誰ひとりとして虐待の被害者・加害者にしてはならない

自分で自分を不幸にしない

「性的虐待」を受けた女性の語りから

井上寿美・笹倉千佳弘【著】

[定価]   本体2,200円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-153-2
[判型]A5判並製
[頁数]200頁

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人が人として生きられない現実をもたらすこともある性的虐待。
その現実に目を背けないユウと周りの人たち。
マザーテレサは「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」と言う。
周りの人たちの温かな関心に支えられ、ユウは自らの物語を語り直し続ける。
──田尻由貴子
(女性のためのシェアハウス「由来ハウス」代表、慈恵病院「こうのとりのゆりかご」設置時の看護部長)

【目次】


PARTⅠ 自分を語る

第1章 子ども時代を思い出す
 幼い頃のわたしの家族/おしゃべりなわたし/思い出の中のきれいな母/母に叱られた記憶
 「継父」を招き入れたわたし/「継父」から受けた「性的虐待」/誰も助けてくれない日々
 学校は救いの場/我慢の限界/周りにわかってもらえないつらさ/人づてに聞いたその後の「継父」

第2章 施設で暮らす
 母への執拗で過激な暴力/母に与えた恐怖/「なんでわたしを置いてくんだ!」
 生きている価値のないわたし/わたしを変えた出来事/児童養護施設の暮らし/楽しかった高校時代
 通帳をつくってくれた姉/カズキとの出会い/「この人しかいない」/カズキの子どもを妊娠
 はしかに罹って中絶/罰せられない苦しさ/「あんた、い女だね」/「ユウは少しも汚くない」 

第3章 自分の家庭をもつ
 再び妊娠そして結婚/結婚までの道のり/産科の先生との出会い/初めての出産/二四時間三六五日
 誰にも頼らないで頑張る決意/後輩のお母さんによる手助け/その人との訣別/ワンオペ育児の限界
 お義父さんお義母さんとの関係/「おばあちゃん」としての母/次女ミズキの誕生
 優先順位はまず子ども/二人三脚の子育て/子どもに届けたいメッセージ/わが家は五人家族

第4章 娘たちと一緒に育つ
 ゆらぐ子育ての責任/子どもにとっての「よい親」/なんて幸せな子たち/娘たちに教えてもらうこと
 かつて見た光景/怠ってはならない子どもへの説明/やっとの思いで一時保護/ゆれる気もち
 わたしだからこその子どもの目線/いろいろあってよい子育ての方法/自分で決められること
 覚えていないのがあたりまえ/苦しみながら生きている人間のひとり
 
PARTⅡ 母を語る

 インタビュー1 わたしの中のふたりの自分
 インタビュー2 大事にするための距離

PARTⅢ 語りから見えてきたこと

  第1章 ユウさんと母親の関係――親役割意識の変化をとおして
 1 ユウさんの母親への思い
 2 母になったユウさんの親役割意識
 3 親役割意識の移り変わりとともに変わる母親への思い

第2章 「その後に生きる者」の可能性――ユウさんの語りの特徴をとおして
 1 「語り」の世界
 2 カズキさんとの間で起こった出来事――その後の生き方が影響する継続的な語り直し
 3 母親との間で起こった出来事――行き詰まりに陥らない継続的な語り直し
 4 胎児との間で起こった出来事――主体的な書き換えによる継続的な語り直し

おわりに
謝辞