障害問題を差別/平等という枠組みから解き放つことで、「別扱い」=包摂的異別処遇の根拠と有用性を指し示す画期的論考!
第16回日本社会学会奨励賞(著書の部) 受賞!

社会的包摂と身体

障害者差別禁止法制後の障害定義と異別処遇を巡って

榊原賢二郎【著】

[定価]   本体3,400円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-061-0
[判型]A5判上製 
[頁数]400頁

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障害とは「損傷」を出発点に定義されるものではなく、
断片的身体情報が処遇とともに社会的排除と結びつけられる時に障害現象が生じるのである……。
包摂/排除し処遇する社会を問い直し、障害者のスティグマ化を回避する、
精緻かつ新たな理論枠組みの誕生。
第16回日本社会学会奨励賞(著書の部) 受賞しました!

【目次】


読者への手引き──はしがきに代えて

序 章 障害者差別禁止法制後の課題
 0.1 問題関心と目的
 0.2 問題の所在──障害者差別禁止法制における障害定義と異別処遇
 0.3 障害理論の困難──先行研究(1)
 0.4 社会学・社会理論における身体──先行研究(2)
 0.5 方法と対象
 0.6 構成

第Ⅰ部 障害理論の再検討

第1章 社会的排除としての障害──障害理論と社会学の架橋
 1.1 社会モデルにおける排除論の伝統
 1.2 社会的包摂/排除概念
 1.3 不利益の集中と身体
 1.4 ルーマンにおける機能分化と包摂/排除
 1.5 障害同定と身体
 1.6 社会の環境としての身体

第2章 自己塑成的障害論──社会システム理論による障害定義
 2.1 障害とはいかなる排除か
 2.2 システム理論の諸概念
 2.3 障害現象の「境界」事例
 2.4 身体情報
 2.5 障害の政治解剖学
 2.6 自己塑成的障害定義
 2.7 障害の可変性
 2.8 障害の観察問題
 2.9 同一処遇と異別処遇
 2.10 社会的処遇と医学的処遇
 2.11 小括

第3章 潜在能力と異別処遇──個人への価値付与を巡って
 3.1 はじめに──障害問題と潜在能力アプローチ
 3.2 ロールズによる根源的排除
 3.3 センの潜在能力アプローチ
 3.4 ヌスバウムの潜在能力アプローチ
 3.5 障害文化・ろう文化と多元的評価
 3.6 社会的役割価値付与(SRV)
 3.7 禁欲としての包摂と自己塑成 

第Ⅱ部 障害者制度と包摂的異別処遇

第4章 障害者雇用における有資格性と特別費用──1955年ILOR099後の一般雇用施策について
 4.1 はじめに──障害者の一般雇用施策の二類型と異別処遇
 4.2 職業リハビリテーションと割当雇用──1955年ILOR099 を巡って
 4.3 クリーミング問題の継承
 4.4 障害者雇用の特別費用
 4.5 賃金補填と納付金制度
 4.6 労働への包摂と経済システムへの包摂 
     
第5章 稀少性下の所得保障と障害カテゴリーの構築
     ──1970 年代イギリスにおけるUPIAS・DA論争と障害の社会モデル
 5.1 はじめに──障害問題における能力主義と稀少性
 5.2 稀少性論
 5.3 分配的ディレンマ
 5.4 DAの所得保障構想
 5.5 UPIASの所得保障批判
 5.6 戦略としての社会モデルとワークフェア
 5.7 分配的ディレンマと自己塑成的障害論
 
第Ⅲ部 社会的包摂の集合評価

第6章 包摂の集合評価における「投棄」問題──障害児の統合教育と義務教育標準法
 6.1 障害問題における社会的包摂/排除と集合評価
 6.2 空間的制約を巡る予備的考察
 6.3 統合教育という課題
 6.4 障害児教育における包摂と身体
 6.5 統合教育の根拠──『養護学校はあかんねん!』から
 6.6 分離の経済
 6.7 通常学級における支援
 6.8 教育資源と異別処遇
  
第7章 包摂の集合評価と自由──アメリカ個別障害者教育法における最少制約原理
 7.1 障害現象における参加・配置・自由
 7.2 最少制約環境と障害児教育
 7.3 最少制約原理の由来
 7.4 脱施設化と最少制約環境
 7.5 完全統合と均衡体系
 7.6 制約の意味内容
 7.7 選択と制約
 7.8 ブラウン判決とPARC判決
 7.9 統合を巡る異別処遇の二様態

終 章 自己塑成的障害論の経験的展開に向けて
 8.1 「社会的包摂と身体」という視座
 8.2 付論1:障害統計における障害同定
 8.3 付論2:障害者差別禁止法制から障害禁止法制へ

初出一覧
あとがき
引用文献