「物語」という様式の歴史性を考え直すこと、そして、
それを踏まえて「近代化」と「共同性」について論じること。

「身の上」の歴史社会学

明治時代の自己物語から考える近代化と共同性

矢﨑千華【著】

[定価]   本体3,000円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-110-5
[判型]A5判並製
[頁数]248頁

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明治時代の「身の上相談」や日記、投書に記述されている人びとの「身の上」を自己物語として読み解き、個々人がそれぞれに固有の「物語」を語りうるようになった過程と、「物語」を語ることの社会的な機能について詳細に論じた画期的論考。

【目次】


序章 「身の上」の歴史社会学と自己物語記述様式
 1 「物語」のはじまりを問う
 2 本書の目的
 3 なぜ明治時代か――「近代化」と「ことば」
 4 自己物語としての「身の上」
 5 言語編成を見る――分析視角
 6 「物語り」から「物語」へ
 7 自己物語と「共同性」
 8 本書の構成

第1章 自己物語記述様式の成立を支える諸状況
 1 本章の目的
 2 『國語元年』における日本語表象――「全国統一話しことば」
 3 識字をめぐる諸状況――教育・出版・活字
 4 「読む」態度あるいは方法の変容
 5 「国語」の創造
 6 言文一致と「主体」の発見
 7 「ことば」と認識

第2章 「ことば」を分析する方法
 1 本章の目的
 2 ディスコース分析の利点と難点
 3 ストーリーの社会学の利点と難点
 4 構造的ナラティヴ分析の展開
 5 ナラティヴの構造と言語編成
 6 本書の方法論的視座

第3章 「身の上」の成立
 1 本章の目的
 2 分析の対象と視点
 3 「身の上相談」の言語編成
 4 「身の上」の成立――「身の上」として語ること
 5 「身の上」の記述を可能にしたもの
 6 「物語」と生活世界の記述

第4章 自己物語と「共同性」の生成
 1 本章の目的
 2 日記に現れる自己物語を分析すること
 3 「物語」を捉える視点――物語論と自己論から
 4 日記に現れる自己物語
 5 「物語」という様式と「共同性」の生成

第5章 女性と「不幸の共同体」
 1 本章の目的
 2 分析の対象と方法
 3 「不幸」についての記述
 4 「不幸」を受け入れるということ
 5 「不幸の共同体」

終章 自己物語記述様式の成立と「共同性」
 1 本章の目的
 2 自己物語記述様式の成立
 3 「私たち」と「共同性」
 4 「物語」と「共同性」

あとがき
参考文献
参考資料