本書の意義は失われていないと思う。それで幸福な人生が送れたかはともかく、
この本を読んで「家出」したという人に幾人も会いもした。(「第3版刊行にあたって」より)
生の技法 [第3版]
家と施設を出て暮らす障害者の社会学
「家」や「施設」を出て「地域」で暮らす重度全身性障害者の「自立生活」。
その生のありよう、制度や施策との関係、「介助」の見取り図などを描きだして、
運動と理論形成に大きな影響を与え続けてきた記念碑的著作。
旧版(増補改訂版)から17年を経て、あらたに2つの章「多様で複雑でもあるが基本は単純であること」、
「共助・対・障害者――前世紀末からの約一五年」を加えた待望の第3版が文庫版で刊行!!
解説=大野更紗
【目次】
はじめに
1 「自立生活」について
2 調査の経緯と概要
3 構成
増補・改訂について
第3版刊行にあたって
第1章 〈私〉へ──三〇年について 安積純子
幾度も手術をする(1956)
施設で暮らす(1967)
帰還・障害者運動に出会う(1970)
家を出る(1978)
バークレーに行く(1983)
国立市に移る(1985)
ピアカウンセラーを開業、等……(1986)
第2章 「出て暮らす」生活 立岩真也
1 どのように暮らしているのか
2 「欧米」の、特に合衆国の自立生活運動
第3章 制度としての愛情──脱家族とは 岡原正幸
1 福祉と「家族」
2 ある悲劇から
3 愛の過剰・親の心性
4 愛情の規範性と家族の囲い込み
5 小括・脱家族の意味すること
[文庫版追記]
第4章 施設の外で生きる──福祉の空間からの脱出 尾中文哉
1 問題
2 「虐待」と「待遇の悪さ」
3 「管理」と「隔離」
4 「管理」・「隔離」のうみだすもの
5 「管理」・「隔離」を批判する論理
6 福祉的配慮によって全生活をとりかこむもの
7 「施設の改善」について
8 施設を出た「後」の問題
9 小括
[文庫版追記]
第5章 コンフリクトへの自由──介助関係の模索 岡原正幸
1 自立と人間関係
2 障害者と介助者──行き違いや不満
3 障害者と介助者──行き違いや不満の打開策
4 世間のまなざし
5 「介助」ということ
6 コンフリクトへの自由
7 小括
[文庫版追記]
第6章 自立の技法 岡原正幸・立岩真也
1 生活様式を伝える試み
2 不確実な未来に賭ける
3 与えられた場への挑戦
4 障害を「肯定する」
5 内側で終わらせない
第7章 はやく・ゆっくり──自立生活運動の生成と展開 立岩真也
1 政策と運動──六〇年代までの
2 転換1:青い芝
3 転換2:施設から
4 他者という存在
5 生成
6 政策の「転換」
7 現況→境界線上へ
第8章 私が決め、社会が支える、のを当事者が支える──介助システム論 立岩真也
1 この社会の編成
2 自己責任/社会的義務
3 家族
4 自発的な行為
5 有償ということ
6 諸制度
7 結論
第9章 自立生活センターの挑戦 立岩真也
1 当事者による「サービス」の提供
2 位置
3 全国自立生活センター協議会と加盟団体
4 活動
5 CILに対する助成
6 今後
第10章 多様で複雑でもあるが基本は単純であること 立岩真也
1 その後書かれたもの知ったこと
2 むろん身体障害に限ったことでないこと
3 様々な暮らし
4 批判してきた側が同じことを言うこと
5 政策:所得/労働
6 政策:社会サービス
7 市民の常識を相手にせねばならない、が
8 分権はよい、と決まってなどいない
9 資格はとくに必要な時以外いらない
10 明るくなれない、としても
11 記録し・考えること
第11章 共助・対・障害者──前世紀末からの約十五年 立岩真也
1 復習:三つの制度を拡大させてきた
2 情報が制度を拡大させた
3 介護保険前 一九九〇年代後半
4 介護保険の利用者にはならなった 二〇〇〇年四月
5 事業者にはなっておくことにした
6 「上限問題」 二〇〇三年一月
7 支援費制度 二〇〇三年四月
8 介護保険との統合案 二〇〇三年九月
9 障害者自立支援法 二〇〇六年四月
10 「政権交代」後 二〇〇九年九月~
11 疲れてしまった、のであるが
おわりに
文献リスト
解説 大野更紗