「ことばで表現できないから」といってしまう前に

ことばのバリアフリー

情報保障とコミュニケーションの障害学

あべ やすし【著】

[定価]   本体2,000円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-039-9
[判型]A5判並製
[頁数]208頁

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すべての人に知る権利を保障し、だれもが意見や情報をやりとりすることができるようにすること。
だれも社会から排除されないようにするということ。
そのように目標を設定し、いまの現状と課題を整理すること。
将来の展望をみすえること――知的障害者入所施設での生活支援、身体障害者や知的障害者の訪問介助といった経験の中で
考え続けてきた「ことば」と「障害」をめぐっての問題。

【目次】


はしがき

[コラム1] 他者と出会う
 1. はじめに──多数派には名前がない
 2. 自分を「ふつう」に分類しない
 3. 発達障害と定型発達(神経学的多数派)の異文化接触
 4. 非連続(カテゴリー)と連続(スペクトラム)のあいだ──自閉症を例に
 5. おわりに

第1章 「障害ではない」ということ──社会のなかの「ことば」と「からだ」
 1. はじめに
 2. トランスジェンダーからみた「障害」
 3. 「ろう文化宣言」と少数者としての「障害者」
 4. 図書館サービスからみた「障害」
 5. 相対主義からみた「損傷」
 6. ひだりききからみた「障害」
 7. 社会構成主義からみた「障害」
 8. おわりに──「配慮の平等」にむけて
 ただしがき

第2章 言語という障害──知的障害者を排除するもの
 1. はじめに
 2. 言語権という理念
  2.1. ひとつの言語とはなにか
  2.2. 言語権のひろがり
 3. 知的障害と「言語」
 4. 言語学の倫理──ジーニーを実験台にさせたもの
 5. 共生の条件とされる「ことば」
 6. 知的障害者をとりまく社会環境──言語という障害と能力主義
  6.1. 言語と世界観
  6.2. 知的障害の判定テストと言語
  6.3. 能力の個人モデルから「能力の共同性」へ
 7. 言語主義からの自由、そして言語権のユニバーサルデザインにむけて
 8. おわりに
 ただしがき

[コラム2] だれでも参加できるじゃんけんとは
 1. はじめに
 2. じゃんけんのかたちをかえる
 3. 「伝統」と人権
 4. じゃんけんの支援技術
 5. もっと多様なじゃんけんに出会うために
 6. おわりに

[コラム3] 「コミュニケーション障害」ってなんだろう
 1. はじめに
 2. 自閉者と自分勝手なコミュニケーション
 3. こだわりと自己決定
 4. 主体性とはなにか
 5. コミュニケーションに障害はありえない
 6. おわりに
 ただしがき

第3章 「識字」という社会制度──識字問題の障害学(2)
 1. はじめに
 2. 障害学からみた識字問題
 3. 識字問題の再定義──図書館サービスの視点から
  3.1. 「非識字」のとらえかた
  3.2. 視覚障害者読書権保障協議会が図書館サービスの視点をかえた
 4. 障害者と非識字者のちがい──みえない存在としての非識字者
 5. 高齢者をめぐる識字問題
 6. 読字障害/書字障害(ディスレクシア)のある人の学習環境
 7. おわりに
 ただしがき

第4章 情報保障の論点整理──「いのちをまもる」という視点から
 1. はじめに──目的と問題意識
 2. 五感(感覚モダリティ)と言語形態による整理
 3. 情報保障に必要なこと
  3.1. 感覚モダリティの平等(五感に配慮する)
  3.2. 感覚モダリティの変換
  3.3. 情報を構造化する
  3.4. ユニバーサルデザインとユニバーサルサービス
  3.5. 情報発信、意思表示を保障する
   3.5.1. 言語障害のある人へのコミュニケーション支援
   3.5.2. 知的障害者の自己決定
   3.5.3. 認知症の人――オムツはずしを例に
  3.6. 情報保障の公的保障
   3.6.1. コミュニティ通訳の公的保障
   3.6.2. ガイドヘルプ/見守り介護の保障
 4. 情報保障の対象と対策
  4.1. 日本語表記がうみだす情報障害
  4.2. 「図書館利用に障害のある人々へのサービス」の対象範囲
   4.2.1. 「図書館利用に障害のある人々へのサービス」とは
   4.2.2. 情報保障の中核としての図書館
  4.3. 社会的排除の視点から
   4.3.1. 刑務所の問題
   4.3.2. 申請主義の問題
  4.4. 移民について──日本の入国管理政策の問題
 5. おわりに──「あたりまえ」をひっくりかえす
 ただしがき

第5章 言語学習のユニバーサルデザイン
 1. はじめに
 2. 言語をやりとりするチャンネル──聴覚、視覚、触覚
 3. 情報のユニバーサルデザイン
  3.1. 映像メディアの場合
  3.2. 印刷メディアの場合
 4. 言語教材のユニバーサルデザイン
 5. 学習環境のユニバーサルデザイン
 ただしがき

第6章 言語権/情報保障/コミュニケーション権の論点と課題
 1. はじめに
 2. 言語ってなんだろう
 3. 障害ってなんだろう
 4. 言語権の論点と課題
 5. 情報保障の論点と課題
 6. コミュニケーション権の論点と課題
 7. 生活環境の問題
  7.1. 基地騒音という問題
  7.2. ソーシャルワークの課題
  7.3. 「よりそいホットライン」の重要性
 8.  おわりに
 ただしがき

あとがき
初出一覧
参考文献
さくいん