度「評価」の検討
対応は、なされればよいというものではなく、対応のあり方そのものが問われる必要がある。
徹底して被虐待児の視点に立ち、被虐待児の福祉に資する児童虐待対応法制度の構想を提示する。
【目次】
はじめに
第1部 児童虐待対応制度をめぐる評価研究の論点
序章 なぜ児童虐待対応法制度を研究しなければならないのか
1 問題の所在
2 研究目的
3 本書の構成と研究方法
4 用語の整理
第1章 日本の児童虐待対応法制度の変遷
1 本章の目的
2 第一期 明治期から一九四五年まで――一九三三年「児童虐待防止法」の制定
3 第二期 一九四五年から一九九〇年代半ばまで――「児童福祉法」による対応
4 第三期前夜 一九九〇年代半ばから二〇〇〇年まで――二〇〇〇年「児童虐待防止法」の制定
5 第三期 二〇〇〇年から現在まで――二〇〇〇年児童虐待防止法と児童福祉法による対応
6 小括
第2章 児童虐待対応の制度評価はどのようにおこなわれてきたのか
1 本章の目的
2 日本の児童虐待対応法制度に対する評価研究
3 他国を対象とする児童虐待対応法制度の評価研究
4 研究目的
第2部 日本の児童虐待対応法制度の特徴
第3章 児童虐待対応法制度の評価指標の構築――「『参加』の権利スケール」の構築
1 本章の目的
2 評価軸の構築
3 評価軸の目盛付け
4 「『参加』の権利リスト」と「児童虐待対応制度の構造分析モデル」との接続
第4章 日本の児童虐待対応法制度の特徴――「『参加』の権利スケール」の適用
1 本章の目的
2 分析対象、フェーズの設定、必要得点・十分得点の設定
3 分析と結果
4 各国の児童虐待対応法制度に対する評価の意味
5 小括
第3部 被虐待児にとっての望ましい制度とは
第5章 理論的側面からの検討――パレンス・パトリエ思想とパターナリズム論から
1 本章の目的
2 国家による児童虐待対応とパレンス・パトリエ思想
3 パレンス・パトリエ思想とパターナリズム論
4 子どもは無制限にパターナリスティックな介入を受ける存在であるのか
――大人/子ども区分の正当化をめぐる議論
5 パターナリズム論から正当化される児童虐待対応法制度の構造
6 小括
第6章 経験的側面からの検討(1)――被虐待児は「参加」を保障されるべき対象であるのか
1 本章の目的
2 調査の概要
3 被虐待児の経験に「大人/子ども区分」は適用できるか
4 被虐待児は「参加」を保障されるべき対象であるのか
5 小括
第7章 経験的側面からの検討(2)
――被虐待児の被介入経験から望まれる児童虐待対応法制度
1 本章の目的
2 被虐待児の被介入経験にかんする先行研究
――欧米の被虐待児はどのように被介入を経験しているか
3 日本の被虐待児はどのように被介入を経験しているか
4 日本の被虐待児の被介入経験とパターナリズム論との接続
5 日本の被虐待児の被介入経験から構想する望ましい児童虐待対応制度のあり方
6 法制度として対応すべきことと法の限界
7 子どもの「参加」権論における日本の被虐待児の声の位置づけ
8 小括
第4部 「望ましい」制度は実現できるのか
第8章 日本の児童虐待対応法制度の構造を支えるものは何か
1 本章の目的
2 児福法または虐防法の立法ならびに改正過程における思想にかんする先行研究
3 立法府等の審議で被虐待児の「参加」はどのように扱われたか
4 「大人の義務」思想と「子どもの権利は保護を受ける権利」思想の頑健さ
5 なぜ日本の被虐待児の「参加」は法から排除されるのか
6 小括
終章 児童虐待対応法制度の「評価」と構想
1 本書の研究目的
2 評価指標を構築し日本の法制度の特徴を明らかにする
3 理論と経験的研究の側面から望ましい法制度のあり方を構想する
4 改正の可能性を考察する
5 被虐待児の視点からみる児童虐待対応法制度の構想
6 本研究の意義と今後の課題
資料/文献/謝辞