それは、「誰にでもできる仕事」だったのか?
家庭奉仕員・ホームヘルパーの現代史
社会福祉サービスとしての在宅介護労働の変遷
それは、「誰にでもできる仕事」だったのか?
社会的低評価、差別的待遇の中で取り組まれた正規職員化闘争。
実際に担った元家庭奉仕員へのインタビューを基に、困難を伴うその援助実態、
働きかけと変化の兆しといった今日につながる介護労働の特性を抽出。
日本における介護労働変遷史の中に「家庭奉仕員」を正当に位置づけ、担い手側からその労働特性を捉え返して、
介護労働ににおける誇りと展望を見出す契機とするために著された労作。
【目次】
はしがき
序章 研究の視座と課題
1 問題の所在
2 研究の目的と意義
3 研究の方法
第1部 家庭奉仕員制度創設の背景
第1章 老人問題が社会問題化した時代
1 一九五〇年代の労働者階級層
2 生活保護法にもとづく被保護世帯の困窮
3 被保護・要保護老人世帯の生活実態
第2章 社会調査による派遣対象世帯の生活実態把握
1 長野県での社会調査
2 大阪市での社会調査
第3章 日雇労働者世帯などへの援助
第4章 生活破綻に対する直接支援策としての有効性
第5章 海外の政策からの示唆
小括
第2部 介護労働の位置付け
第1章 戦前の養老事業関係者の動向と寮母の位置付け
1 全国養老事業協会の創設
2 浴風園の創設と寮母の位置付け
3 養老事業実務者講習会の開催
第2章 戦後の養老施設での寮母の位置付け
1 待遇改善と研修の訴え
2 厚生省の寮母の位置付け
第3章 生活扶助基準の適正化の取組み
第4章 新たな労働枠の創出
1 倫理性の高い労働の特性
2 長時間に渡る援助の必要性
3 海外の制度からの影響
第5章 家庭奉仕員制度の人材確保政策
第6章 家庭奉仕員の労働条件
第7章 厳しく骨の折れる訪問と仕事
第8章 研修と他職種との協力体制の規定
1 研修の規定と実施事例
2 他職種との連携規定と実情
第9章 事業成果を踏まえた国家政策化
第10章 障害者(児)への派遣事業の国家施策化
小括
第3部 家庭奉仕員の援助実態
第1章 家庭奉仕員の援助実態
1 戦争により被害を受けた老人への援助
2 家庭奉仕員の訪問を拒否する老人への援助
3 老人の困りごとを契機とした援助
4 時代の流れから取り残された老人への援助
5 他機関との連携を要する援助
6 家庭奉仕員が訪問しない日を配慮した援助
第2章 寝たきり老人への援助実態
第3章 認知症の老人への援助実態
1 認知症の老人に対する施策化の遅れ
2 在宅の認知症老人の実態調査
3 認知症の老人に対する援助実態
4 他職種との協力体制の模索
小括
第4部 正規職員化闘争
第1章 東京都での動向
1 事業委託の返還
2 正規職員化闘争勝利の歴史的意義
3 老人ヘルパー制度の名称変更
4 特例的処理部分の該当者
第2章 名古屋市での動向
第3章 大阪市での動向
第4章 京都市での動向
第5章 明石市での動向
小括
第5部 在宅介護労働の変容
第1章 業務委託化と非正規職員化政策の推進
1 家庭奉仕員労働の非専門性規定
2 買う福祉への移行
3 業務委託の推進
4 担い手の変容
第2章 福祉見直し時代の家庭奉仕員の労働運動
1 東京都世田谷区での動向
2 名古屋市での動向
3 大阪市の動向
4 岩手県江刺市の動向
5 千葉市での動向
第3章 アンケート調査結果が示した援助の困難性
1 ふれあいサービス事業のアンケート調査
2 東京ホームヘルプ活動連絡会のアンケート調査
3 他事業所が担当する対象者へのアンケート調査
小括
終章 結論
1 制度創設の社会的要因と労働の位置付け
2 正規職員化闘争等の取組みと歴史的意義
3 一九八〇年代以降における変容
4 公共性を有する社会福祉サービス
5 労働特性を体現できる労働環境保障
6 今後の研究の課題
あとがき
文献
資料