「認知症」とされる人たちを「認知症」と呼ぶ前に、
そう呼ぶ前に考えなければならないことは、
決して少なくないのだと思う。
あなたを「認知症」と呼ぶ前に
私とあなたのフィールドワーク
「ケアされる側」にたたされるその人たちの、それだけではない「生のいずまい、たたずまい」に魅かれた著者が、
自らの「とまどい、まよい、失態」を見つめつつ、その人たちと私〈との体験〉を汲みとり、聞きとり、描きだす中から、
これまでとりこぼされてきたさまざまなことがらを浮かび上がらせる、
〈身をもって〉考えるフィールドワークの全貌。
【目次】
はじめに
1 「認知症」と呼ばれている人たち
2 本書の構成
序 章 「本人は幸せだよね」ってマジかよ
1 「私をフィールドに行かせてください」
2 参与観察の憧れと挫折
第1部 かれらを「認知症」と呼ぶ前に
第1章 ケアしないフィールドワーカーじゃいられない!?
1 どこに、どんなかたちで?
2 フィールドでの一日
3 ケアしないフィールドワーカーじゃいられない
4 〈かわし合い〉自体をフィールドノートにつける
第2章 フィールドワーカーに涙は入らない
1 「ボクが白身でキミ(黄身)を抱く」
2 フィールドワーカーに涙はいらない
3 「これが苦しゅうて」「そこにしちゃいなさい」
第3章 フィールドにつなぎとめてくれた人たち
1 「白くなれ、白くなれ」
2 「ほしけりゃ、あげましょ、のしつけて」
3 〈身をもって〉考えるフィールドワークへ
第4章 ユキさんの指と指──“顔”を見ることができていたのか?
1 ユキさんとの出会い
2 「巾着が中に入ってしまって」
3 「そこにパンがあるだろ」
4 「灰皿をさがしてんの」
5 「パン」や「タバコ」にまつわる思い出
6 「こんなことに閉じ込めやがって」
7 「昔から日本人は、“色で食う”って言ってな」
8 “顔”を見ているのか?
9 ユキさんの指と指
10 ユキさんを「認知症」と呼ぶ前に
第5章 かわし合うために「呆けゆく」体験を
1 「〈交わす〉こと」と「〈かわす(躱す)〉こと」
2 「認知症」とされる〈体験〉とは?
第2部 〈交わし合う〉こと、〈かわし(躱し)合う〉こと
第1章 “ケアする”フィールドワーカーへ
1 〈通い〉から〈泊まり込み〉へ
2 なぜ〈泊まり込み〉へ?
3 “ケアする”フィールドワーカーへ
4 〈泊まり込み〉のフィールドワーカーへ
第2章 「あなたがやらなくてもいいのよ」
1 「手しごと」という〈はたらきかけ〉
2 ハギモトさんが「認知症」とされるまで
3 ハギモトさんにとって私は「何者」?
4 「あなたがやらなくてもいいのよ」
5 ケアされるケア
第3章 「認知症」とされる人たちと私との〈体験〉
1 「なにがなんだかわかんないの」
2 クサカさんの夜中の不安
3 フィールドノートにつける私の罪悪感
第4章 「認知症」とされる〈体験〉の汲み取り
1 クサカさんのライフストーリー
2 「呆けゆく〈体験〉」の汲み取りをやってみる
第5章 “難場”をしのぐ〈かわし合い〉
1 〈かわし(躱し)〉の「パッシング・ケア」
2 相手を「呆け(認知症)」としてみなさないまなざし
3 〈かわし(躱し)合い〉の妙味と苦味
第3部 「自分」をみせる〈交わし合い〉
第1章 本人が〈体験〉をつぶやくケアの場へ
1 〈体験〉のさらなるフィールドワークへ
2 「お客さまが来ちょられます」
第2章 「小山のおうち」での〈交わし合い〉
1 「小山のおうち」での一日の流れ
2 スタッフとメンバーとの密なる〈交わし合い〉
3 「呆けゆく」生き難さを「しんどさ」ととらえる
第3章 「自分」をみせる〈交わし合い〉
1 メンバーが「自分」をみせる“つぶやき”
2 スタッフが「自分」をみせるミーティング
3 「自分」に悩むフィールドワーカー
4 「観察者として」の挫折!?
第4章 かれらに「自分」をみせることは
1 「お客さま」に徹する
2 「参与者」としての挫折、「観察者」としての反省
第5章 なぜ「もの忘れ」について語れるのか?
1 「安心」を贈り続ける、心から「楽しむ」
2 思いのまま、思いつくまま、ともに語り合える
3 暮らしの〈主役〉はあるのか?
4 「待つ」ということ
5 「語る」ことの意味──つらさを除くフィルター
6 〈躱し合い〉と〈交わし合い〉でみる「呆けゆく事態に向き合うケア」
第4部 「利用者」ではなく〈その人〉として
第1章 「利用者」ではなく〈その人〉へ
1 「場ありき」ではなく「人ありき」へ
2 「利用者」としてではなく〈その人〉との〈かわし合い〉へ
第2章 「認知症の当事者」越智俊二さんとの出会い
1 「認知症の当事者」が語る
2 「認知症の当事者」としての俊二さんと会う
3 俊二さんの講演
4 俊二さんとの顔合わせ
5 「子どものようになってしもうて」
6 新宿御苑での雨宿り
第3章 俊二さんが〈体験〉を「語る」まで
1 仕事でのトラブル
2 〈定年〉を迎えられない
3 働きたいけど、働けない
4 ただ病名を告げられたかたちでの告知
5 診断までのタイムラグ
6 「笑うことができない」ことからの快復
7 「ケアするフィールドワーカー」からのはなれ
8 俊二さんの「語ること」へのこだわり
9 俊二さんを「研究対象」としてみれなくなる!?
10 「語る」ことで「当事者」となる、のか?
11 「利用者」でも「当事者」でもなく〈その人〉として
12 〈にもかかわらず〉笑う
第5部 聴きとること、語る/騙ること
第1章 〈聴きとり〉を聞きとる
1 〈聴きとり〉という〈交わし合い〉
2 「また泣かされにいかなきゃ」
3 俊二さんとの〈聴きとり〉
4 〈聴きとり〉と「聴きとり?」の違い
5 「いつ、どこで、なにを」へのとらわれ
第2章 「語り」は最期まで活かされるか
1 「床が浮いてくる」
2 「そういうことがあったんですか、格好悪いですね」
3 「言えなくて、たまらなかった」
4 「娘たちには言えなかった」
5 家族への「贈り物」
6 「家族に伝えられない」ことを聴きとる
7 「家族でない者」だからこそ
8 活かされる「語り」
9 「語り」は最期まで活かされるか
第3章 「語ること」と「騙ること」
1 抑えてきたことからの“解放”
2 「言葉が出るまでの後押し役」
3 「無知の姿勢」としての〈聴きとり〉
4 「語れない」のではなく、「語れなくさせられてきた」?
5 躱し合ってきたが交わし合わなかったのか?
第4章 「認知症であること」を受け容れるとは?
1 「認知症であること」を受け容れるとは?
2 「認知症であること」を受け容れ、語る人
3 「花に話しかけていた」
4 「俺だってできるんじゃないかなあ」
5 受け容れて語ろうとする背景
6 受け容れをめぐって葛藤する人
7 時田さんが「認知症」と診断されるまで
8 受け容れと葛藤とのはざまで
9 本人が受け容れることは、必要なのか?
10 〈なる〉こと、〈される〉こと
11 「語ること」と「騙ること」
12 「受け容れること」と「語ること」をめぐって
終章 あなたを「認知症」と呼ぶ前に
──「認知症」とされる人たちと私との〈かわし合い〉のなかで
1 「認知症」とされる〈体験〉の「語り」から気づかされたこと
2 ウソつく、つかない、どっちであっても
3 俊二さんから受け取った“宿題”
補章 認知症当事者の〈姿〉はどこにある?
──愛知鉄道事故判決(「認知症徘徊事故訴訟」)に関する報道への疑問
1 最高裁までいった「認知症徘徊事故訴訟」
2 男性が事故にいたるまで
3 当事者の姿が見えない!?
4 「徘徊」する人の焦りと不安を感受しているか?
5 助けを求めることへの羞恥心に気づけているか?
6 「徘徊」という捉え方を捉え直す
7 当事者の〈姿〉はどこにある?
8 当事者抜きにことを始めることなかれ
9 誰もが見守られないと生きられない
10 当事者の〈姿〉に思いをはせる
あとがき、とこれから。
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謝辞
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