なぜ、インペアメントに照らした合理的配慮だけでなく、規範からの逸脱に対応した配慮が必要なのか
見えない障害が生じた人たち
高次脳機能障害の社会学
高次脳機能障害のある人は、自己開示/非開示/「パッシング」を用いて、どのように社会を渡っていったのか、障害当事者や支援者への聞き取りを通して、その動機と葛藤を明らかにし、望ましい合理的配慮の在り方を提示する。
【目次】
はじめに
序章 自己開示と合理的配慮
0.1 高次脳機能障害と見えにくさ
0.2 先行研究
0.2.1 病・障害だとわかること
0.2.2 障害者の就労とカミングアウト
0.2.3 パッシング
0.2.4 見えない障害と合理的配慮
0.3 本研究の視座と目的
0.4 本書の構成
第1章 高次脳機能障害をめぐる制度的現状
1.1 高次脳機能障害とは
1.2 診断基準と制度の成り立ち
1.3 「見えない障害」かつ「後天的障害」と合理的配慮
1.4 高次脳機能障害をめぐる合理的配慮
第2章 研究協力者の概要と調査方法
2.1 調査方法
2.2 障害当事者(19名)
2.3 支援者(12名)
2.3.1 就労移行支援
2.3.2 就労継続支援
2.4 高次脳機能障害者の上司・人事担当者(3社)
第3章 高次脳機能障害の受け止めをめぐる葛藤
3.1 発症の契機の特性
3.1.1 研究参加者
3.1.2 分析方法と倫理的配慮
3.2 研究参加者の概要
3.3 診断の否定から気づきに至ったケース
3.3.1 高次脳機能障害の診断がつき、診断名を聞いていた事例
3.3.2 高次脳機能障害の診断がつかなかった事例
3.3.3 高次脳機能障害の診断はついていたが、本人が知るまでに時間がかかった事例
3.4 病気/事故の前と違う
3.5 症状と診断名の結びつき
3.6 高次脳機能障害者になって抱えた葛藤
第4章 高次脳機能障害と戦略的自己開示――就労とジレンマに焦点を当てて
4.1 研究方法
4.1.1 研究参加者とデータ収集方法
4.1.2 データ収集期間と分析方法、倫理的配慮
4.2 研究参加者の概要
4.2.1 A氏のケース
4.2.2 B氏のケース
4.3 考察
4.3.1 高次脳機能障害の慎重な開示/非開示
4.3.2 見えない障害を開示/非開示して生活する
4.3.3 戦略的自己開示と不可視性のジレンマ
4.4 結論
第5章 パッシングに潜在する複合的な不安――高次脳機能障害者のライフヒストリーを事例に
5.1 研究方法と研究対象
5.2 高次脳機能障害者によるパッシングの背景と動機
5.3 パッシングをめぐる実践――K氏の事例
5.3.1 学生時代から就労後におけるパッシングをめぐる実践
5.3.2 パッシングをめぐる不安と補償努力の限界
5.3.3 障害を隠すのではなく、堂々と主張する
5.4 結論
第6章 高次脳機能障害者の受傷後の就労支援をめぐる困難と公的制度の再考
6.1 研究方法と研究対象
6.2 訓練開始前から訓練開始後にある難しさ
6.2.1 会社への橋渡し
6.3 高次脳機能障害の受け入れ難さに伴う葛藤
6.3.1 高次脳機能障害者による障害受容の難しさと反発
6.3.2 就労後に高次脳機能障害者が抱える葛藤と支援の介入
6.3.3 支援員による葛藤
6.3.4 社会保障制度の理念先行とオプションの欠如
6.4 おわりに
第7章 「見えにくい障害」に対する「合理的配慮」をめぐる葛藤――高次脳機能障害を事例に
7.1 研究方法と研究対象
7.2 合理的配慮を受けて生じた変化とその葛藤
7.2.1 配慮の不足と「インペアメント」の主張の難しさ
7.2.2 配慮の過剰と「やりがい」をめぐる問題
7.3 障害の可変性と説明責任に関する問題
7.4 高次脳機能障害者に対する合理的配慮と別種の配慮
7.5 結論
終章 高次脳機能障害者は自己開示を用いてどのように社会を渡っていったか
8.1 総括
8.2 望ましい合理的配慮の在り方に向けて
8.3 今後の課題
付録
初出一覧
あとがき
文献表