序文 金時鐘を〈読む〉ということ──呉世宗『リズムと抒情の詩学』のために/鵜飼哲
序章 「短歌的抒情の否定」が目指すもの──「まみれることのない純粋な短歌」から、「垢じまない抒情」へ
はじめに
第一節 唱歌による実存と認識の変質
第二節 日本近代詩歌からの影響──あるべき美の内面化
第三節 本研究の視座
第四節 本研究の構成
第一章 「短歌的抒情」の形成史
第一節 『新体詩抄 初編』の役割──「音調」、「平常ノ語」、「本音」
第二節 明治二〇年代における詩の形式と内容に関する議論
第三節 形式と内容のナショナルな編成──日清戦争と詩
第四節 リズムと抒情の循環──島村抱月の共同化するリズム
第五節 時枝誠記のリズム理論──リズム抒情の認識への影響について
第二章 『乳色の雲』から『再訳朝鮮詩集』へ
はじめに
第一節 金素雲訳『乳色の雲』の受容の仕方──佐藤春夫を中心に
第二節 「半創作」的翻訳とは何か──『朝鮮詩集』の基調
第三節 「こころの翻訳」──「私」と対象の分節、自己触発
第四節 金時鐘訳『再訳 朝鮮詩集』について
第五節 翻訳が認識に与える影響について──植民地状況を中心に
第三章 小野十三郎と金時鐘
はじめに
第一節 「リズム」と「音楽」について
第二節 「批評」──言葉、生活、素朴さ、科学
第三節 「批評」と「リズム」の関係
第四節 金時鐘における小野受容について──「自然」と距離をめぐって
第四章 初期詩篇論──『長篇詩集 新潟』に至るまで
はじめに
第一節 『地平線』について
第二節 『日本風土記』について──距離の多様な表現
第五章 道と自己
第一節 道と変身
第二節 内部と外部からもたらされる自己喪失の危機
第三節 「擬態」としての自己と朝鮮語の関係
第六章 意志について
第一節 帰国事業について
第二節 「あいつ」の意志について
第三節 「ぼく」の意志について
第四節 「変身」と「意志」に基づく言語実践──「日本語への報復」の現われ
第七章 自己変容を通じた世界の開示──浮上する歴史と他者の生
第一節 世界の開示(一)──日本
第二節 世界の開示(二)──故郷について
第三節 世界の開示(三)──船から骨へ、済州島四・三事件を証言する詩
結論 リズムと抒情の詩学
参考文献
あとがき