身体=人間の普遍性を発見し、語るために
身体の社会学のブレークスルー
差異の政治から普遍性の政治へ
身体によって人間が区別され、それにより引き起こされる社会関係とはどのような事象か。フーコー、ドゥルーズ、ターナーらの思考やフェミニズム、障害学・障害者運動を手がかりに、身体と社会の循環的プロセスに注目し、現実の社会に影響を与えうる[身体の社会学]の構築を志向する。先行研究の概念整理を超え、実証的であるよりも実験的であり、現実的であるよりも未来に向けて議論を投じることで、現実にある課題を打ち開く(ブレークスルー)ことを目指す。[身体の社会学]を基軸にした、差異と排除を超えるあらたな社会理論のこころみ。
【目次】
第一部 身体と社会
第一章 身体の社会学──身体の被制約性と能動性をめぐる問い
はじめに
一 身体の社会学──成立の経緯
二 身体の社会学──二つの取り組み
三 身体の社会学の課題
第二部 人間を分ける身体
第二章 障害者/健常者カテゴリーの不安定化にむけて
──「生物学的基盤主義」とアイデンティティ・ポリティックスへの問い
はじめに
一 障害の社会モデル──障害者の無力化に抗して
二 障害の社会モデルが見落としたこと
三 健常=普通という「実現不可能な理想」
四 障害者と“リハビリ”信仰
五 結びにかえて
第三章 障害者とポスト近代社会のバイオ・ポリティックス
はじめに
一 障害への社会的アプローチとポスト近代社会
二 日本にみる障害者の身体の統制
おわりに
第四章 障害者の自立生活にみる「生存の技法」
はじめに
一 フーコーの「生-権力」論と「生存の技法」
二 障害者と「生存の技法」
おわりに
第三部 人間をつなぐ身体
第五章 「境界侵犯する身体」──身体のエージェンシーについての試論
はじめに
一 「何かを引き起こす力」をもつ身体
二 境界侵犯する身体
三 「境界侵犯する身体」のエージェンシー
四 結びにかえて
〈補遺〉「介助者手足論」にみる「サイボーグ身体」
第六章 普遍性の構築──身体の「傷つきやすさ」を起点として
はじめに
一 人間の「傷つきやすさ」と人権
二 普遍性を阻む問題
三 「傷つきやすさ」に根ざした普遍性の構築に向けて
おわりに
エピローグ
あとがき
初出一覧