「ことばで表現できないから」といってしまう前に
ことばのバリアフリー
情報保障とコミュニケーションの障害学
すべての人に知る権利を保障し、だれもが意見や情報をやりとりすることができるようにすること。
だれも社会から排除されないようにするということ。
そのように目標を設定し、いまの現状と課題を整理すること。
将来の展望をみすえること――知的障害者入所施設での生活支援、身体障害者や知的障害者の訪問介助といった経験の中で
考え続けてきた「ことば」と「障害」をめぐっての問題。
【目次】
はしがき
[コラム1] 他者と出会う
1. はじめに──多数派には名前がない
2. 自分を「ふつう」に分類しない
3. 発達障害と定型発達(神経学的多数派)の異文化接触
4. 非連続(カテゴリー)と連続(スペクトラム)のあいだ──自閉症を例に
5. おわりに
第1章 「障害ではない」ということ──社会のなかの「ことば」と「からだ」
1. はじめに
2. トランスジェンダーからみた「障害」
3. 「ろう文化宣言」と少数者としての「障害者」
4. 図書館サービスからみた「障害」
5. 相対主義からみた「損傷」
6. ひだりききからみた「障害」
7. 社会構成主義からみた「障害」
8. おわりに──「配慮の平等」にむけて
ただしがき
第2章 言語という障害──知的障害者を排除するもの
1. はじめに
2. 言語権という理念
2.1. ひとつの言語とはなにか
2.2. 言語権のひろがり
3. 知的障害と「言語」
4. 言語学の倫理──ジーニーを実験台にさせたもの
5. 共生の条件とされる「ことば」
6. 知的障害者をとりまく社会環境──言語という障害と能力主義
6.1. 言語と世界観
6.2. 知的障害の判定テストと言語
6.3. 能力の個人モデルから「能力の共同性」へ
7. 言語主義からの自由、そして言語権のユニバーサルデザインにむけて
8. おわりに
ただしがき
[コラム2] だれでも参加できるじゃんけんとは
1. はじめに
2. じゃんけんのかたちをかえる
3. 「伝統」と人権
4. じゃんけんの支援技術
5. もっと多様なじゃんけんに出会うために
6. おわりに
[コラム3] 「コミュニケーション障害」ってなんだろう
1. はじめに
2. 自閉者と自分勝手なコミュニケーション
3. こだわりと自己決定
4. 主体性とはなにか
5. コミュニケーションに障害はありえない
6. おわりに
ただしがき
第3章 「識字」という社会制度──識字問題の障害学(2)
1. はじめに
2. 障害学からみた識字問題
3. 識字問題の再定義──図書館サービスの視点から
3.1. 「非識字」のとらえかた
3.2. 視覚障害者読書権保障協議会が図書館サービスの視点をかえた
4. 障害者と非識字者のちがい──みえない存在としての非識字者
5. 高齢者をめぐる識字問題
6. 読字障害/書字障害(ディスレクシア)のある人の学習環境
7. おわりに
ただしがき
第4章 情報保障の論点整理──「いのちをまもる」という視点から
1. はじめに──目的と問題意識
2. 五感(感覚モダリティ)と言語形態による整理
3. 情報保障に必要なこと
3.1. 感覚モダリティの平等(五感に配慮する)
3.2. 感覚モダリティの変換
3.3. 情報を構造化する
3.4. ユニバーサルデザインとユニバーサルサービス
3.5. 情報発信、意思表示を保障する
3.5.1. 言語障害のある人へのコミュニケーション支援
3.5.2. 知的障害者の自己決定
3.5.3. 認知症の人――オムツはずしを例に
3.6. 情報保障の公的保障
3.6.1. コミュニティ通訳の公的保障
3.6.2. ガイドヘルプ/見守り介護の保障
4. 情報保障の対象と対策
4.1. 日本語表記がうみだす情報障害
4.2. 「図書館利用に障害のある人々へのサービス」の対象範囲
4.2.1. 「図書館利用に障害のある人々へのサービス」とは
4.2.2. 情報保障の中核としての図書館
4.3. 社会的排除の視点から
4.3.1. 刑務所の問題
4.3.2. 申請主義の問題
4.4. 移民について──日本の入国管理政策の問題
5. おわりに──「あたりまえ」をひっくりかえす
ただしがき
第5章 言語学習のユニバーサルデザイン
1. はじめに
2. 言語をやりとりするチャンネル──聴覚、視覚、触覚
3. 情報のユニバーサルデザイン
3.1. 映像メディアの場合
3.2. 印刷メディアの場合
4. 言語教材のユニバーサルデザイン
5. 学習環境のユニバーサルデザイン
ただしがき
第6章 言語権/情報保障/コミュニケーション権の論点と課題
1. はじめに
2. 言語ってなんだろう
3. 障害ってなんだろう
4. 言語権の論点と課題
5. 情報保障の論点と課題
6. コミュニケーション権の論点と課題
7. 生活環境の問題
7.1. 基地騒音という問題
7.2. ソーシャルワークの課題
7.3. 「よりそいホットライン」の重要性
8. おわりに
ただしがき
あとがき
初出一覧
参考文献
さくいん