ダウン症のある子どもの母親たちは、いかに母親であることを続けているのか

戸惑いと生活を回す

ダウン症児の母親たちの「生活経験としてのケア」

齋藤雅哉

[定価]   本体3,000円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-182-2
[判型]A5判並製
[頁数]328頁

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ダウン症のある子どもの母親たちは、いかに母親であることを続けているのか
ケア責任を委ねられた行為者でありつつ、自分自身の生き方をも見い出していく母親たちのありようを抽出し、子育て経験と子どもとの共同性の構築・変容について明らかにする。

【目次】


はじめに
ダウン症の特徴と母親たちのケアについて

序章
 1 目的
 2 社会背景
 3 本書の構成

第1章 障害児者「家族」の問い方
 1 はじめに
 2 障害者家族研究における親像
  2-1 望ましい家族、望ましい親
  2-2 行為者としての母親
 3 近代家族論と脱家族
  3-1 近代家族論と半閉鎖集団としての家族
  3-2 脱家族論と構築主義的家族論
 4 障害児者家族の「ケアの社会的分有」に関する社会学的研究の再検討
 5 役割と実践の経験
  5-1 母親役割と生き方
  5-2 家族機能を担う相対的に自律的な家族の営み
 6 家族ケアの社会学に向けて
  6-1 先行研究のまとめ
  6-2 子どもへのケアを続ける時間と空間

第2章 生活史法と調査概要
 1 個人に着目した調査法
  1-1 調査研究法としての生活史
  1-2 ふたつのアプローチ
  1-3 個人の位相と個人的経験
  1-4 個人を基点とした質的研究と本書の視点
 2 調査概要
 3 対象者のプロフィール

第3章 母親たちの戸惑いと親子関係の形成
 1 はじめに
 2 母親たちの戸惑いと了解
  2-1 ダウン症を頭で考える
  2-2 子どもとの関係をつかむ
  2-3 子どもとの関係性を肯定する
  2-4 戸惑いを埋める/戸惑いに出会う
  2-5 ライフコースと戸惑う感情
  2-6 戸惑う時間
  2-7 〈健常者中心社会〉に戸惑う
 3 戸惑いと親子関係

第4章 ケアと生活を形づくる実践
 1 はじめに
 2 五人の母親たちの語り
  2-1 子どもとの生活に慣れる
  2-2 子どもとその周りと暮らしていく
  2-3 「子どもに合わせる」スタンスを選択する
  2-4 一緒に旅行ができる
  2-5 自分が幸せになるために
 3 生活を形づくる実践

第5章 地域で暮らす生活経験としてのケア
 1 はじめに
 2 Mさんの語りから
  2-1 社会諸資本とのやり取りと母親役割
  2-2 ダウン症児の母親であることを自覚する
  2-3 療育活動が苦手になる
  2-4 就学前のもみ合いと子どもたちの目
  2-5 どうやっていこうか
 3 外に向けて、腹をくくる

第6章 母親として生活を続ける条件
 1 はじめに
 2 CさんのライフストーリーとLさんのライフストーリー
  2-1 曖昧な不安と就労継続
  2-2 子育てへの没頭と他者の視点
  2-3 社会福祉サービス・子どもの生活環境・コーディネート
  2-4 子どもの成長を見守る
  2-5 自分で生活を拓く
  2-6 生活を回す
 3 暮らしを編み直す/生活を回す

終章 結論
 1 本書の成果
 2 戸惑いと生活を回す
 3 本書の問いへの応答
 4 本書の課題

初出一覧
あとがき
参考文献