彼女たちは「髪は女のいのち」という根強いジェンダー規範に満ちたこの社会をどう生きてきたのか

髪をもたない女性たちの生活世界

その「生きづらさ」と「対処戦略」

吉村さやか

[定価]   本体2,300円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-156-3
[判型]46判並製
[頁数]280頁

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「生きづらさ」を軽減/解消させながら、この社会をしなやかに生き抜いてきた、髪をもたない女性たち。
その生活世界と多様な対処戦略に焦点を当て、「女性に髪があるのは自然であたりまえ」「女性の髪は美しいほうが望ましい」という常識的知を問い直す。

【目次】


序章 問題の所在――髪をもたない女性たちの生きられた経験を聞き取る
 1 研究の目的と背景
 2 先行研究の検討
  (1)構成の類似性
  (2)引用/解釈される語り
  (3)先行研究に残された課題と本書の目的
 3 研究の方法と分析の対象

第1章 髪をもたない女性たちの「生きづらさ」
 1 分析の対象
 2 事例の検討
  (1)「治らない」――治療にともなう問題経験
  (2)「隠しながら生活するのは大変」――かつらの着用にともなう問題経験
  (3)小括――問題経験の生成メカニズムと軽減/解消をめぐる困難

第2章 「ウィッグ生活」という対処戦略
 1 分析の対象
 2 事例の検討
  (1)「つけたほうがかわいい」――Aさんのライフストーリー
  (2)「下着をつけるのと同じ感覚」――Bさんのライフストーリー
  (3)小括――「女らしさ」の主体的実践という意味づけ

第3章 「このゆびとまれ」という対処戦略
 1 分析の対象
 2 事例の検討――Cさんのライフストーリー
  (1)発症当時
  (2)治療とかつらの着用
  (3)当事者の会の立ち上げ
 3 Cさんが訴えたこと――個人的問題から社会問題へ
  (1)当事者同士の交流の場作り
  (2)当事者の会の組織体制作り
  (3)病気の啓発活動
  (4)差別と偏見に対する啓発活動
 4 小括――「社会問題」という意味づけ

第4章 「さらす」という対処戦略
 1 分析の対象
 2 事例の検討――信子さんのライフストーリー
  (1)発症当時
  (2)当事者の会との出会いと変化
  (3)転機としての温泉
  (4)メディアへの出演と葛藤
  (5)MFMSとの出会いと会長への就任
 3 信子さんの「カミングアウト法」
 (1)「話す」――さらっと言う/詳しく説明する
 (2)「見せる」――外す/さらす
 4 「さらす」という対処戦略のもつ機能
  (1)「伝わらない」への対処
  (2)「面倒さ」への対処
  (3)「さらす」ことの相対化
 5 小括――「病気」という意味づけ

第5章 「スキンヘッド生活」という対処戦略
 1 分析の対象
 2 事例の検討――由利子さんのライフストーリー
  (1)発症当時
  (2)かつらの着用と治療の開始
  (3)治療をやめた契機
  (4)かつらの着用をやめた契機
 3 「隠す生活」から「隠さない生活」へ――由利子さんの四つの生活実践
 4 「スキンヘッド生活」という対処戦略のもつ機能
 5 小括――「障害」という意味づけ

終章 髪をもたない女性たちの多様な意味世界に接近するために
 1 本書で得られた知見
 2 本書の理論的貢献と実践的貢献
 3 おわりに――今後の課題と展望

補論1 「髪の喪失」を問う
補論2 隠すでも、隠さないでもなく――パートナーとの日常生活を通して

初出一覧
あとがき
参考文献