ごく基本的なこととして、かつて腎臓病の人たちが
金を払えず死んでいったことがあることをどのぐらいの人が知っているだろうか
腎臓病と人工透析の現代史
「選択」を強いられる患者たち
「生きる」ために人工透析という手段が普及したにもかかわらず、
患者が選択する/選択されるという事象が、今、起きているのはなぜなのか?
生きることが可能となる医療技術を、誰がどのように享受するのか、享受するための仕組みをどのように作るのか。
その問いを突きつけるものとしての人工透析の歴史──技術の導入と制度・政策の構築過程、
患者たちが直面する現状がいかに形成されてきたか──を検証し明らかにする。
【目次】
はじめに
序文 これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う 立岩真也
序 章
1 本書の背景と目的
2 本書の構成
3 研究方法
4 本書で用いる用語についての説明
第1章 人工腎臓で生きる人々の現状
1 人工腎臓、利用したくてもできない事情
2 人工腎臓にかかる費用
3 人工腎臓の利用/非利用──日本の動向
4 人工腎臓の利用、日本と世界の様子
5 人工腎臓、生存のための手段
第2章 人工腎臓の歴史と現況
1 腎機能代替療法の歴史
2 日本における人工腎臓の研究
第3章 希少な人工腎臓と選択される患者たち
1 「神様委員会」による選択──アメリカ
2 「お金の切れ目が命の切れ目」──日本での経緯
第4章 患者会の成立──医療を享受するために
1 病院単位の組織から組織拡充への動き
2 全国組織の成立
第5章 公費獲得までの道程
1 厚生省との交渉
2 身体障害者福祉法──更生医療と内部障害者
3 自治体への働きかけ──すべての人が制度を利用できるために
4 公費獲得の成立過程を振り返って
第6章 1970年代の医療供給/費用配分のスキーム
1 医療保険制度とその矛盾
2 医療供給のための諸施策
3 高額療養費制度の創設──給付率の偏りの補完の策として
4 1970年代に形成された医療供給のスキーム
5 医療機関存続の手段
6 せり出す費用負担者の懸念
第7章 腎移植の普及と頓挫──1980年代
1 腎移植──もう1つの生存の手段
2 腎臓移植の推進と限界
3 希少性を有する腎移植
第8章 人工腎臓の供給抑制──医療費用配分の一環として
1 医療供給のコントロール
2 人工腎臓への費用配分の変遷
第9章 人工腎臓の利用/非利用──決定の要因
1 欧米の傾向
2 日本における利用/非利用の決定要因
3 宮崎県透析拒否事件
4 医師の裁量と患者の意向
5 流れはつくられる
終 章
謝 辞
文献表
資 料