「健康」とは? 「重い病」とは? 生まれ来る命の幸せを 考え続ける
出生前診断 受ける受けない誰が決めるの?
遺伝相談の歴史に学ぶ
出生前診断を議論するとき金科玉条のように語られる「遺伝カウンセリングの充実」。
しかし、その内容はきちんと検証されてきただろうか?
検査のための手続きになってはいないだろうか?
長年にわたり遺伝カウンセリングを実践し、そのあり方を模索してきた先人たちに学び、
技術ばかりが進展する出生前診断とどう向き合うかを、立ち止まって考える。
【目次】
はじめに 山中美智子
第1部 出生前診断──いま考えなくてはいけないこと
第1章 日本の遺伝カウンセリングの歴史と出生前検査 山中美智子
1 日本の遺伝相談・遺伝カウンセリングの歴史
(1)「遺伝相談ネットワーク委員会」から「日本臨床遺伝学会」へ
(2)「日本遺伝カウンセリング学会」の発足
(3)日本遺伝カウンセリング学会の変遷
(4)遺伝カウンセリングに関わる医療職の教育
(5)臨床遺伝専門医制度・認定遺伝カウンセラー制度の誕生
2 出生前検査の方法
(1)出生前検査とは
(2)出生前検査の方法
3 出生前検査に関する遺伝カウンセリング
4 勉強会の開催
5 今歴史を振り返る意味
第2章 出生前診断について考えたいこと 玉井真理子
1 わが子の健康を素朴に願う気持ち
2 ホンネでは出生前診断を受けたがっている?
3 「健康な子がほしい」と「健康でない子はほしくない」の間
4 「失敗」は一度でいい? 一度でもしたくない?
5 障害は「ないにこしたことはない」ものか?
6 拡大再生産される「安心」
7 出生前診断は障害者だけを傷つけるのか
8 三大神話
[コラム1]「子どもの健康を願うこと」と「出生前診断を受けること」の間 坂井律子
第3章 パトリック・ルブラン医師講演「フランスの出生前診断──現状・展望・争点」について 玉井真理子
[コラム2]ペリュシュ判決とその影響 本田まり
第2部 遺伝相談の歴史に学ぶ
第4章 自分たち自身で決めるのに必要なことは?──「自己決定」の落とし穴 佐藤孝道
1 出生前検査、受ける受けないを決めるのはカップル(=自分たち自身、あるいは妊婦本人)
2 カップルが、自己決定に当たって受ける制約は、合法的か否かだけ
3 胎児条項」は、優生保護法への回帰で、許されるべきではない
4 出生前検査を受ける受けないを学会や社会、国家が決めるべきではない
5 「安易な」検査や中絶はないが、社会や組織によって簡単に自己決定が「誘導」された例は最近もある
6 日本には出生前検査の「自己決定」が企業に大きく誘導された歴史がある
7 出生前検査についての「自己決定」は何故難しいのでしょうか、何故容易に歪められるのでしょうか
8 カップルの「自己決定」を実現するためには何が必要でしょうか?
[コラム3]出生前診断はなぜ始まったのか 吉岡 章
第5章 重症心身障害児者施設から──デジタルのかなたに思いを馳せて 月野隆一
1 はじめに
2 デジタルのかなたに思いを馳せて
3 ダウン症候群とは
(1)養育、教育、就労概観
(2)疾患
(3)行動特性
(4)行動異常
(5)スポーツ
(6)趣味
(7)特殊技能
(8)様々な支援
4 何故ダウン症候群が出生前診断(NIPT)の標的となるのか?ち
(1)社会的背景
(2)医学的背景
5 遺伝カウンセリングについて
(1)検査前遺伝カウンセリングについて
(2)検査後の遺伝カウンセリング
6 NIPTの今後
7 出生前診断、NIPTは人を幸せにするか?
8 産む産まない誰が決める
9 おわりに
[コラム4]まず私が“感じるもの” 藤田 潤
第6章 親になること 富和清隆
1 はじめに
2 遺伝相談に学ぶ
3 出生前診断以前のこと
4 親になること、親として在ること
5 親子レスパイトから学んだこと
6 出生前診断 受ける受けない誰が決めるの?
[コラム5]ダウン症候群の赤ちゃんが生まれたときに小児科医が話すこと 小野正恵
[コラム6]「よく考えてください」と伝えられない──NIPTをきっかけとした気持ちの変化 青木美紀子
鼎談 出生前診断 受ける受けない誰が決めるの? 山中美智子×玉井真理子×坂井律子
「海外は進んでいる」は本当か?──二〇年前のイギリス
フランスから「学ぶ」こと
「重篤」と社会の都合
連続勉強会を通して学んだこと
おわりに 玉井真理子