その町には虐待で傷ついた子どもの心を包み込む優しさがある

虐待ゼロのまちの地域養護活動

施設で暮らす子どもの「子育ての社会化」と旧沢内村

井上寿美、笹倉千佳弘【編著】

[定価]   本体2,200円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-071-9
[判型]A5判並製
[頁数]150頁

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自分たちの町の子どもだけではなく、
児童養護施設の子どもたちが「すこやかに育つ」ことをもやさしい眼差しで見守る、地域養護の営みがある町。
その長きにわたる営みはなぜ可能となり今も続くのか!

【目次】

はじめに──旧沢内村(現西和賀町)との出会い

第1章 旧沢内村(現西和賀町)の地域養護活動
 1 旧沢内村と深澤晟雄の生命行政
  (1)深澤村長の生命行政
  (2)住民自治の精神
 2 旧沢内村の子どもを尊重する気風
  (1)妊娠期から「村の宝」を育てる
  (2)子どもを1人の人間として尊重する
 3 生命尊重を基底にした地域養護活動
  (1)児童養護施設みちのく・みどり学園
  (2)児童養護施設の児童を年間を通してホームスティさせる事業
  (3)全国・西和賀まるごと児童養護施設事業

第2章 地域養護活動の現実に分け入る
 1 現実のとらえ方
 2 データ収集の方法
  (1)インタビュー
  (2)参与観察
 3 エピソード分析
  (1)エピソード記述
  (2)個別具体から普遍へ
 4 倫理的配慮

第3章 地域養護活動の実際──「何をしてもらったか」ではなく「何をしたか」
 1 「ホームスティ事業」のエピソードと考察
  (1)洗濯物──コダマの場合
  (2)自転車──ノゾミの場合
  (3)ミニかまくら──ミズホの場合
  (4)蝶々や花──サクラの場合
 2 「まるごと事業」のエピソードと考察
  (1)ひじつき椅子──ツバメの場合
  (2)ホタル──ツバサの場合
  (3)稲荷神社──ヒカリの場合
  (4)焼けた肉──ヒカリの場合
  (5)長財布──ハヤテの場合
  (6)集合写真──ハヤテの場合

第4章 子どもにとっての地域養護活動の意味
 1 地域養護活動に参加した子どもの経験
  (1)子どもの認識が拡がる
  (2)多面性を帯びたものであると認識する
  (3)多面性を帯びた認識には負の側面も含まれる
 2 児童養護施設退所後の生活困難を軽減する可能性
  (1)外集団の関与により認識が拡がる
  (2)外集団の関与による認識が一般化する
  (3)児童養護施設退所後の生活困難と自立支援の取り組み
  (4)自立困難軽減の可能性が高まる

第5章 地域養護活動が可能となる地域社会の質──地域住民の行動様式の観点から
 1 地域養護活動が可能になる理由
  (1)地域社会の質を知る必要性
  (2)地域社会の質を知るための資料
 2 地域住民が経験する行動様式
 3 地域住民の行動様式からとらえた地域社会の質
  (1)自ら発信することが大事である
  (2)他人事にしない・されない
  (3)みんなで考える
  (4)無理をしすぎないでおこなう
  (5)憶測で物事を決めない
  (6)役に立つものを活用する
 4 隠れたカリキュラムとして子どもに伝えられる行動様式

おわりに

コラム
 沢内村から学ぶ  藤澤 昇
 子どもの「いのち」が輝く西和賀に  高橋典成
 保健婦地域包括医療の原点──いちごの家: 障がい児者の自立支援  深澤久子
 深澤語録から見える子ども観  米澤一男
 ホームスティはたのしい  髙橋千賀子
 ホームスティ受け入れと振り返りの会  髙橋千賀子
 どの子もかわいい!  志賀久満喜子
 自称・百姓の私とホームスティ  有馬 絹
 心の居場所  高橋和子
 凍てついた心と薪ストーブの温もり  深澤千里
 「豆盗み」に心躍らせた頃  高橋光世
 不便だからこそ頼れる関係性を  太田宣承
 1本の弁論大会録音テープに教えられて  村山フミエ
 心の通う人たちの集まる場所  下田博美
 「種市転住」子どもと共に歩む  大村文雄

この本のもとになった論文・学会報告
西和賀町(旧沢内村)関連文献