その町には虐待で傷ついた子どもの心を包み込む優しさがある
虐待ゼロのまちの地域養護活動
施設で暮らす子どもの「子育ての社会化」と旧沢内村
自分たちの町の子どもだけではなく、
児童養護施設の子どもたちが「すこやかに育つ」ことをもやさしい眼差しで見守る、地域養護の営みがある町。
その長きにわたる営みはなぜ可能となり今も続くのか!
【目次】
はじめに──旧沢内村(現西和賀町)との出会い
第1章 旧沢内村(現西和賀町)の地域養護活動
1 旧沢内村と深澤晟雄の生命行政
(1)深澤村長の生命行政
(2)住民自治の精神
2 旧沢内村の子どもを尊重する気風
(1)妊娠期から「村の宝」を育てる
(2)子どもを1人の人間として尊重する
3 生命尊重を基底にした地域養護活動
(1)児童養護施設みちのく・みどり学園
(2)児童養護施設の児童を年間を通してホームスティさせる事業
(3)全国・西和賀まるごと児童養護施設事業
第2章 地域養護活動の現実に分け入る
1 現実のとらえ方
2 データ収集の方法
(1)インタビュー
(2)参与観察
3 エピソード分析
(1)エピソード記述
(2)個別具体から普遍へ
4 倫理的配慮
第3章 地域養護活動の実際──「何をしてもらったか」ではなく「何をしたか」
1 「ホームスティ事業」のエピソードと考察
(1)洗濯物──コダマの場合
(2)自転車──ノゾミの場合
(3)ミニかまくら──ミズホの場合
(4)蝶々や花──サクラの場合
2 「まるごと事業」のエピソードと考察
(1)ひじつき椅子──ツバメの場合
(2)ホタル──ツバサの場合
(3)稲荷神社──ヒカリの場合
(4)焼けた肉──ヒカリの場合
(5)長財布──ハヤテの場合
(6)集合写真──ハヤテの場合
第4章 子どもにとっての地域養護活動の意味
1 地域養護活動に参加した子どもの経験
(1)子どもの認識が拡がる
(2)多面性を帯びたものであると認識する
(3)多面性を帯びた認識には負の側面も含まれる
2 児童養護施設退所後の生活困難を軽減する可能性
(1)外集団の関与により認識が拡がる
(2)外集団の関与による認識が一般化する
(3)児童養護施設退所後の生活困難と自立支援の取り組み
(4)自立困難軽減の可能性が高まる
第5章 地域養護活動が可能となる地域社会の質──地域住民の行動様式の観点から
1 地域養護活動が可能になる理由
(1)地域社会の質を知る必要性
(2)地域社会の質を知るための資料
2 地域住民が経験する行動様式
3 地域住民の行動様式からとらえた地域社会の質
(1)自ら発信することが大事である
(2)他人事にしない・されない
(3)みんなで考える
(4)無理をしすぎないでおこなう
(5)憶測で物事を決めない
(6)役に立つものを活用する
4 隠れたカリキュラムとして子どもに伝えられる行動様式
おわりに
コラム
沢内村から学ぶ 藤澤 昇
子どもの「いのち」が輝く西和賀に 高橋典成
保健婦地域包括医療の原点──いちごの家: 障がい児者の自立支援 深澤久子
深澤語録から見える子ども観 米澤一男
ホームスティはたのしい 髙橋千賀子
ホームスティ受け入れと振り返りの会 髙橋千賀子
どの子もかわいい! 志賀久満喜子
自称・百姓の私とホームスティ 有馬 絹
心の居場所 高橋和子
凍てついた心と薪ストーブの温もり 深澤千里
「豆盗み」に心躍らせた頃 高橋光世
不便だからこそ頼れる関係性を 太田宣承
1本の弁論大会録音テープに教えられて 村山フミエ
心の通う人たちの集まる場所 下田博美
「種市転住」子どもと共に歩む 大村文雄
この本のもとになった論文・学会報告
西和賀町(旧沢内村)関連文献