今ここにある個人の身体から切り離し難い障害/病気=血友病を立脚点に現代社会の課題を描き出す

日本の血友病者の歴史

他者歓待・社会参加・抗議運動

北村健太郎【著】

[定価]   本体3,000円(税別) 

[ISBN]4-86500-030-6
[判型]A5判並製
[頁数]304頁

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1960年代後半から1980年代における血友病者および血友病患者会/コミュニティの歴史を論じ、
血友病者を軸に、医療技術、公費負担、学校教育、マスメディア、優生思想、感染症問題などの様々な主題へと展開。
血友病を何かの具体例として扱うのではなく、血友病を視座に社会を捉え直そうとする意欲的な試み。

【お詫びと訂正】
本書の本文中に以下の誤りがありました。
以下、お詫びして訂正させていただきます。
(生活書院編集部)

■196ページ7行目
 (誤)民主党
 (正)民社党

■19ページ2行目
 (誤)全国ハンセン病療養者協議会
 (正)全国ハンセン病療養所入所者協議会

【目次】


献辞

序章 血友病患者会/コミュニティの歴史への問い
 1 血友病患者会/コミュニティの歴史への問い
 2 本書の基本的視座
 3 本書における基本概念および時期の区別
 4 近接領域の概観と薬害研究の限界
 5 本書の用語説明

前史 戦前戦中の血友病者たち
 1 はじめに
 2 戦前に就職した血友病者
 3 徴兵された血友病者
 4 空襲に遭った血友病者
 5 おわりに

第1部 血液製剤の登場と全国ヘモフィリア友の会の創立

第1章 血液製剤の登場と普及――血友病と医療技術(1940~)
 1 はじめに
 2 日本の血液事業の展開
 3 献血推進の主張
 4 血友病治療の大転換
 5 製薬企業と医師たちの問題認識
 6 “ホーム・インフュージョン”の導入
 7 ライシャワー事件以後の国会審議
 8 閣議決定が生んだ矛盾
 9 おわりに

第2章 全国ヘモフィリア友の会の創立――血友病と公費負担(1967~1974)
 1 はじめに
 2 患者運動と難病対策の展開
 3 全国ヘモフィリア友の会の創立
 4 公費負担の開始
 5 年齢制限の壁
 6 小児慢性特定疾患治療研究事業の成立
 7 公費負担成立の背景
 8 おわりに

第3章 大西赤人君浦高入学不当拒否事件――血友病と学校教育(1971)
 1 はじめに
 2 血友病者の進学や就職
 3 浦高事件以前
 4 内申書をめぐる対立――浦高事件・1
 5 実現する会結成とメディアの反響――浦高事件・2
 6 特別抗告棄却と大検合格――浦高事件・3
 7 おわりに

第2部 Young Hemophiliac Clubの誕生と「錆びた炎」問題

第4章 Young Hemophiliac Clubの誕生――若手血友病者の台頭(1973~1976)
 1 はじめに
 2 パンフレット『若者よ 集まれ!』
 3 松嶋兄弟にみる個人差と地域差
 4 「青年の集い」の開催
 5 Young Hemophiliac Clubの結成
 6 松嶋兄弟とYHCの交流
 7 “ホーム・インフュージョン”への期待
 8 おわりに

第5章 「錆びた炎」問題・「ブラックジャック」問題――血友病とマスメディア(1977・1981)
 1 はじめに
 2 「錆びた炎」問題
 3 抗議と反論の位置
 4 かみ合わない議論
 5 抗議運動の終結
 6 抗議運動の成果と限界
 7 「ブラックジャック」問題
 8 おわりに

第6章 Young Hemophiliac Clubの再編――血友病者の新しい身体(1978~1979)
 1 はじめに
 2 YHCの組織再編
 3 YHCと全友にできた溝
 4 一人で旅行ができる身体――網野合宿・1
 5 問われた血友病者の社会性――網野合宿・2
 6 できる範囲/できない範囲の境界の変動
 7 年齢制限撤廃運動のその後
 8 おわりに

第3部 全国ヘモフィリア友の会の展開とエイズ問題

第7章 全国ヘモフィリア友の会の展開――血友病者と自己注射(1975~1981)
 1 はじめに
 2 フラターナル・ナイトの開催
 3 デートリッヒ医師の講演
 4 全友の出版物等監視委員会
 5 北村全友会長のアメリカ単独行
 6 武見医師会会長と橋本厚生大臣への面会
 7 医学書『血友病』の発行
 8 おわりに

第8章  「神聖な義務」問題――血友病と優生思想(1980)
 1 はじめに
 2 機関誌『全友』にみる出生前診断
 3 「神聖な義務」問題とその背景
 4 渡部への批判
 5 血友病者側の反応
 6 血友病者側の反論の困難
 7 血友病者と青い芝の差異
 8 おわりに

第9章 自己注射の公認と高額療養費限度額の改正――血友病者の明暗(1983~1984)
 1 はじめに
 2 自己注射の公認
 3 日本の血友病者たちの1970年代
 4 「明るい未来」の崩壊
 5 高額療養費の限度額改正
 6 おわりに

第10章 全国ヘモフィリア友の会の休止――血友病とエイズ問題(1985~1989)  1 はじめに
 2 加熱処理製剤の認可
 3 立ち上がる血友病者たち
 4 第20回全国大会をめぐる応酬
 5 野村会長の就任
 6 エイズ予防法案との闘い
 7 おわりに

跋章 血友病患者会/コミュニティの歴史が拓く問い
 1 第1期の総括から第2期の議論へ
 2 「錆びた炎」問題の歴史的意義
 3 血友病患者会/コミュニティの分断破線
 4 血友病患者会/コミュニティの歴史が拓く問い
 5 1970年代の忘却に抵抗する

補論1  C型肝炎特別措置法による差別――血友病とC型肝炎
 1 はじめに
 2 C型肝炎特別措置法案をめぐる長い一日
 3 両院の厚生労働委員会の質疑及び決議
 4 C型肝炎特別措置法の問題点
 5 おわりに

補論2 ヘモフィリア友の会全国ネットワークの結成――血友病コミュニティの再生
 1 はじめに
 2 ヘモフィリア友の会全国ネットワークの結成
 3 国会決議に基づく厚生労働省との協議
 4 遺伝子組換製剤ノボセブンの不採算品再算定
 5 全国ヘモフィリアフォーラムの開催
 6 ヘモフィリア友の会全国ネットワークの含意
 7 おわりに

血友病患者会
コミュニティ略年表
あとがき
謝辞
参考文献