本書の意義は失われていないと思う。それで幸福な人生が送れたかはともかく、
この本を読んで「家出」したという人に幾人も会いもした。(「第3版刊行にあたって」より)

生の技法 [第3版]

家と施設を出て暮らす障害者の社会学

安積純子 岡原正幸 尾中文哉 立岩真也【著】

[定価]   本体1,200円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-002-3
[判型]文庫判並製
[頁数]666頁

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「家」や「施設」を出て「地域」で暮らす重度全身性障害者の「自立生活」。
その生のありよう、制度や施策との関係、「介助」の見取り図などを描きだして、
運動と理論形成に大きな影響を与え続けてきた記念碑的著作。
旧版(増補改訂版)から17年を経て、あらたに2つの章「多様で複雑でもあるが基本は単純であること」、
「共助・対・障害者――前世紀末からの約一五年」を加えた待望の第3版が文庫版で刊行!!
 解説=大野更紗

【目次】


はじめに
 1 「自立生活」について
 2 調査の経緯と概要
 3 構成

増補・改訂について

第3版刊行にあたって

第1章 〈私〉へ──三〇年について  安積純子
 幾度も手術をする(1956)
 施設で暮らす(1967)
 帰還・障害者運動に出会う(1970)  家を出る(1978)
 バークレーに行く(1983)
 国立市に移る(1985)
 ピアカウンセラーを開業、等……(1986)

第2章 「出て暮らす」生活  立岩真也
 1 どのように暮らしているのか
 2 「欧米」の、特に合衆国の自立生活運動

第3章 制度としての愛情──脱家族とは  岡原正幸
 1 福祉と「家族」
 2 ある悲劇から
 3 愛の過剰・親の心性
 4 愛情の規範性と家族の囲い込み
 5 小括・脱家族の意味すること
 [文庫版追記]

第4章 施設の外で生きる──福祉の空間からの脱出  尾中文哉
 1 問題
 2 「虐待」と「待遇の悪さ」
 3 「管理」と「隔離」
 4 「管理」・「隔離」のうみだすもの
 5 「管理」・「隔離」を批判する論理
 6 福祉的配慮によって全生活をとりかこむもの
 7 「施設の改善」について
 8 施設を出た「後」の問題
 9 小括
 [文庫版追記]

第5章 コンフリクトへの自由──介助関係の模索  岡原正幸
 1 自立と人間関係
 2 障害者と介助者──行き違いや不満
 3 障害者と介助者──行き違いや不満の打開策
 4 世間のまなざし
 5 「介助」ということ
 6 コンフリクトへの自由
 7 小括
 [文庫版追記]

第6章 自立の技法  岡原正幸・立岩真也
 1 生活様式を伝える試み
 2 不確実な未来に賭ける
 3 与えられた場への挑戦
 4 障害を「肯定する」
 5 内側で終わらせない

第7章 はやく・ゆっくり──自立生活運動の生成と展開  立岩真也
 1 政策と運動──六〇年代までの
 2 転換1:青い芝
 3 転換2:施設から
 4 他者という存在
 5 生成
 6 政策の「転換」
 7 現況→境界線上へ

第8章 私が決め、社会が支える、のを当事者が支える──介助システム論  立岩真也
 1 この社会の編成
 2 自己責任/社会的義務
 3 家族
 4 自発的な行為
 5 有償ということ
 6 諸制度
 7 結論

第9章 自立生活センターの挑戦  立岩真也
 1 当事者による「サービス」の提供
 2 位置
 3 全国自立生活センター協議会と加盟団体
 4 活動
 5 CILに対する助成
 6 今後

第10章 多様で複雑でもあるが基本は単純であること  立岩真也
 1 その後書かれたもの知ったこと
 2 むろん身体障害に限ったことでないこと
 3 様々な暮らし
 4 批判してきた側が同じことを言うこと
 5 政策:所得/労働
 6 政策:社会サービス
 7 市民の常識を相手にせねばならない、が
 8 分権はよい、と決まってなどいない
 9 資格はとくに必要な時以外いらない
 10 明るくなれない、としても
 11 記録し・考えること

第11章 共助・対・障害者──前世紀末からの約十五年 立岩真也
 1 復習:三つの制度を拡大させてきた
 2 情報が制度を拡大させた
 3 介護保険前 一九九〇年代後半
 4 介護保険の利用者にはならなった 二〇〇〇年四月
 5 事業者にはなっておくことにした
 6 「上限問題」 二〇〇三年一月
 7 支援費制度 二〇〇三年四月
 8 介護保険との統合案 二〇〇三年九月
 9 障害者自立支援法 二〇〇六年四月
 10 「政権交代」後 二〇〇九年九月~
 11 疲れてしまった、のであるが

おわりに

文献リスト

解説  大野更紗