障害/有徴な身体にかかわる文化事象と表現について、深く鋭くツッコムこれぞ注目の論集!
手招くフリーク
文化と表現の障害学
障害・障害者という存在、あるいは、ネガティブに意味づけられることの多い身体的特徴とのかかわりにおいて、マンガ、アニメ、写真、音楽、小説、絵画などの文化事象・表現に、深く鋭く突っ込むこれぞ注目の論集!
なにがしかの〈場〉のなかに布置されている、表現物や表現行為。その固有の性格を無視して、なんの吟味も導入手続きも踏まずに、表現物や表現行為について語るといった粗暴なふるまいから卒業し、〈場〉の力学や規則をしっかり見きわめた上で、障害と表現について障害学の立場からあらためて考察する。
[現在品切中]
【目次】
序 文化と表現の障害学に向けて(倉本智明)
第1章 「真実の感動物語」を読み解く(土屋 葉)
はじめに
1 少女マンガにおける「障害」というテーマ
2 車いすの彼/彼女の物語
3 肯定の根拠としての愛情――「そのままのキミが好き」
4 少女マンガの可能性と限界
第2章 アルビノ萌えの「後ろめたさ」からの逃走(矢吹康夫)
はじめに――「後ろめたさ」の不在から
1 邪悪なアルビノと白い美貌
2 綾波レイはアルビノなのか?
3 アルビノ萌えのための当事者の不可視化
おわりに――「後ろめたさ」からの逃げ道
第3章 「異形」から「多様な美」へ――ポジティヴ・エクスポージャーの試み(西倉実季)
1 「異形」の文化的改変という戦略
2 「ポジティヴ・エクスポージャー」というプロジェクト
3 異形の文化的表象
4 ポジティヴ・エクスポージャーの可能性
おわりに
第4章 児童文学にみる障害者観――「ピノキオ」問題は克服したか?(三島亜紀子)
はじめに
1 障害児殺し事件を描く児童文学――希望の光としての医学モデル
2 ロマン主義的な障害者観
3 「ピノキオ問題」再考――前近代的障害者観の呪縛
4 ノンフィクションと「マニュアル絵本」
おわりに
第5章 「改造人間」、その変容とその「幸福」について(中根成寿)
1 「おたく」活動を引退したものとして
2 「改造人間」をとらえる視角
3 「改造人間」の変容
4 縮小する身体、拡張する「私」
5 侵略される身体、支配する「私」
6 身体を「改造」し、支配することは「幸福」なのか
第6章 ラッパーたちのフリーク・ショー――その身体は、何を物語っているか(後藤吉彦)
はじめに
1 ラッパーって何?
2 キャンバスのような身体
3 ブランド品の身体
4 呪われた身体
おわりに
第7章 自己表現の障害学――〈臨生〉する表現活動(荒井裕樹)
はじめに――〈言葉探し〉への助走
1 保護室のマリア――鉄格子の中の自己表現
2 〈出来事としての癒し〉――安彦講平の造形活動
3 己の病を描くこと――本木健の場合(一)
4 症状と共に「在る」こと――本木健の場合(二)
5 結びにかえて――〈臨生〉する表現活動への試み
第8章 手話音楽のこれまでとこれから(加藤晃生)
1 ややこしい音楽
2 日本における手話音楽の歴史
3 抑圧の象徴としての手話音楽
4 「やる側」の思い
5 手話音楽のこれから
第9章 萎えツボの地雷原から隣へ逃れて(ニキリンコ)
はじめに――異星人という比喩
1 「傲慢」批判のややこしさ
2 フィクション世界の障害者たち
3 ムカつく、乗れない、萎える
4 お気楽な代償行為
5 ゲイミステリという宝の山
おわりに――多様性の源としての商売っ気
第10章 岩と違和をめぐるモノローグ――ロックを聴くこと、障害者であること(倉本智明)
1 かっこいい人たちの音楽?
2 「私小説」としての障害学
3 いつか君が置き忘れた縫い針一本
4 法律よりも死の方が慈悲深いこの国で
5 ぼくらの重さはもう古い地図には載ってないのさ
6 夢のぬけがらがお陽様
7 ひとりぼっちのめくらになってたんだ
8 岩と違和