医療的ケアの必要な子どもの母親は、どんなことに苦労し
どんなことに悩みながら仕事を続けてきたのか……
医療的ケアの必要な子どもの母親だって働きたい
不可視化された「医療的ケアの担い手問題」
自身の33年間に及ぶ経験をもとに、「医療的ケアの担い手問題」「障害児の母親規範」といった根本的問題を問いながら、医療的ケアの必要な子どもと家族のこれからと、母親の就労問題を考える、当事者・家族、専門職、研究者必読の書。
【目次】
はじめに
Part1 医療的ケアが必要な子どもと母親
1 医療的ケアが必要な子ども
わが家の娘/ 私について/「医療的ケア」って?/「医療的ケア児」/「医療的ケア者」
重症心身障害児(者)
2 医療的ケアを行う日々
入院、そして退院後の嵐のような日々/経鼻栄養チューブの定期交換の地獄/みんなに怖がられる
3 悪化していく体調と、増えていくケア
増えていく医療的ケア/人工呼吸器(NPPV)を使うようになる/夜間のケア/悪化しやすい子どもの
体調/笑顔
Part2 悩みながら仕事を始める
1 めざしていたことを諦められなかった
2 療育が始まる前
子どもをみてくれる人が見つからない/預け先が見つからないことの意味/実家の母にたのむ
3 療育時代
母子通園/療育で要請される家庭人としての生き方/第二子の誕生/常勤職が決まる
4 学校時代
付き添い/呼び出し/病院やPT(リハビリ)の付き添い/呼吸器の装着にともなって/出勤する時の体制
づくり/ヘルパーさんに留守番をたのめなくなる/勤務スタイルに助けられる
5 学校卒業後―生活介護事業所の施設への通所
紐づけ/勤務時間のやりくり/今まで利用していたサービスが休止してしまう―通所施設の「利用時間
の延長(日中一時支援)」が見合わせ/通所施設の「送迎」が縮小/「短期入所」も一部見合わせ/一八歳
の壁/拡大する家族の役割―移行期医療の問題/専門職は家族の存在が必要?/コロナ禍で起きたこと
Part3 「闘い」から「葛藤」へ
1 縛られる自己
子どもに障害があることで強まる母親への圧力/お母さんがどうして働くんですか?/家庭人として生きる
専門職からの縛り―協働者としての母親/医療―ケア専従者役割の要請/医療が期待するケア役割と
ジェンダー―医療システムの一員となる母親/療育/学校/援助者のゴールとは/他の母親からの縛り
2 縛る自己
ケアにのみこまれていった自己/自分をとることができない/罪悪感と「闘い」から「葛藤」への変化
Part4 「障害のある子どもの母親の就労困難」の社会的背景
1 障害のある子どもの母親の就労実態
一般の有配偶者女性より低い就労率/低い就労率の背景/就労に際して母親が活用する資源/就労の
制約が引き起こす問題/経済的問題/母親の精神健康問題/障害児者施策と母親の就労
2 横たわる根本的な問題
(1)障害児の母親規範
①近代家族の二つの基本的性格の残存
②自助原則
障害者施策における家族の位置づけ
③愛情原則
愛情の規範化/存在証明/母親のリアリティ
④「専門家と母親」という図式
共同療育者論――専門家からの親役割の付与
⑤親自身の親役割の引き受け
親の手記/親の会の運動
⑥なぜ母親なのか
母性信仰/強まる性別役割分業/ケアする人の特定化、固定化/母親責任説/もう一人の当事者
⑦小括
(2)医療的ケアの担い手問題
①病院から在宅生活に移る子どもたち
②学校における医療的ケア問題—医療的ケアが広まるプロセス
「医療的ケア黎明期」(一九九七年まで)/「医療・福祉・教育における混迷の時代」(一九九八年から
二〇〇四年まで)/「違法性の阻却による対応の時代」(二〇〇五年から二〇一一年まで)/「法律にもとづ
く対応の時代」(二〇一二年から二〇一五年まで)/「障害者の権利に関する条約批准の波及効果時代」
(二〇一六年から二〇二一年まで)
③小括
Part 5 「医療的ケアの必要な子どもの母親の就労困難」とはどのような現象だったのか
1 子どもを預ける手段が見つからない
障害者福祉における家族のとらえ方/「障害児の母親規範」からの逸脱/不可視化される「医療的ケアの
担い手問題」――二つの不可視化/「学校における医療的ケア問題」による可視化
2 変化していく就労
風向きが変わった/医療的ケア児支援法(二〇二一年)、改正育児・介護休業法(二〇二五年)
3 新たな問題
あとがき
引用文献