色覚少数者の名状しがたい生きづらさは何に起因するのか!
色覚差別と語りづらさの社会学
エピファニーと声と耳
色覚の特性を指摘されることによって疑念にさらされ、発言権を剥奪されてきた色覚少数者。
その息苦しさは「当時者本位」の「優しい社会」が」喧伝される現代社会において、
別の形、見えにくい形に変化してむしろ強まっている。
色覚少数当事者としての自らの経験も踏まえ、「社会現象としての色覚差別」の在処を相互行為論の見地から考察する渾身の書。
【目次】
はしがき:声と耳に関する断章
序章 理論ノーツ:相互行為論と障害学
0-1 シンボリック相互行為論
あとづけのノーツ/健全な忘却/ルート=イメージ 他
0-2 障害学
取り違え問題/インペアメントとディスアビリティ/実践的な問い 他
第1章 他者化と自己疎外
1-1 いま、いかなる問題か
「いま」/「いかなる」/制度的位相と非制度的位相
1-2 「優しい社会」の落とし穴
読み書きのワーク/「色弱の人にも優しい」 他
1-3 警報の色
テレビの大津波警報/だめ押しの原理/海水浴場 他
1-4 他者化と自己疎外
問題のありか/他者の「他者化」/疎外
第2章 「パイプのけむり」の三つのエッセイ
2-1 対象と方法
2-2 自己とコミュニケーション
原体験あるいはエピファニー/リアリティ分離/人間の部類分け 他
2-3 表象=代弁の病理
批判の批判の批判/発端/差別語・差別表現と「色盲」 他
2-4 「ある」ことと「つくられた」こと
位相の区別と関連/地平/本質論の地平 他
2-5 「いる」ことと「なる」こと
返礼へのカミングアウト/やりすごしと怒りの語り/無力の実践
第3章 色盲検査表を読む:色弱者はいかにして信頼を奪われたか
3-1 残された謎
なぜ日本で?/検査表の謎/作業課題 他
3-2 「ある鉄道運転手」と「緑の犬」
厄災のレトリック/「ある鉄道運転手」:二重の過誤 他
3-3 予言の自己成就
なぞ解き/予言の自己成就/「公益上の問題」 他
第4章 善意の思想像
4-1 さらなる謎
4-2 科学の外側:「不適当であるべき」
科学外的判断/際限のない疑念/実践的な問い 他
4-3 適性の論理:「本人の為」
「生存競争」/社会進化論の類型/社会思想と日常意識 他
終章 応答性:声と耳と自己と
5-1 語りづらさ
コミュニケーション・ハザードマップ/画餅デザイン 他
5-2 「理論」と「物語」
刺激と応答=責任/「理論」をつくる:単定立構造 他
5-3 聞く耳を持つ社会
公衆と表現/隣人の声/言葉を得る
あとがき
文献
事項索引
人名索引