「生存学」その待望のテキスト
生存学の企て
障老病異と共に暮らす世界へ
様々な身体の状態を有する人、状態の変化を経験して生きていく人たちの生の様式・技法を知り、
それと社会との関わりを解析し、人々のこれからの生き方を構想し、
あるべき社会・世界を実現する手立てを示す=「生存学」その待望のテキスト。
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毎日からこぼれて落ちているものを拾い集めるという仕事がある。
そこから、なにか役に立つことも言えるかもしれない。
すぐには現実的でないが、可能な、まだましな道を描くことができるかもしれない。
…調べたり書いたりすることはおもしろい、大切なことだ、自分もやってみたい。そう感じてくれたらうれしい。
本書は「生存学」の「教科書」を作ってみたらと言われたところから始まっている。
ここに様々記されていることに覚えておいてほしいこともある。
ただ、もう一度繰り返すが、教えられたり諭されたりというより、むしろその「もと」を作る、それに参加しませんか。
(本書「序章」より)
【目次】
序 章 立岩真也
おもしろいかもしれない/調べることがあってしまっている/なぜ穴があいているのか?・1
なぜ穴があいているのか?・2/楽できる、時間が稼げる、が結局考えることになる、それに助言する
場があること、実際、多様であること+密度があったこと/集めること
第1章 生存の現代史 村上潔
1 患者運動の現代史
有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史──「選択」を強いられる患者たち』
2 障害者運動の現代史
定藤邦子『関西障害者運動の現代史──大阪青い芝の会を中心に』
3 介護労働運動の現代史
渋谷光美『家庭奉仕員・ホームヘルパーの現代史──社会福祉サービスとしての在宅介護労働の変遷』
【コラム】障害学国際セミナー 長瀬 修
第2章 生存のエスノグラフィー
1 ままならぬ身体と文学 西 成彦
川口有美子「カフカ、『変身』に見られる家族の自立」
田中壮泰「グレーゴルと女性たち──介護文学としての『変身』」
【コラム】生存学セミナー「目の前のアフリカ」 斉藤龍一郎
2 名指しと名乗りの民族誌 小川さやか
石田智恵「「日系人」という生き方、日系人の生き方
3 ナラティヴ・アプローチの可能性 小川さやか
高橋菜穂子・やまだようこ著
「児童養護施設における支援モデルの構成──施設と家庭をむすぶ職員の実践に着目して」
【コラム】自殺をめぐる常識的推論とその帰結──制度としての言語の観点から 藤原信行
第3章 生存をめぐる制度・政策 渡辺克典
1 倫理/規範と制度
安部彰『連帯の挨拶──ローティと希望の思想』
2 情報を保障する
坂本徳仁・佐藤浩子・渡邉あい子「手話通訳事業の現状と課題──3つの自治体調査から」
3 生/死と政策
櫻井悟史『死刑執行人の日本史──歴史社会学からの接近』
【コラム】あべこべの世界と障害者権利条約──排除のないインクルーシブな社会へ 長瀬修
第4章 生存をめぐる科学・技術 松原洋子
1 ままならぬ身体からの発信技術
堀田義太郎「重度障害者用意思伝達装置の開発・供給と政策について」
2 出生前検査のガバナンス
利光惠子「新型出生前検査について考える」
3 原子力技術と生存
横田陽子「戦後日本における環境放射能調査の経緯とその実像──原子力の導入・利用政策との関連で」
【コラム】アーカイヴィング 立岩真也
補章 立岩真也
1 概略の続きと本と賞
組織のこと/「趣意書」続き/学問か?/「関係者」の本たち/生存学奨励賞
2 両方・複数がいて考えられる
なおりたい・そのままでいい/語らなくてすむこと・埋没すること
しかし取り出され・証すことを求められる/わけを知る、ことがもたらすこと
孤立が悪いわけではないが、そうもいかない時
3 穴があいているので埋める・塊を作る
ケア場/政策系/測り指定することについて再度
指定し難く代行者に権限が行く場/福祉労働についても
4 言葉にしていくこと
日常を言葉にする&言葉でない世界を言葉にするのは難しい、が/一つ見つけてくること/人と人たち
組織・運動/最後に 例:「精神」な人たち