子どもとして生まれてくるはずであったのにもかかわらず、母胎の内外で生きているのにもかかわらず、
死産児に包摂されてしまう存在。その生々しく生きる生に迫る。
死産児になる
フランスから読み解く「死にゆく胎児」と生命倫理
少なからぬ死産児は人為的に生成されている。
精確にいうならば、生きているのに「死にゆく胎児」とみなされ、新生児と承認されない。
こうした「死にゆく胎児」の来し方と行方を生命倫理的に検討し、
現代の生命倫理学において看過されている〈死産児〉という領域─「死にゆく胎児」の存在をも明確にした─を
顕在化させるとともにその重要性を明示する。
【目次】
はしがき
序 章 死産児の来し方
第一節 〈死産児〉という空白の研究領域
一 死産児とは何か
二 「死にゆく胎児」
三 中絶をめぐる生命倫理学と死産児
第二節 フランスにおける死産児と生命倫理
一 フランスにおける生命倫理
二 胚および胎児の法的地位
三 死産児に関する先行研究
第三節 本書の課題と方法
第一章 「生命のない子ども」の条件およびその証明
第一節 生まれる前に死んだ子の証
第二節 「生命のない子どもの証明書」と「生存可能性」基準
一 「生命のない子どもの証明書」──子の出生隠滅の歴史(民法および刑法)
二 「生存可能性」基準──法および医学への導入
第三節 民法典第七九条の一と「生命のない子どもの証明書」 の作成条件
第四節 二〇〇八年二月六日の破毀院判決
一 「生命のない子ども」の認定の仕方
二 「生命のない子ども」と「出産」の関係
第五節 「中絶の権利」、胚や胎児の地位、「医療廃棄物」をめぐる混乱
第六節 小括
第二章 医学的人工妊娠中絶(IMG)と「死産」の技法
第一節 生きて生まれる中絶胎児
第二節 日本における人工妊娠中絶
第三節 フランスにおける人工妊娠中絶──犯罪化および合法化の歴史
第四節 医学的人工妊娠中絶(IMG)の変遷──治療的理由による中絶とは
第五節 医学的人工妊娠中絶(IMG)における胎児の適応と審議
第六節 「死産」の技法──「胎児安楽死」と「胎児殺し」
第七節 小括
第三章 死産児の死体――行方と処遇
第一節 〈人〉の死体の概念
第二節 二〇〇五年の「管理を忘れ去られた三五一の胎児」事件──その概要と胎児の死体の行方
第三節 胎児の死体はどのような場合に保存できるのか
第四節 胎児の死体と焼却・葬儀(火葬/埋葬)
第五節 胎児の死体と解剖
第六節 問題の本質は何か
第七節 小括
終 章 結論と今後の課題
あとがき
引用文献
事項索引