障害者運動はいま、一つの時代の区切りを迎えようとしている……
障害者運動のバトンをつなぐ
いま、あらためて地域で生きていくために
いまだ道半ばの障害者運動。
七〇年代の運動の創始者たちが次々に逝去する中、
先人たちが築き上げてきたものをどのように受け継ぎ、
どのように組み換え大きく実らせていくのか。
その大きな課題に向き合うために、これまでを振り返りこれからを展望する。
【目次】
はじめに 矢吹文敏・渡邉琢
第一章 既成概念の変革と、人として生きること──介助の現場に関わる中から 小泉浩子
1 はじめに
2 うまくいかない「手足論」・「当事者が介助者を育てる」という視点
3 介助は「権利」なのか?「サービス」なのか?
4 地域生活が管理されていく
5 障害者運動の主張が通用しない介護現場──難病の方の場合
6 障害者運動の主張が通用しない介護現場──知的障害の方の場合
7 新しく「障害」の枠組みに入ってきた人たちと一緒に
8 自立生活をはじめてはみたけれど
(1)慣れと手抜き──重度の言語障害をもつ脳性マヒの彼女
(2)毎日変化を伴う揺れる身体
(3)親への依存、親からの依存が断ち切れない
(4)異性を求め、心乱れる彼女
9 ピアサポートの不足?
10 多様な介助者との関わり
11 女性介助者が働くことの難しさ
12 女性であること、障害者であること、私たち自身の中の差別心
13 「既成概念の変革」と「人として生きること」
第二章 「運動」以前──障害者の生きざまをふり返る 矢吹文敏
1 「傷痍軍人」が照射するもの
2 今さらのお話ですが
3 差別の構造とは
4 先人たちの生きざま
5 府中療育センター闘争から全国へ
6 パラリンピックの衝撃と語り始めた障害当事者たち
7 後継者が育たないと嘆く前に自分を顧みる
第三章 障害者運動のバトンを次世代へどう引き継ぐか? 尾上浩二
1 なぜ次世代への引き継ぎがテーマになるか
2 第一世代との中継役、伴走者として
(1)障害者運動とのとっかかり──ある自立障害者との出会い
(2)養護学校、施設を経て地域の学校へ
(3)交渉・集会に明け暮れて──養護学校義務化、障害者実態調査
(4)在宅訪問活動から全身性障害者介護人派遣事業制定へ
(5)青い芝の先達の文章にふれて
(6)DPI日本会議とのつながり
(7)地域活動の拠点を目指して──大阪市との研究会
(8)「障害者を大きな赤ん坊にするな」「行動するDPI」を目指して
(9)バリアフリーを求めて──条例制定運動との関わり
(10)全国的なネットワークの関わりの中で
3 一九七〇年代からの障害者運動がもたらした変化
4 障害者運動の特徴と基本的な構え(思想性)
5 引き継がれる次世代へのバトン
座談会 障害者運動のバトンをつなぐ
大野更紗×尾上浩二×熊谷晋一郎×小泉浩子×矢吹文敏×渡邉琢
バトンを受け継ぎつつ、これからのことを考える
一・五世代として
バトンを腐らせないためには
医学モデル再考
三つのカテゴリーとその分断
「制度」が奪う自由
健常者として
古いことを伝えるという役割
「治る」と「リハビリ」をめぐって
難病当事者運動の担い手
障害者運動と患者運動はつながれるのか
社会モデル活用の課題
搾り出される声が変えていくもの
闘いの流儀
そよ風のように街に出よう、再び
第四章 受け取ったこのバトンはナマモノであったか 熊谷晋一郎
1 どのように生きてきたのか
(1)リハビリの経験
(2)障害者運動との出会い
(3)一人暮らし
2 バトンの継承を困難にするものとは
3 単に同じバトンをつなぐだけでいいのか
(1)もう一度ことばを生み出す
(2)社会モデルの不徹底
(3)依存先の分散
4 おわりに
第五章 障害者運動のバトンを健常者(支援者、介護者)として、どう引き継いでいくか 渡邉 琢
1 はじめに
2 自己紹介──ぼくがどのような経緯で、どのように障害者運動と関わっているか
3 障害者運動と健常者の関わりの歴史──運動のエピソードを通して
(1)障害者と健常者の相互変革
(2)障害者の介護保障=介護者の生活保障
(3)重度障害者、介護、健常者
(4)健常者の苦悩と責任
4 健常者の現在と運動のバトン
(1)ゼロ年代以降の展開──地域自立生活の量的拡大の制度的保障と介助・介護の仕事化
(2)なお残る障害者の地域自立生活の課題
(3)障害者運動のバトンを健常者としてどう引き継ぐか
あとがき 日本自立生活センター(矢吹文敏・小泉浩子・渡邉琢)