障害者運動はいま、一つの時代の区切りを迎えようとしている……

障害者運動のバトンをつなぐ

いま、あらためて地域で生きていくために

尾上浩二、熊谷晋一郎、大野更紗
小泉浩子、矢吹文敏、渡邉琢   【著】

[定価]   本体2,200円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-060-3
[判型]A5判並製
[頁数]256頁

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いまだ道半ばの障害者運動。
七〇年代の運動の創始者たちが次々に逝去する中、
先人たちが築き上げてきたものをどのように受け継ぎ、
どのように組み換え大きく実らせていくのか。
その大きな課題に向き合うために、これまでを振り返りこれからを展望する。

【目次】


はじめに  矢吹文敏・渡邉琢
  
第一章 既成概念の変革と、人として生きること──介助の現場に関わる中から  小泉浩子

 1 はじめに
 2 うまくいかない「手足論」・「当事者が介助者を育てる」という視点
 3 介助は「権利」なのか?「サービス」なのか?
 4 地域生活が管理されていく
 5 障害者運動の主張が通用しない介護現場──難病の方の場合
 6 障害者運動の主張が通用しない介護現場──知的障害の方の場合
 7 新しく「障害」の枠組みに入ってきた人たちと一緒に
 8 自立生活をはじめてはみたけれど
   (1)慣れと手抜き──重度の言語障害をもつ脳性マヒの彼女
   (2)毎日変化を伴う揺れる身体
   (3)親への依存、親からの依存が断ち切れない
   (4)異性を求め、心乱れる彼女
 9 ピアサポートの不足?
 10 多様な介助者との関わり
 11 女性介助者が働くことの難しさ
 12 女性であること、障害者であること、私たち自身の中の差別心
 13 「既成概念の変革」と「人として生きること」

第二章 「運動」以前──障害者の生きざまをふり返る  矢吹文敏

 1 「傷痍軍人」が照射するもの
 2 今さらのお話ですが
 3 差別の構造とは
 4 先人たちの生きざま
 5 府中療育センター闘争から全国へ
 6 パラリンピックの衝撃と語り始めた障害当事者たち
 7 後継者が育たないと嘆く前に自分を顧みる

第三章 障害者運動のバトンを次世代へどう引き継ぐか?  尾上浩二

 1 なぜ次世代への引き継ぎがテーマになるか
 2 第一世代との中継役、伴走者として
   (1)障害者運動とのとっかかり──ある自立障害者との出会い
   (2)養護学校、施設を経て地域の学校へ
   (3)交渉・集会に明け暮れて──養護学校義務化、障害者実態調査
   (4)在宅訪問活動から全身性障害者介護人派遣事業制定へ
   (5)青い芝の先達の文章にふれて
   (6)DPI日本会議とのつながり
   (7)地域活動の拠点を目指して──大阪市との研究会
   (8)「障害者を大きな赤ん坊にするな」「行動するDPI」を目指して
   (9)バリアフリーを求めて──条例制定運動との関わり
   (10)全国的なネットワークの関わりの中で
 3 一九七〇年代からの障害者運動がもたらした変化
 4 障害者運動の特徴と基本的な構え(思想性)
 5 引き継がれる次世代へのバトン

座談会 障害者運動のバトンをつなぐ
      大野更紗×尾上浩二×熊谷晋一郎×小泉浩子×矢吹文敏×渡邉琢
 
 バトンを受け継ぎつつ、これからのことを考える
 一・五世代として
 バトンを腐らせないためには
 医学モデル再考
 三つのカテゴリーとその分断
 「制度」が奪う自由
 健常者として
 古いことを伝えるという役割
 「治る」と「リハビリ」をめぐって
 難病当事者運動の担い手
 障害者運動と患者運動はつながれるのか
 社会モデル活用の課題
 搾り出される声が変えていくもの
 闘いの流儀
 そよ風のように街に出よう、再び

第四章 受け取ったこのバトンはナマモノであったか  熊谷晋一郎

 1 どのように生きてきたのか
   (1)リハビリの経験
   (2)障害者運動との出会い
   (3)一人暮らし
 2 バトンの継承を困難にするものとは
 3 単に同じバトンをつなぐだけでいいのか
   (1)もう一度ことばを生み出す
   (2)社会モデルの不徹底
   (3)依存先の分散
 4 おわりに

第五章 障害者運動のバトンを健常者(支援者、介護者)として、どう引き継いでいくか  渡邉 琢

 1 はじめに
 2 自己紹介──ぼくがどのような経緯で、どのように障害者運動と関わっているか
 3 障害者運動と健常者の関わりの歴史──運動のエピソードを通して
   (1)障害者と健常者の相互変革
   (2)障害者の介護保障=介護者の生活保障
   (3)重度障害者、介護、健常者
   (4)健常者の苦悩と責任
 4 健常者の現在と運動のバトン
   (1)ゼロ年代以降の展開──地域自立生活の量的拡大の制度的保障と介助・介護の仕事化
   (2)なお残る障害者の地域自立生活の課題
   (3)障害者運動のバトンを健常者としてどう引き継ぐか

  あとがき  日本自立生活センター(矢吹文敏・小泉浩子・渡邉琢)