「本質」や「真理」からではなく「有用性」によって「障害」を問うということ
「障害とは何か」という問いを問い直す
「事実」から「有用性」に基づいた障害定義の戦略的・実践的使用へ
さまざまな理論や信念から導きだされた「障害とは何か」(障害という語は何を意味するのか)という問いに対する複数の解(複数の障害定義)を「どのように使用すべきか」について、多様な状況を想定しつつ、「真偽」からではなく「有用性」から検討し、障害定義の実践的使用の途を探る。
【目次】
序章 問題意識と目的、および方法、ならびに意義
第Ⅰ部 理論編
第1章 障害定義をめぐる対立
1-1 問題意識と目的
1-2分析
1-2-1 障害は社会的に構築される
1-2-2 社会的に構築された障害にも「実在」をみなければならない
1-2-3 障害とは何かをめぐる対立の解消、対立構造の明確化、そして新たな障害理解へ
1-2-4 障害の多様な定義がなぜ成立するのかを「全体論」から明らかにする
1-2-5 障害に「真理」を求めるべきではない
1-3 小括
第2章 障害定義の戦略的・実践的使用
2-1 問題意識と目的
2-2 分析
2-2-1 すべての障害定義が正しいというわけではない
2-2-2 「有用性」のフェーズでの批判への応答
2-2-3 多様な障害定義の戦略的・実践的使用へ
2-2-4 どのように障害定義の使い分けを決定すべきか
2-2-5 「事実」のフェーズを離れた場合、障害定義は一つであるべきか、複数であるべきか
2-3 小括
第Ⅱ部 実践編
第3章 障害者の痛みをどう語り、障害をどう定義づけるべきか
3-1 問題意識と目的
3-2 分析
3-2-1 「実在」し、そして、生々しいものとしての障害者の痛み
3-2-2 障害者の痛みは、社会・文化によって変容する
3-2-3 障害者の痛みの「実在性」と構築性を等しく認める
3-2-4 痛みという語は「痛み」の感覚から束縛を受けない
3-2-5 障害者の痛みをどのように語っていくべきか――モリスの場合
3-2-6 障害者の痛みをどのように語っていくべきか――熊谷の場合
3-3 小括
第4章 知的障害をどう語り、どう定義づけるべきか
4-1 問題意識と目的
4-2 分析
4-2-1 社会モデルにおいて周縁化された知的障害者を構築主義的に説明する試み
4-2-2 知的障害の「実在面」に目を向けることの「有用性」
4-2-3 disappearanceとdys-appearance
4-2-4 disappearanceとdys-appearanceから身体障害を語る
4-2-5 知的障害者の「わからなさ」は、身体と世界との関係でとらえたとき痛みとなる
4-2-6 知的障害をどう定義し、その痛みをどう語ることが「有用」かの検討
4-3 小括
第5章 障害定義を使い分け、障害者運動を乗り換え・移行する
5-1 問題意識と目的
5-2 分析
5-2-1 「青い芝の会」からみるアイデンティティポリティクスの「有用性」
5-2-2 UPIAS からみるアイデンティティポリティクスの「有用性」
5-2-3 アイデンティティポリティクスの限界
5-2-4 「われら」・「われわれ」と「かれら」の境界のあり方をめぐる軋轢
5-2-5 アイデンティティを拡散させる「緩いつながり」
5-2-6 「差異」による絶対的な平等
5-2-7 状況に合わせた「接続」と「切断」
5-3 小括
終章
結論と本書の位置づけ、および学術的意義、ならびに残された課題
付記
謝辞
文献