なぜ、人々の福利や社会正義を追求するソーシャルワーク実践が、
ろう・難聴者の抑圧に加担しているのか。

ろう者学とソーシャルワーク教育

高山亨太【著】

[定価]   本体3,000円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-140-2 C0036
[判型]A5判並製
[頁数]272頁

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「ろう者の当たり前」こそが最も重要だという着眼点にたち、ろう者や難聴者を無力化してきたソーシャルワーク実践に省察的批判を加え、ろう者学の知見やろう者の視点を取り入れた「ろう文化ソーシャルワーク」を定義づけ実践につなげようとする意欲作。

【目次】


まえがき

序論 研究の背景と目的
 1 研究の背景
   1-1 ろう者を対象にしたソーシャルワーク実践の多様化
   1-2 ろう者を取り巻く背景の多様化
 2 理論的視座
   2-1 ペイン理論
   2-2 文化言語モデル
 3 研究の目的・方法・意義
 4 論文構成
 5 用語の定義

第1章 ろう者を取り巻く言説に関する現状と課題
 1 ろう者を取り巻く言説の抽出の意義
 2 クライエントとしてのろう者の理解
   2-1 ろう者の多様性
   2-2 手話とコミュニケーション手段の多様性
   2-3 ろうアイデンティティの多様性
 3 ろう文化の特性
 4 ろう者に対する社会の視点の歴史的変遷
 5 ろう者が抱えるニーズの現状
 6 まとめと考察

第2章 ろう者を対象にしたソーシャルワーク実践の歴史的変遷
 1 当事者の視点を取り入れたソーシャルワークとは
 2 ろうあ者相談員の歴史と背景
   2-1 戦後〜1980年代:手話ができる相談員を求めて
   2-2 1980年代後半〜1990年代:業務内容と身分の確立
   2-3 2000年代〜現在:専門性の向上と資格化の追求
 3 ろう者に対するソーシャルワーク実践の変遷
   3-1 医学モデルに基づいたソーシャルワーク実践に対する批判
   3-2 精神保健福祉分野におけるろう者を対象にしたソーシャルワーク実践に対する批判
 4  多文化ソーシャルワークの変遷
 5 黒人ソーシャルワークの変遷
 6 文化言語モデル:ろう者を文化言語的マイノリティとして捉える
 7 まとめと考察

第3章 ろう者学のカリキュラム及び理論動向
 1 ろう者学の概念
   1-1 はじめに
   1-2 ろうコミュニティの主張とろう者学成立の歴史的背景
   1-3 ろう者学プログラム設置の歴史的動向
 2 ろう者学カリキュラム
   2-1 ギャローデット大学ろう者学部学士課程・修士課程
   2-2 カリフォルニア州立大学ノースリッジ校ろう者学部学士課程
   2-3 ボストン大学教育学部ろう者プログラム
   2-4 ブリストル大学
 3 ろう者学における理論的枠組みの発展
   3-1 ろう文化論
   3-2 オーディズム
   3-3 感覚指向論
   3-4 デフゲイン
   3-5 ろう理論
   3-6 デフフッド
 4 まとめと考察
   4-1 基礎カリキュラムと応用カリキュラム
   4-2 ろう者学の主な理論群
   4-3 ろう者の社会的言説に対するろう者学からのアプローチ

第4章 ギャローデット大学におけるソーシャルワーク教育の歴史的動向
 1 大学カリキュラム分析の視点
 2 ギャローデット大学の歴史と政策・方針
   2-1 ギャローデット大学の設立とろう教育政策
   2-2 ギャローデット大学の理念・教育目的・高等教育の構造
   2-3 専門職養成課程
 3 ギャローデット大学ソーシャルワーク学部
   3-1 社会的要請とソーシャルワーク教育プログラムの設置(1960年〜70年代)
   3-2 ろうコミュニティの社会的認知とろう当事者の視点(1980年代)
   3-3 文化言語マイノリティとソーシャルワーク実践(1990年代)
   3-4 反抑圧主義の観点の導入と教育カリキュラムの再構築(2000年代)
   3-5 ろう者学の視点の導入と新たな教育カリキュラム(2010年代〜)
 4 まとめと考察
   4-1 社会背景とソーシャルワーク教育カリキュラムの変容
   4-2 第一世代、第二世代、第三世代ソーシャルワーカー
   4-3 ロジックモデル
   4-4 カリキュラム分析の観点から
 5 日本のソーシャルワーク教育におけるろう文化ソーシャルワークの位置付け

第5章 日本におけるろう文化ソーシャルワーク教育カリキュラム試論
 1 はじめに
   1-1 ろう文化ソーシャルワーク養成プログラム構想への道のり
   1-2 ソーシャルワークにおけるろう者に関する言説の再構築に向けて
 2 ろう者のアカデミック・ニーズ
 3 聴覚障害ソーシャルワーク総論の試案と実施
 4 「聴覚障害ソーシャルワーク総論」講義ノート
   4-1 開講形態
   4-2 講義概要とねらい
   4-3 講義計画と学習目標
 5 ろう者学総論の試案
 6 「ろう者学総論」講義ノート
   6-1 開講形態
   6-2 講義概要とねらい
   6-3 講義計画と学習目標
 7 まとめと考察

終章 総合考察と将来展望
 1 総合考察
   1-1 ろう文化ソーシャルワーク
   1-2 ソーシャルワーク教育におけるろう者の言説と文化言語モデル
 2 本書の限界と課題
   2-1 本書の限界
   2-2 残された課題
 3 結論

参考文献
和文参考文献
英文参考文献

資料
あとがき