「ケガ」をしていても、胸を張って競技者として生きていくためには何が必要なのか。
障害学の視点からスポーツ障害を研究するはじめての試み
スポーツ障害から生き方を学ぶ
ケガをめぐる競技者たちの語り
本書が描こうとしているのは、スポーツ競技者の目から見た「スポーツ障害」であり、彼らの間では「ケガ」と呼ばれている経験についてである。
「障害学」というのは、障害を医師の視点からではなく、障害を経験する本人の視点から研究しようとする学問である。それは、「障害」についての見方そのものを転換させることにもつながるし、それを社会に訴えていく運動でもある。たとえば、「障害」というのは、必ずしも医学的に治療しなければならないものばかりではなく、目が見えなくても、耳が聞こえなくても、歩けなくても、たとえ、なおらない病気でも、精一杯生きていける社会を目指そうと訴えかけていくのは障害学の重要な使命のひとつだろう。この障害学の視点を「スポーツ障害」にもあてはめていこうというのが本書の目的である。つまり、「ケガ」をしていても、胸を張って競技者として生きていくためには何が必要なのか考えていくことが、障害学の視点からスポーツ障害を研究することである。
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【目次】
いろんな人の精一杯
第1章 スポーツ競技者にとっての「ケガ」という経験
1.「スポーツ障害」とは何か
2.誰にも言えない悩み
3.ケガの環境要因
エッセイ1:私の「スポーツ障害」 アキヒト
エッセイ2:今だから語れる私の物語 タツ
エッセイ3:「つながり」と「居場所」 NOBU
第2章 「障害学」から見たスポーツ障害――ケガに悩む人に聞いてほしい5つの話
1 「人生いいこと悪いこと五〇・五〇、努力してプラス」――B君の話
2 ケガした選手も含めて全員がしなければならない――X監督の話
3 じたばたするのが人間です――石川准さんの話
4 「自分いじめはやめよう」――べてるの家と「降りていく生き方」
5 「障害者スポーツ」の選手たちは何を目指しているのか?
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スポーツ障害の紙芝居
第1部 ケガで悩んでいる人へのメッセージ
作品1「自分いじめはやめよう」
作品2「弱さを伝える勇気」
第2部 「障害」のある人たちの話とスポーツ
作品3「モリタさんの話」
作品4「ライオンの話」
作品5「ライオンとウサギ」
作品6「ウサギの話~ふたりの自分」
作品7「ヨリタカさんの話」
第3部 あきらめられない人へのメッセージ
作品8「僕と監督さんA」
作品9「コロの話――小さな一歩」
作品10「ジジの話――無理をしないで頑張るために」
作品11「Rinちゃんの話」
第4部 チーム指導について考えるために
作品12「僕と監督さんB」
作品13「X監督の話」
作品14「納得できる負け、できない負け」
作品15「どうぶつ座談会」
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第3章 「スポーツ障害」から「障害学」へ――関西大学杉野ゼミの二年間
1 スポーツ障害ゼミができるまで
2 「スポーツ障害」への見方を自問する――一年目のゼミ活動(二〇〇七年度)
3 「障害を語れる場」を目指して――二年目のゼミ活動(二〇〇八年度)
4 「障害を語る輪」の広がりを求めて――「紙芝居」と卒業エッセイ
エッセイ4 目が悪いことを野球の下手な理由にはしたくなかった ヒデ
エッセイ5 ほんとの本音 ZAKI
エッセイ6 「障害」と「健常」のどっちつかず――「色弱」と「スポーツ障害」 YUTARO
エッセイ7 「べてるの家」から考えた高校時代のケガと大学での就活 まさひ
エッセイ8 首の付け根にできたしこりが変えた私の空手道 フク
エッセイ9 「弱さ」を認める勇気 Rin
エッセイ10 自分なりの精一杯 じゅんぺい
エッセイ11 前へ進もうとしているからこそ今悩んでいる みえ
エッセイ12 じたばたすることが支えになる ひろ
エッセイ13 ゼミのなかでの「居場所」 ユリ
付録:論文「スポーツ障害の障害学的研究」
あとがき
本書を作成した人たち