災害時要援護者・災害弱者というカテゴリーでは拾えない「曖昧なニーズ」の典型としての「災害とジェンダー」。
災害・支援・ケアの社会学
地域保健とジェンダーの視点から
災害時要援護者・災害弱者というカテゴリーでは拾えない「曖昧なニーズ」の典型としての「災害とジェンダー」。
自然災害の被害とニーズを、地域単位の災害対応における被災者ニーズへの対応(=被災者ケア)という問題に即して検討し、
保健師という職能の持つ可能性を提起する。
【目次】
まえがき──社会的カテゴリーと被害の関連づけ
凡例
第Ⅰ部 自然災害の被害とニーズの理論的考察──リスク論・ヴァルネラビリティ概念
第1章 被災者支援・ケアの視点の理論的意義
1 リスク、支援・ケア、地域社会
2 支援・ケアの観点からの災害研究の動向
2-1 国内の災害研究
2-2 東日本大震災以後の支援カテゴリーの細分化
3 アメリカ災害研究と被災者支援・ケアの問題
3-1 アメリカ災害研究の潮流
3-2 誰のための災害研究かという問題提起
4 自然災害への支援・ケア論的アプローチ
4-1 小括
4-2 いくつかの課題
第2章 個人のヴァルネラビリティとリスク社会
1 誰がどのようにリスクに対して脆弱なのか
2 自然災害による被害の原因帰属・責任帰属
3 ヴァルネラビリティ概念とリスク社会論
3-1 ヴァルネラビリティ概念の多様性
3-2 ヴァルネラビリティの構造パラダイム
4 個人のヴァルネラビリティとリスク社会論との乖離
4-1 リスク・被害と帰属
4-2 非知のヴァルネラビリティ
5 地域社会における包摂・排除とヴァルネラビリティ
5-1 グローバルな災害リスクとローカルな被災者支援
5-2 ヴァルネラビリティと社会的包摂・排除
6 被害の個別性という問題
第Ⅱ部 被災者支援における被害・ニーズの考察──災害と女性とケア
第3章 被災者とジェンダー問題
1 性別に規定された被害の社会学的考察
2 災害研究における「女性の視点」論の登場
2-1 「女性の視点」論の潮流
2-2 平常時の女性とヴァルネラビリティ
2-3 女性とヴァルネラビリティの社会的次元
3 災害時の「女性の」被害の身体性
3-1 発災直後の24時間(発災期) 死者数の性差、避難行動の男女差
3-2 発災後の2から3日間(緊急避難期)
3-3 発災後の半年間(避難所生活期・ライフライン等復旧期)
4 「女性の視点」から見た地域社会の災害対応
5 ケアする主体としての女性という問題
第4章 地域社会における災害時要援護者の支援・ケアと「女性の視点」
1 災害時要援護者をケアするのは誰か
2 ケアする者のヴァルネラビリティ
3 地域防災のなかの災害時要援護者
3-1 災害時要援護者対策
3-2 災害時要援護者とは誰か
4 ヴァルネラビリティへのケアに資する地域防災・災害対応
5 被災者ニーズの多様性と「女性の視点」との関連
第Ⅲ部 保健師の専門性の考察──東日本大震災と地域保健 123
第5章 災害時の保健医療福祉ニーズの個別性とジェンダー──保健師に着目して
1 保健活動への着目
2 ジェンダーを反映した健康ニーズと個別具体的なケア
3 保健師とジェンダー化された健康ニーズとの関係
3-1 保健師とは
3-2 国内における保健師の活動の特色
4 保健師の職能性と災害対応
4-1 過去の災害と保健活動
4-2 東日本大震災と保健活動・保健師派遣
4-3 保健活動の理念や原点からみた被災者支援・ケア
第6章 長期化する避難生活における保健活動とジェンダー──保健師鈴木るり子氏の活動から
1 支援の社会学と健康
2 鈴木るり子氏の略歴
3 岩手県大槌町のベテラン保健師による健康支援の事例
3-1 大槌町お茶っこ飲み会の概要
3-2 同会で行われる保健指導の事例
4 健康支援にみる「ポピュレーション・アプローチ」の位置
5 被災者支援における保健師の地区担当制の意義
5-1 ポピュレーション・アプローチ型の被災者支援の可能性
5-2 健康支援の岐路:後期高齢者にとって被災が意味するもの
第7章 東日本大震災の経験と保健師職能の再評価──地域保健の新たな課題
1 各フェーズにおけるニーズ把握の経験と保健師
2 保健師の災害対応マニュアルと退職保健師
3 徳島県プラチナ保健師制度と退職保健師の役割
3-1 徳島県「プラチナ保健師」制度の設立経緯
3-2 プラチナ保健師登録者たちの災害支援経験
4 保健師と地域との関わりの再評価
第8章 災害・支援・ケアの社会学と専門知──ニーズへの応答に向けて
1 議論のまとめ
1-1 自然災害の被害とニーズの理論的考察──リスク論・ヴァルネラビリティ概念
1-2 被災者支援における被害・ニーズの考察──災害と女性とケア
1-3 保健師の専門性の考察──東日本大震災と地域保健
2 ニーズの多様性をめぐる「災害・支援・ケア」の社会学と専門職
2-1 論点1 女性への支援・ケアの持続可能性と専門職
2-2 論点2 地域ケア体制の構築と専門職
文献
あとがき・謝辞