「とるに足らない」とされたものたちの思想に向けて
分解者たち
見沼田んぼのほとりを生きる
障害、健常、在日、おとな、こども、老いた人、蠢く生き物たち……
首都圏の底〈見沼田んぼ〉の農的営みから、どこにもありそうな街を分解し、
見落とされたモノたちと出会い直す。
ここではないどこか、いまではないいつかとつながる世界観(イメージ)を紡ぐ。
【目次】
序章 東京の〈果て〉で
「とるに足らない」とされたものたちの思想に向けて
見沼田んぼという空間
風景から人びとの歴史を読み取る
排出されたものたちの蠢き──「分解」ということ
恩間新田の内奥で
「おらっちの生活は自立っつうのになってっかい」
この本の構成
第一部 胃袋と肛門
第一章 見沼田んぼ福祉農園のスケッチ
福祉農園を構成する人びと
食べること、育てること──休日の食卓
老いること、経験の循環(リサイクル)──平日の食卓
営農のスタイル
農園の土作り──馬糞のこと
廃棄されたものを分解する
そこに本当にあること
第二章 首都圏の拡大と見沼田んぼ──福祉農園の開園まで
首都圏という歪な身体
人口急増期の埼玉県南部──大宮市長秦明友の時代
ごみとし尿が流れ着く場所
高度経済成長期の見沼田んぼ──狩野川台風から見沼三原則へ
開発と保全をめぐるせめぎ合いから、保全・活用・創造の基本方針の策定へ
見沼田んぼ福祉農園の開園──シュレッダーの手前、荒地からのはじまり
第三章 灰の記憶──越谷市の三・一一
中心のなかの辺境という問題
農村から郊外へ
下妻街道の傍らで
灰の記憶
第二部 地域と闘争(ふれあい)
第四章 〈郊外〉の分解者──わらじの会のこと
平穏なベッドタウンで
まちを耕す
密室の団欒──開かれた場ということ
「被災地」という言葉を分解する
第五章 三色ご飯と情熱の薔薇
三色ご飯
兄の高校入試
情熱の薔薇
のろのろと歩き、颯爽と走る
第六章 まつりのようなたたかい──埼玉の権力の中枢で
ある風景
知事室占拠に至るまで
占拠された知事室、占拠した身体の群れ
「雲の上の人」との対話
まつりの後に
第三部 どこか遠くへ、今ここで
第七章 土地の名前は残ったか?──津久井やまゆり園事件から/へ
追悼会で叫ぶ
万歳と吶喊──人の名前と土地の名前
相模湖町一九六四
相模ダム一九四一‐四七
夏の祭礼の前に
(追記)下流の青い芝──川崎の小山正義
第八章 水満ちる人造湖のほとりから──相模ダム開発の経験と戦後啓蒙
飯塚浩二──ゲオポリティク論の間、娘との距離
川島武宜・大塚久雄──濃密な与瀬経験
総力戦体制下の与瀬
「髭を生やした飯塚君」
第九章 「乱開発ゾーン」の上流で──見沼田んぼの朝鮮学校
朝鮮学校が見沼田んぼにあること
埼玉朝鮮初中級学校の誕生
サクラとアオダイショウ
校庭のイムジン河
終章 拠り所を掘り崩し、純化に抗う
あとがき──〈私〉たちの経験を解(ほど)いて、一冊の本を編む
写真について メモ
参考文献