本書は一個の希望を紡ぐ。あるいは、ひらく。連帯への希望を。あるいは解法ではなく解放を
連帯の挨拶
ローティと希望の思想
本書は一個の希望を紡ぐ。あるいは、ひらく。連帯への希望を。あるいは解法ではなく解放を。後者をもたらさないまでも希求しない、そんなものは思想の名に値しない。すくなくとも、この私はそう信じるから。
本書の目的はふたつである。第一に、ローティ政治・社会思想の内在的で、すくなからず実質的な解釈を提示すること。第二に、その思想の批判的継承をつうじて、現代の情況に一個の希望/思想を投げいれること。より精確には、その準備をすること。
【目次】
序 希望の思想
第一部 ローティとともに──ローティ「政治」思想の究明
第一章 「哲学」批判から「政治」へ──「政治」思想的転回へといたる道
章 序
1 「正義」と「実在」の統合という夢──『哲学と自然の鏡』へいたるまで
2 「哲学」の脱構築と「政治」の解放
第二章 ローティ「政治」思想への導入──「人権」論を読み解く
章 序
1 「人権」問題の所在
2 対案としての共感
3 ローティ「人権」論の含意──共感の条件としての安全
4 ローティ「人権」論の位置/意義
第三章 アイロニーと連帯による「正義」──ローティのリベラリズムを読み抜く
章 序
1 〈公私の区分〉再説──正義と善の区分
2 偶然性としての世界
3 ローティ「正義」論の構成 1──偶然性の承認と「残酷さの回避」の関係
4 ローティ「正義」論の構成 2──アイロニーの〈普遍化〉と連帯
5 小括と第二部への助走
第二部 ローティをこえて──ローティ「正義」論の批判的継承
第四章 「残酷さ」について
章 序
1 「残酷さの回避」という命題をめぐる問い
2 「残酷さ」とはなにか──シュクラーとローティ
3 ローティへの論難
4 ローティへの論難についての評価
5 困難を深刻にうけとめつつ、そのさきを切りひらくために
第五章 ローティの挑発と社会的連帯再考
章 序
1 道徳的普遍主義にたいするローティの懐疑とその精査
2 社会的連帯(論)の現在──「非人称の連帯」の危機
3 ローティの挑発と「人称的な連帯」の共振
第六章 「『身近な他者』への共感」の隘路──ケア倫理をめぐって
章 序
1 ケア倫理の理念の分節化──依怙贔屓の倫理
2 ケア倫理の方途
3 ケアユニット/ネットワークの遍在化の隘路
4 ケア対象の拡張化の隘路
5 〈承認〉の隘路
6 小括と展望
終 章 共感の再配置──「距離」をこえて
章 序
1 道徳的行為の心理機制
2 ヒュームへ還る
結語にかえて──欲望という名の倫理
あとがき
文 献