京都・西陣を舞台に医療者と地域住民が協力してつくりあげた
「自分たちの病院」の記録!
住民とともに歩んだ医療
京都・堀川病院の実践から
白峯診療所・堀川病院という特定の医療機関の、約五〇年間の歴史を分析し、
それぞれの時代において、人びとの暮らしを舞台に、
医療者・住民(患者)がどのように医療や介護を捉え対応しているのかを丁寧に描出。
今日の新たな社会・経済構造の変化に応じた医療・介護の役割を模索するための大きな示唆を与える書。
【目次】
まえがき
序章
第1章 西陣地域における医療の「民主化」運動(一九四五年~一九五〇年)
はじめに
第1節 戦後の医療民主化運動
1-1 関西医療民主化同盟の発足
1-2 京都の医療民主化運動
1-3 京都府立医科大学の医療者たち──大学から地域へ
第2節 西陣の賃織労働者による医療保障運動への関わり
2-1 西陣機業の零細性と労働基準法の適用
2-2 賃織労働者の実態
2-3 事業税撤廃運動と上京生活を守る会の結成
2-4 納税の民主化運動から医療保障の運動へ
おわりに
第2章 白峯診療所の設立と医療扶助活動(一九五〇年~一九五七年)
はじめに
第1節 白峯診療所の設立
1-1 住民出資による民主的診療所の設立
1-2 医療供給状況と医療保険
1-3 医療扶助の増大と結核の蔓延
第2節 白峯診療所の医療活動
2-1 医療扶助の獲得運動と医療懇談会
2-2 西陣織物健康保険組合の設立
2-3 医療扶助の引き締め
第3節 一九五〇年代の私的医療機関の拡大と白峯診療所の病院化
3-1 私的医療機関の拡大
3-2 京都の私的医療機関と白峯診療所の拡大
3-3 診療所内の組織作りと一九五〇年代の西陣機業
3-4 病床拡大への過程
3-5 国民皆保険制度に向けて
おわりに
第3章 医療法人西陣健康会堀川病院の医療活動と住民組織「堀川病院助成会」の活動
(一九五八年~一九六九年)
はじめに
第1節 堀川病院の設立と住民組織
1-1 病院の設立と助成会の発足
1-2 助成会組織と病院組織
1-3 助成積立金制度・設備拡充資金制度・出資社員制度の創設
第2節 京都市国保の給付率引き下げをめぐる闘争
2-1 京都市国保財政の引き締め政策と京都の医療機関
2-2 京都市国保による「計画的陰謀」
2-3 京都府政と京都府医師会
第3節 堀川病院の施設拡充と医療内容の向上
3-1 医療内容の向上
3-2 疾病管理と健康管理
3-3 施設の拡充
3-4 分院の開設
3-5 堀川高等看護学院の開設
第4節 地域の中の医療活動
4-1 西陣医学研究会の調査と西陣症
4-2 長寿会の結成
4-3 往診体制の継続問題
4-4 患者会と医療懇談会の存在意義
おわりに
第4章 堀川病院における高齢者医療の取り組み(一九七〇年~一九七九年)
はじめに
第1節 疾病予防と在宅リハビリ
1-1 健康管理部の新設──疾病予防と健康管理
1-2 脳卒中後遺症患者の在宅リハビリ
第2節 老人医療費無料請願運動と長期入院による看護問題
2-1 助成会による老人医療費無料請願運動
2-2 長期入院による病棟看護の問題
2-3 急性期患者の受け入れ拒否と長期入院患者の退院拒否
第3節 間歇入院制の導入と訪問看護の確立
3-1 地域医療研究会での長期入院対策
3-2 長期入院患者と居宅療養患者の調査
3-3 間歇入院制の導入と住民の不安
3-4 居宅療養部の発足と活動・展開
第4節 居宅療養と地域支援
4-1 住民の受け入れと訪問看護制度化への要求
4-2 居宅療養患者家族会の発足と助成会による支援
4-3 「高齢者なんでも相談」から「呆け老人をかかえる家族の会」へ
おわりに
第5章 訪問看護のあらたな課題と地域医療の変容(一九八〇年~一九九四年)
はじめに
第1節 居宅療養支援と地域の福祉活動
1-1 助成会による地域福祉活動
1-2 助成会から西陣健康会へ──組織の強化
1-3 訪問看護のモデル・ケースとして
第2節 家族による介護の変容と病棟の再編成
2-1 老人医療費有料化への反対運動と老人保健法の成立
2-2 家族の「介護力」の減退
2-3 居宅療養と病棟の再編成
第3節 介護の社会化を背景にした地域医療の変容
3-1 一時預かり(ショート・ステイ)とデイ・ホスピタルの開設
3-2 制度の下での居宅療養支援
3-3 変容する西陣地域と病院の体制
3-4 老人保健施設の要請と模索
3-5 出資社員制度の変更と地域資金の返還
おわりに
終章
ここから、ときに別のものを、受けとる 立岩真也
あとがき
謝辞
付言1 父を想う
付言2 往診の記録
引用文献一覧
年表