日本の条約批准に向けた取り組みを含め、条約実施の理論と実践に貢献すべく編まれた、
待望の増補改訂版刊行!

[増補改訂]障害者の権利条約と日本

概要と展望

長瀬修、東俊裕、川島聡【編】

[定価]   本体2,800円(税別) 

[ISBN]978-4-903690-98-8 
[判型]A5判並製
[頁数]404頁

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21世紀初の主要人権条約として、障害者の権利条約は2006年12月13日に採択され、2008年5月3日に発効した。2011年末の時点での条約の署名数は153、選択的議定書の署名数は90、条約の批准数は107、選択的議定書の批准数は63である。この数字に示されている条約への高い関心に支えられ、条約は国際的に実施されてきた。

日本政府は、2007年9月28日に条約に署名をしたものの、まだ批准はしていない。
すでに行われた1.障害者基本法改正に加えて、今後の2.障害者総合福祉法制定、3.障害者差別禁止法制定が完了した段階で、日本も障害者の権利条約に加わるという状況下、日本の批准に向けた取り組みを含め、条約実施の理論と実践に貢献すべく編まれた、待望の増補改訂版刊行!

国内外の条約に関する展開を反映し加速するために、既存の章に修正を加えたほか、新たに、制度改革の動きに関する藤井論文、条約の実施措置に関する山崎論文、EUの動向に関する引馬論文を収録。さらに条約の翻訳として、旧版の政府仮訳(2007年版)と川島・長瀬仮訳に加え、2009年3月の政府仮訳(2009年版)も所収。

【目次】


増補改訂版はしがき

第1章 障害者の権利条約の成立……川島聡・東俊裕
 はじめに
 I   条約の必要性──理論と実際の乖離
 II  条約の理念──障害者観の転換
 III 条約の工夫──新しい概念
 IV  条約の構造──二重の意味での混成条約
 V  条約の適用対象──定義から概念へ
 VI  条約の原動力──障害者の参加
 おわりに

第2章 障害に基づく差別の禁止……東俊裕
 はじめに──長い道のり
 I  障害に基づく差別禁止規定の出現
 II 障害者の権利条約における差別禁止
 おわりに──差別禁止法の制定

第3章 強制医療・強制収容……山本眞理
 はじめに
 I  障害者の権利条約における強制の廃絶をめぐる論議
 II  関連条文
 III 精神障害者の置かれた法的実態と障害者の権利条約との関連
 おわりに──今後の展望

第4章 司法へのアクセス……東俊裕
 はじめに
 I  司法手続上の権利と障壁
 II  捜査段階における刑事手続上の問題点
 III 公判段階における刑事手続上の問題点
 IV  宇都宮事件
 V  受刑者の状態
 おわりに──権利条約批准に際してのわが国の課題

第5章 手話・言語・コミュニケーション……高田英一
 はじめに──「障害者の権利条約」そもそもの発端
 I  言語
 II  教育
 III コミュニケーションと手話通訳
 IV  ろう者と難聴・中途失聴者
 V   文化的な生活への参加
 おわりに──言語平等の課題

第6章 教育……長瀬修
 はじめに──教育に関する論点
 I  教育に関する条文の背景
 II  教育に関する議論の経緯
 III 最終条文
 IV  関連する日本の法令、施策
 おわりに──日本の課題

第7章 労働……松井亮輔
 はじめに
 I  障害のある人の労働の権利保障と差別禁止
 II  障害のある人の労働の権利保障を実現し、促進するための措置
 III 奴隷状態および強制的労働などからの障害のある人の保護
 IV  わが国の関連法制度、課題および展望について
 おわりに

第8章 自立生活……崔栄繁
 はじめに──パラダイム・シフトの基礎
 I  自立生活条項
 II  条約上の自立生活に関連する概念の検討
 III 日本の問題点
 おわりに──自立生活の権利の実施に向けて

第9章 推進会議……藤井克徳
 I  推進会議の設置の経緯
 II  推進会議設置の背景
 III 構成員ならびに運営上の特徴
 IV  成果と課題

第10章 実施措置……山崎公士
 はじめに
 I  条約起草過程における条約の監視(モニタリング)をめぐる議論
 II  国内的実施措置
 III 国際的実施措置
 結びにかえて

第11章 EU……引馬知子
 はじめに
 I  障害者の権利条約の正式確認とEUの権限
 II  障害者の権利条約策定へのEU参加と求める原則
 III EUと加盟国が協働する7分野9行動
 IV  EUによる障害分野の人権保障の展開
 おわりに

資料 障害のある人の権利に関する条約とその選択議定書