誰が誰を支えているのかを一つに定めることのできないまま、その日の暮らしが進んでいく

地域におけるケアの社会学

富山型デイサービスの「わやわやでやわやわ」

三枝七都子【著】

[定価]   本体3,300円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-207-2
[判型]A5判並製
[頁数]352頁

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年齢や障害、サービス種別、家族と事業所、職員と利用者……目の前の生活はそれらの区分どおりには切り分けられず、そのつど関係や生活を支えるための手立てが結び直されていく。
「わやわや」と入り混じり「やわやわ」とゆっくり進む富山型デイサービスの歩みをたどりながら、こうした「混在的ケア」がどのような場や関係の重なりのなかで成り立ち、かたちを変えながら続いてきたかを描き出す。

【目次】



はじめに

第1章 なぜ地域におけるケアを問うのか
 1 ケアの変遷
  1-1 戦前のケア
  1-2 戦後の医療技術革新と高度経済成長期のもとでのケア
  1-3 二十一世紀への転換――生活モデルが前景化する時代
 2 生活モデル化時代のケアをめぐる課題
  2-1 共生の場における摩擦
  2-2 本書の問い
 3 事例の紹介――富山型デイサービスとは
  3-1 県内における富山型デイサービスの位置づけ
  3-2 なぜ富山型に注目するのか
 4 本書の見取り図

第2章 地域におけるケアを捉える視角
 1 社会福祉学で語られてきた地域社会
  1-1 地域福祉の展開
  1-2 福祉コミュニティの構想
  1-3 岡村重夫の議論を引き継いだ社会福祉援助論
 2 ケアの社会学
  2-1 ケアの権力性
  2-2 ケアの相互行為と応答の構え
  2-3 ケアのネットワーク
 3 ケアの場
 4 本書の理論的視角と観察の焦点
  4-1 ケアの場と混在的なケア
  4-2 ケアの場から見える地域
  4-3 富山型をどのように観察するのか

第3章 調査方法と対象
 1 フィールドワークの方法
  1-1 フィールドワークの踏み跡
  1-2 調査概要
 2 富山県における福祉・医療の状況
  2-1 高齢者・障害者の現状について
  2-2 医療に関する整備や利用状況
  2-3 高齢者福祉に関する整備や利用状況
  2-4 障害児者福祉に関する整備や利用状況

第4章 生活を支えるケアの模索――介護保険制度と宅老所
 1 宅老所とは――成立と展開
  1-1 草の根の介護運動
  1-2 宅老所の活動――「生活」の模索と「ともに生きる」姿勢
  1-3 「ささやかな」批判態度と本章の問い
 2 対象および方法
  2-1 「情報交流誌★Bricolage」
  2-2 宅老所・グループホーム白書
  2-3 分析方法
 3 第Ⅰ期 宅老所の黎明期(一九九〇年まで)
  3-1 病院や大規模施設の介護を問い直す――「生活臭さ」の重視
  3-2 「希望の星」としての宅老所――お年寄りとともに生きる活動
 4 第Ⅱ期 宅老所の発展期(一九九一年から一九九九年)
  4-1 「生活臭さ」の一般化への警戒――介護の自己反省
  4-2 宅老所の発展――多様な宅老所の登場
 5 第Ⅲ期 介護保険サービスへの接続期(二〇〇〇年から二〇〇五年)
  5-1 介護保険制度への危惧――「介護の中身」をどう示すか
  5-2 介護保険サービスへの対応と宅老所の意味付けの分岐
 6 第Ⅳ期 宅老所機能の介護保険サービスへの再編期(二〇〇六年から二〇一〇年)
  6-1 分化していく宅老所
  6-2 「生き方としての宅老所」の登場
 7 介護保険制度の変遷とケア従事者の抱えもつジレンマ
  7-1 宅老所の担い手の「ささやかな」批判態度について
  7-2 介護保険サービスとの折り合いの分岐
 
第5章 富山型デイサービスの成り立ちと広がり
 1 広く知られている富山型デイサービス
  1-1 先駆例として語られてきた富山型
  1-2 本章の課題
 2 対象および方法
 3 富山県における宅老所の始まり
  3-1 NPO法人デイサービスこのゆびとーまれの場合
  3-2 NPO法人ふらっとの場合
  3-3 NPO法人にぎやかの場合
  3-4 共通する認識と活動の特色
 4 富山型デイサービスの誕生とイメージの定着
  4-1 行政への働きかけ
  4-2 県とのやりとりと構造改革特区制度
  4-3 発展と定着
  4-4 現状に対する認識
 5 広く知られるようになった富山型デイサービスのもとでの活動
 6 小括――富山型を支える足場と、生活に応じる余地

コラム 私たちの活動は運動ではない
 看護の道へ/惣万佳代子さんの場合/西村和美さんの場合/日本赤十字社で培った看護の精神/語られる「地域」――助け合いとしがらみのあいだで/暮らしを土台に――「運動ではない」という実感/「称賛すべき苦労」として扱わないために

第6章 喧嘩に耐えながらともにいる――わやわやのなかで続く関係
 1 ケアにおける衝突
  1-1 感情労働としてのケア
  1-2 避けがたく、しかし表面化しにくい衝突
  1-3 本章の課題
 2 対象および方法
  2-1 「にぎやか」の補足情報
  2-2 事例
 3 「にぎやか」の工夫と葛藤――喧嘩に至るまで
  3-1 契約に縛られないかかわり方
  3-2 理解しにくい行動に向き合う
  3-3 工夫ゆえに抱える困難と喧嘩の出現
 4 具体的な喧嘩の場面
  4-1 喧嘩の詳細
  4-2 喧嘩のその後
  4-3 喧嘩をめぐる受け止め
 5 喧嘩を抱えながらともにいる
  5-1 感情が揺れ動くなかでの喧嘩
  5-2 喧嘩を抱え込む日常
  5-3 「耐える」ということ
 6 喧嘩が問いかけるもの

コラム 「にぎやか」のアフターストーリー
 うまくいかない「悔しさ」/「広げる」から「深める」へ/「ここが一番じゃなくてもいい」と気づくまで/きっかけは「にぎやか食堂」/「高飛車な感じになってないか」という不安/「にぎやか」の現在地――わるところ、変わらないところ/ユウコちゃんのその後/ユウコちゃんが「にぎやか」に来るまで/「富山型っぽい」放課後等デイサービス/「活動をしたいっていう人をつなげていく」こと

第7章 「生き方を眺める」――あわいに立ち支える
 1 家族とともに生活している人に対するケア
  1-1 私的領域とケアの課題
  1-2 生活モデルにもとづくケアの議論
  1-3 家族福祉論
  1-4 本章の課題
 2 対象および方法
  2-1 「ふらっと」の補足情報
  2-2 事例
 3 障害のある人と家族の生活を支えるうえでのケア従事者の立ち位置
  3-1 「ふらっと」のサービスを利用する以前の親子の生活
  3-2 サービスを利用し始めた親子の生活と、横合いから眺める職員
 4 親と子のあわいに立つ職員の機微
  4-1 本人が選び直す余地をつくる
  4-2 本人の選択を受け止める家族を支える
 5 親と子のあわいに立つための工夫
  5-1 親子の来歴と現在に対する職員の認識
  5-2 立場をあいまいにする
 6 親子と周囲の人たちとのあわいに向けた工夫――「暮らしの場づくり」
 7 「生き方を眺める」とは
  7-1 職員の立ち位置――関係を切らず、距離を動かす
  7-2 選び直せる余地を保つ――その意味と限界

コラム あわいに生きる
 富山で暮らす女性としての複雑さ/子育ての経験――「はがやしい」思いを抱えて/障害当事者運動との出会い/「ふらっと」の運営――試行錯誤の日々/軌道に乗るまでの苦悩/働くうえでの難しさ/事業への責任/「本来の自分を取り戻す」/「自己開発」――もっていた力の再発見/押し付ける正しさから一歩引いて/あわいにとどまりながら

第8章 富山型デイサービスを続ける足場
 1 結論に収束しない定例会
 2 対象と方法
  2-1 富山ケアネットワークの補足情報
  2-2 分析方法
 3 定例会の様子
  3-1 流動的な話し合い
  3-2 誰に向けた手立てなのかに立ち返る
  3-3 外部者を迎え入れ、手立てを開く
 4 定例会に対する会員たちの認識
  4-1 事業運営の手がかりとしての情報
  4-2 助けを必要とする目の前の人に合う手立てを探す
  4-3 「ただの事業」にしないために――活動の原点に立ち返る
 5 定例会の外に生まれるつながり
 6 富山型デイサービスを続ける足場としての定例会

終章 地域におけるケアを問い直す
 1 「わやわやでやわやわ」にみる混在的なケア
  1-1 「わやわや」――切り分けられない出来事を抱え込む
  1-2 「やわやわ」――関係を切らずに整え直す
  1-3 ケア従事者もまた支えられる一人として
 2 混在的なケアはいかに成り立つか
  2-1 制度的なるものとの応答
  2-2 事業所をまたぐゆるやかなつながり
  2-3 複数の基盤の重なり
 3 「特別なことをしていない」と語る平常さ
 4 生活モデル化時代に富山型が示すもの
  4-1 生活を見続ける、接点を残す
  4-2 接点を保ちながら、時間のなかで支え方を動かす
  4-3 支える側も孤立しない足場をもつ
 5 地域におけるケアを考える、その先へ

あとがき

資料および引用文献