「とるに足らない」とされたものたちの思想に向けて

分解者たち

見沼田んぼのほとりを生きる

猪瀬浩平【著】 森田友希【写真】

[定価]   本体2,300円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-094-8
[判型]46判並製
[頁数]416頁

Amazonで購入

障害、健常、在日、おとな、こども、老いた人、蠢く生き物たち……
首都圏の底〈見沼田んぼ〉の農的営みから、どこにもありそうな街を分解し、
見落とされたモノたちと出会い直す。
ここではないどこか、いまではないいつかとつながる世界観(イメージ)を紡ぐ。

【目次】


序章 東京の〈果て〉で
 「とるに足らない」とされたものたちの思想に向けて
 見沼田んぼという空間
 風景から人びとの歴史を読み取る
 排出されたものたちの蠢き──「分解」ということ
 恩間新田の内奥で
 「おらっちの生活は自立っつうのになってっかい」
 この本の構成

第一部 胃袋と肛門

 第一章 見沼田んぼ福祉農園のスケッチ
  福祉農園を構成する人びと
  食べること、育てること──休日の食卓
  老いること、経験の循環(リサイクル)──平日の食卓
  営農のスタイル
  農園の土作り──馬糞のこと
  廃棄されたものを分解する
  そこに本当にあること

 第二章 首都圏の拡大と見沼田んぼ──福祉農園の開園まで
  首都圏という歪な身体
  人口急増期の埼玉県南部──大宮市長秦明友の時代
  ごみとし尿が流れ着く場所
  高度経済成長期の見沼田んぼ──狩野川台風から見沼三原則へ
  開発と保全をめぐるせめぎ合いから、保全・活用・創造の基本方針の策定へ
  見沼田んぼ福祉農園の開園──シュレッダーの手前、荒地からのはじまり

 第三章 灰の記憶──越谷市の三・一一
  中心のなかの辺境という問題
  農村から郊外へ
  下妻街道の傍らで
  灰の記憶

第二部 地域と闘争(ふれあい)

 第四章 〈郊外〉の分解者──わらじの会のこと
  平穏なベッドタウンで
  まちを耕す
  密室の団欒──開かれた場ということ
  「被災地」という言葉を分解する

 第五章 三色ご飯と情熱の薔薇
  三色ご飯
  兄の高校入試
  情熱の薔薇
  のろのろと歩き、颯爽と走る

 第六章 まつりのようなたたかい──埼玉の権力の中枢で
  ある風景
  知事室占拠に至るまで
  占拠された知事室、占拠した身体の群れ
  「雲の上の人」との対話
  まつりの後に
 
第三部 どこか遠くへ、今ここで

 第七章 土地の名前は残ったか?──津久井やまゆり園事件から/へ
  追悼会で叫ぶ
  万歳と吶喊──人の名前と土地の名前
  相模湖町一九六四
  相模ダム一九四一‐四七
  夏の祭礼の前に
  (追記)下流の青い芝──川崎の小山正義

 第八章 水満ちる人造湖のほとりから──相模ダム開発の経験と戦後啓蒙
  飯塚浩二──ゲオポリティク論の間、娘との距離
  川島武宜・大塚久雄──濃密な与瀬経験
  総力戦体制下の与瀬
  「髭を生やした飯塚君」

 第九章 「乱開発ゾーン」の上流で──見沼田んぼの朝鮮学校
  朝鮮学校が見沼田んぼにあること
  埼玉朝鮮初中級学校の誕生
  サクラとアオダイショウ
  校庭のイムジン河
 
終章 拠り所を掘り崩し、純化に抗う
 
あとがき──〈私〉たちの経験を解(ほど)いて、一冊の本を編む
写真について メモ
参考文献