今ここにある個人の身体から切り離し難い障害/病気=血友病を立脚点に現代社会の課題を描き出す
日本の血友病者の歴史
他者歓待・社会参加・抗議運動
1960年代後半から1980年代における血友病者および血友病患者会/コミュニティの歴史を論じ、
血友病者を軸に、医療技術、公費負担、学校教育、マスメディア、優生思想、感染症問題などの様々な主題へと展開。
血友病を何かの具体例として扱うのではなく、血友病を視座に社会を捉え直そうとする意欲的な試み。
【お詫びと訂正】
本書の本文中に以下の誤りがありました。
以下、お詫びして訂正させていただきます。
(生活書院編集部)
■196ページ7行目
(誤)民主党
(正)民社党
■19ページ2行目
(誤)全国ハンセン病療養者協議会
(正)全国ハンセン病療養所入所者協議会
【目次】
献辞
序章 血友病患者会/コミュニティの歴史への問い
1 血友病患者会/コミュニティの歴史への問い
2 本書の基本的視座
3 本書における基本概念および時期の区別
4 近接領域の概観と薬害研究の限界
5 本書の用語説明
前史 戦前戦中の血友病者たち
1 はじめに
2 戦前に就職した血友病者
3 徴兵された血友病者
4 空襲に遭った血友病者
5 おわりに
第1部 血液製剤の登場と全国ヘモフィリア友の会の創立
第1章 血液製剤の登場と普及――血友病と医療技術(1940~)
1 はじめに
2 日本の血液事業の展開
3 献血推進の主張
4 血友病治療の大転換
5 製薬企業と医師たちの問題認識
6 “ホーム・インフュージョン”の導入
7 ライシャワー事件以後の国会審議
8 閣議決定が生んだ矛盾
9 おわりに
第2章 全国ヘモフィリア友の会の創立――血友病と公費負担(1967~1974)
1 はじめに
2 患者運動と難病対策の展開
3 全国ヘモフィリア友の会の創立
4 公費負担の開始
5 年齢制限の壁
6 小児慢性特定疾患治療研究事業の成立
7 公費負担成立の背景
8 おわりに
第3章 大西赤人君浦高入学不当拒否事件――血友病と学校教育(1971)
1 はじめに
2 血友病者の進学や就職
3 浦高事件以前
4 内申書をめぐる対立――浦高事件・1
5 実現する会結成とメディアの反響――浦高事件・2
6 特別抗告棄却と大検合格――浦高事件・3
7 おわりに
第2部 Young Hemophiliac Clubの誕生と「錆びた炎」問題
第4章 Young Hemophiliac Clubの誕生――若手血友病者の台頭(1973~1976)
1 はじめに
2 パンフレット『若者よ 集まれ!』
3 松嶋兄弟にみる個人差と地域差
4 「青年の集い」の開催
5 Young Hemophiliac Clubの結成
6 松嶋兄弟とYHCの交流
7 “ホーム・インフュージョン”への期待
8 おわりに
第5章 「錆びた炎」問題・「ブラックジャック」問題――血友病とマスメディア(1977・1981)
1 はじめに
2 「錆びた炎」問題
3 抗議と反論の位置
4 かみ合わない議論
5 抗議運動の終結
6 抗議運動の成果と限界
7 「ブラックジャック」問題
8 おわりに
第6章 Young Hemophiliac Clubの再編――血友病者の新しい身体(1978~1979)
1 はじめに
2 YHCの組織再編
3 YHCと全友にできた溝
4 一人で旅行ができる身体――網野合宿・1
5 問われた血友病者の社会性――網野合宿・2
6 できる範囲/できない範囲の境界の変動
7 年齢制限撤廃運動のその後
8 おわりに
第3部 全国ヘモフィリア友の会の展開とエイズ問題
第7章 全国ヘモフィリア友の会の展開――血友病者と自己注射(1975~1981)
1 はじめに
2 フラターナル・ナイトの開催
3 デートリッヒ医師の講演
4 全友の出版物等監視委員会
5 北村全友会長のアメリカ単独行
6 武見医師会会長と橋本厚生大臣への面会
7 医学書『血友病』の発行
8 おわりに
第8章 「神聖な義務」問題――血友病と優生思想(1980)
1 はじめに
2 機関誌『全友』にみる出生前診断
3 「神聖な義務」問題とその背景
4 渡部への批判
5 血友病者側の反応
6 血友病者側の反論の困難
7 血友病者と青い芝の差異
8 おわりに
第9章 自己注射の公認と高額療養費限度額の改正――血友病者の明暗(1983~1984)
1 はじめに
2 自己注射の公認
3 日本の血友病者たちの1970年代
4 「明るい未来」の崩壊
5 高額療養費の限度額改正
6 おわりに
第10章 全国ヘモフィリア友の会の休止――血友病とエイズ問題(1985~1989)
1 はじめに
2 加熱処理製剤の認可
3 立ち上がる血友病者たち
4 第20回全国大会をめぐる応酬
5 野村会長の就任
6 エイズ予防法案との闘い
7 おわりに
跋章 血友病患者会/コミュニティの歴史が拓く問い
1 第1期の総括から第2期の議論へ
2 「錆びた炎」問題の歴史的意義
3 血友病患者会/コミュニティの分断破線
4 血友病患者会/コミュニティの歴史が拓く問い
5 1970年代の忘却に抵抗する
補論1 C型肝炎特別措置法による差別――血友病とC型肝炎
1 はじめに
2 C型肝炎特別措置法案をめぐる長い一日
3 両院の厚生労働委員会の質疑及び決議
4 C型肝炎特別措置法の問題点
5 おわりに
補論2 ヘモフィリア友の会全国ネットワークの結成――血友病コミュニティの再生
1 はじめに
2 ヘモフィリア友の会全国ネットワークの結成
3 国会決議に基づく厚生労働省との協議
4 遺伝子組換製剤ノボセブンの不採算品再算定
5 全国ヘモフィリアフォーラムの開催
6 ヘモフィリア友の会全国ネットワークの含意
7 おわりに
血友病患者会
コミュニティ略年表
あとがき
謝辞
参考文献