なぜ「手話」の法制化なのか、
そしてなぜ国政レベルではなく自治体で広がりを見せたのか
手話の法制化と聾者の言語権
そのポリティクスと課題解決への視座
制度はそこに「ある」のではなく関係者間で構築されていく生き物のようなものであるという立場から、政策策定過程の意思決定プロセスを詳細に検討し、手話通訳養成の制度的な陥穽をあぶりだして、国政レベルでの法制化についての課題と「今やるべきこと」を提示する必携の書。
【目次】
はじめに 二神麗子
第1節 手話言語条例の全国展開
第2節 「言語としての手話」をめぐる検討課題
第3節 障害当事者の政策参加の現状と課題
第1部 手話の法制化をとりまくポリティクス
第1章 手話言語をめぐる法制化と人工内耳をめぐって 金澤貴之
第1節 手話の「発見」
第2節 「日本手話」という命名作業
第3節 「もう1つの手話」という語り
第4節 「中間型手話」の存在
第5節 日本手話が「言語である」ということは……?
第6節 「90%ルール」がもたらすもの
第7節 新生児聴覚スクリーニング検査と人工内耳
第8節 「自己選択権」をめぐって
第9節 結語
第2章 手話の法制化は聾者の言語権を保障するのか 金澤貴之
第1節 はじめに
第2節 「言語」としての手話——「日本手話」をめぐるポリティクス
第3節 手話言語が混成状態を生みやすい必然性
第4節 「いつでもどこでも手話を!」という想い
第5節 聾教育における手話環境の実現をめぐって
第6節 手話通訳者養成の課題
第7節 聞こえる子どもたちに手話を教えることをめぐって
第8節 次世代の聾者のための法制化を
第3章 手話言語条例制定の背景とその影響 二神麗子
第1節 はじめに
第2節 独自の体系を持つ言語としての日本手話
第3節 「日本手話」をめぐる言説
第4節 手話言語条例に記載される聾教育への想い
第5節 手話言語条例と手話言語法(仮称)制定をめぐる聾運動の関わり
第6節 手話言語条例の特性
第7節 手話言語条例に期待される聾教育に関する施策
第8節 条例制定後における「当事者参加」のあり方の再考
第4章 第1部のまとめ 金澤貴之
第2部 手話言語条例の制定プロセスにみるポリティクス
第1章 手話の法制化に関する基礎的検討
第1節 鳥取県手話言語条例がもたらしたこと 金澤貴之
第2節 議員提案による手話言語条例制定の特徴 二神麗子
第3節 手話言語条例の政策波及の実態 二神麗子
第4節 教育における手話の扱われ方——鳥取県と群馬県の手話言語条例の比較より 二神麗子
第5節 第1章のまとめ 二神麗子
第2章 条例制定のプロセス分析(1) 群馬県 二神麗子
第1節 党内研究会における条文案をめぐる議論の検討
第2節 条文案の成文成立過程における執行部と議員との相互行為
第3節 第2章のまとめ
第3章 条例制定のプロセス分析(2) 前橋市 二神麗子
第1節 前橋市手話言語条例の成立過程
第2節 関係者間の語りにみる手話言語条例の相互達成
第3節 第3章のまとめ
第3部 今後の法制化で求められる諸課題
第1章 手話通訳者養成の課題 二神麗子
第1節 はじめに
第2節 社会的背景の変化にみる手話通訳者養成・派遣制度の課題
第3節 高等教育機関における手話通訳者養成の現状と課題
第2章 手話通訳業務従事者の資格制度のあり方に関する検討 金澤貴之
第1節 はじめに
第2節 聴覚障害の重層性
第3節 手話通訳の養成制度
第4節 「手話通訳士」資格の特殊性
第5節 電話リレーサービス従事者の資格をめぐって
第6節 オペレータ養成研修が含意すること
第7節 第2章のまとめ
第3章 手話の教科化は可能か? 金澤貴之
第1節 高等学校における手話の教科化をめぐって
第2節 聾学校における手話の教科化をめぐって
第4章 聾学校教員の手話スキル習得の課題 金澤貴之
第1節 はじめに
第2節 聴覚障害児教育をめぐる今日的課題
第3節 聾学校教員に求められる専門性とは
第4節 教員養成の視点から見た課題
第5節 各大学における取り組み
第6節 聾学校教員に求められる手話のスキル
第7節 「手話サポーター養成プロジェクト」の背景と目的
第8節 手話の指導法の開発の必要性
第9節 手話通訳スキル習得の必要性
第10節 結語
第5章 第3部のまとめ 金澤貴之
初出一覧
引用文献
あとがき