日本のソーシャルワークは危機的な状況にある!

いま、ソーシャルワークに問う

現代社会と実践/理論・養成教育/当事者運動

旭洋一郎・髙木博史【編著】

[定価]   本体2,300円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-157-0
[判型]A5判並製
[頁数]248頁

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支援を受ける人が抱える生活困難が社会構造とどのようにかかわって生じているのかを読み解き、与えられた制度の枠内で社会資源と結びつけるだけでなく、社会変革を現実のものとするために働きかけていくこと…
日本のソーシャルワークがその本来の姿に回帰するきっかけとなることを願って、「ソーシャルワークのいま」を問い直し、今後のあり方を模索する。

【目次】


まえがき 髙木博史

第1部 現代社会とソーシャルワーク実践

第1章 「ケアマネジメント」化するソーシャルワーク
     ――介護保険制度の導入は何をもたらしたのか  髙木博史
 1 現代日本におけるソーシャルワークに対する違和感
  (1)現代日本社会の諸相とソーシャルワーク
  (2)見逃してしまった生活保護法の「改悪」
  (3)「安全保障関連法」へどう向き合ったのか
 2 「ケアマネジメント化」する「ソーシャルワーク」
  (1)ソーシャルワーカーの国家資格「社会福祉士」の創設経緯
  (2)介護保険導入とソーシャルワークの「ケアマネジメント」化
 3 不正義とたたかうソーシャルワーク

第2章 広がる格差、「子どもの貧困」対策とソーシャルワーク  西﨑 緑
 1 「子どもの貧困」言説が覆い隠す日本社会の真の姿
  (1)「子どもの貧困」という言説による問題提起の背景
  (2)学力と虐待への対応としての位置づけ
 2 「子どもの貧困」対策としての総合的施策
  (1)国の施策
  (2)学校のプラットフォーム化と家庭教育支援
  (3)要保護児童対策地域協議会
  (4)「親の貧困」への対応
 3 「子供の未来応援国民運動」という上からの運動

第3章 若年層の雇用条件向上に向けて  西﨑 緑
 1 深刻化する介護分野での人材不足
 2 悪化する若年層の労働条件と若者の就活意識
  (1)就職はできても上がらない賃金
  (2)若者の就活意識
 3 若者は自己責任論を超えられるか?
  (1)自己責任論がなぜ蔓延するのか
  (2)ディーセント・ワークへのシフトが必要
  (3)若者の労働組合と福祉の接近

第4章 コミュニティ・ソーシャルワーカーとソーシャル・アクション  西﨑 緑
 1 コミュニティ・ソーシャルワークの必要性
 2 「個」の分離と地域社会
  (1)発達したテクノロジーや個人を対象とした制度による「個」の分離
  (2)SNSの浸透とリアル世界への無関心
 3 社会的包摂の実践を担うコミュニティ・ソーシャルワーク
  (1)「社会的包摂」と見守りネットワークを考える
  (2)若者はなぜ助けを求めなかったのか
 4 コミュニティ・ソーシャルワーカーの役割とソーシャル・アクション
  (1)コミュニティのレジリエンスを高める
  (2)ソーシャル・アクションの実践

第5章 「沖縄」で問われたソーシャルワーク  髙木博史
 1 自分の中で変化した沖縄のイメージ
 2 独立型社会福祉士事務所の設立と実践
  (1)独立型社会福祉士事務所の設立へ
  (2)貧困問題をみつめる
  (3)深刻な住宅問題
 3 沖縄基地問題――平和と向き合う
 4 貧困・差別・平和――沖縄で問われたソーシャルワーク

第2部 ソーシャルワーク理論と養成教育

第6章 「政治性」を忘却した理論はどこへ向かうのか
     ――ソーシャルワーク、社会福祉の理論的視座  旭洋一郎
 1 社会福祉・ソーシャルワークの立ち位置について
 2 市民的気づきと社会福祉の理論的視座
 3 「ベルリンの壁」崩壊と社会福祉基礎構造改革
  (1)「ベルリンの壁」崩壊とは
  (2)社会福祉基礎構造改革は何をどう変えたのか
 4 社会科学的視座の再生と現代の社会福祉の実践
  (1)社会福祉本質論争と現代の社会福祉
  (2)社会科学の方法と期待

第7章 ソーシャルワーカー養成と支援現場と  打保由佳
 1 現代社会で求められる社会福祉士像
  (1)社会福祉士が担う役割
  (2)社会福祉士が身につけるべき知識や技術
 2 ソーシャルワークの基礎理論――ジェネラリスト・ソーシャルワーク
 3 養成校での学びを支援現場で生かすことの難しさ
 4 養成校で学んだ学生Aさんのライフヒストリー
  (1)Aさんのライフヒストリー【入学から卒業まで】
  (2)Aさんのライフヒストリー【卒業後】
 5 養成校での学びと支援現場での実践との間になぜ距離は生じるのか
 6 実践力のある社会福祉士に

第3部 当事者運動とソーシャルワーク

第8章 ソーシャルワークにおける援助関係・再考――青い芝の会の友敵理論から  深田耕一郎
 1 ソーシャルワークに何ができるか――友敵理論から考える援助関係
 2 援助関係の矛盾
  (1)援助のパラドクス――関係の非対称性
  (2)援助者のエゴイズムと無力さ――非対称性を選び取ること
 3 障害者運動と健全者運動
  (1)友人運動の意味――健常者としての気づき
  (2)健全者運動の挫折から――なぜ友敵関係なのか
 4 友敵理論の自己意識
  (1)真の自覚――自己を変えることは社会を変えること
  (2)罪深さと無力さを抱えた者同士の連帯としての社会福祉――差別性・利己性・加害性
 5 自分のなかの敵と闘い友となれ
  (1)友敵理論による関係の反省と再構築――〈弱い者〉との関係性
  (2)友敵理論の条件――無力さの相互性と肯定性
 6 ソーシャルワークの実践倫理としての〈援助関係・再考〉

第9章 ソーシャルワークは優生思想にどう向き合うのか――優生保護法と当事者運動  小森淳子
 1 問題意識
  (1)障害当事者として
  (2)「優生思想」の特質
 2 優生保護法による強制不妊手術の被害について
  (1)被害者となった人たち
  (2)優生保護法の罪深さ
  (3)優生手術の申請への民生委員の関与
  (4)民生委員が依拠してきた「価値」とは
 3 「優生手術に対する謝罪を求める会」の活動から見えてくること
  (1)国家賠償請求訴訟に至るまで
  (2)求める会が大切にしてきた「価値」とは
 4 ソーシャルワークは優生思想にどう向き合うのか

あとがき  西﨑 緑