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この社会は、人の能力の差異に規定されて、受け取りと価値が決まる、そしてそれが「正しい」とされている社会である。そのことについて考えようということだ、もっと簡単に言えば、文句を言おうということだ

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立岩真也【著】
私的所有論[第2版]




文庫判並製  976頁  1800円(税別)    ISBN978-4-86500-006-1
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この本はたしかに長くはある。ただ、基本的な「動機」「主題」はいたって単純なものだ。この社会は、人の能力の差異に規定されて、受け取りと価値が決まる、そしてそれが「正しい」とされている社会である。そのことについて考えようということだ、もっと簡単に言えば、文句を言おうということだ。そして、人々は実は別の価値を有してもいるとも言ってしまい、そして別の社会を示そうということだ。(「それから――第2版に」より )。
立岩社会学の主著、文庫版となって待望の第2版刊行! 解説=稲葉振一郎。
 


【目次】

第1章 私的所有という主題
          1 私的所有という主題
              [1]能力    [2]所有=処分に対する抵抗    [3]自己決定の外側、そして線引き問題
          2 主題が置かれている環境
              [1]技術・生命倫理学    [2]社会学    [3]問いについての歴史

第2章 私的所有の無根拠と根拠
          1 所有という問題
            [1]自己決定の手前にある問題    [2]私的所有という規則
          2 自己制御→自己所有の論理
              [1]自己制御→自己所有の論理    [2]批判    [3]「自由」は何も言わない
          3 効果による正当化と正当化の不可能性
              [1]利益?(1)    [2]利益?(2)    [3]「共有地の悲劇」?
          4 正当化の不可能性
              [1]サバイバル・ロッタリー    [2]正当化の不可能性

第3章 批判はどこまで行けているか
          1 自己決定の条件
              [1]批判を検討する    [2]決定のための情報    [3]自己決定ではないとする批判
              [4]他者(達)の侵害/パターナリズム
          2 公平という視点
              [1]何が問題にされているか    [2]富者しか利用できない?    [3]貧しい者が搾取される?
          3 交換と贈与について
              [1]交換と贈与について    [2]本源性の破壊?

第4章 他者
          1 他者という存在
              [1]制御しないという思想    [2]私でないのは私達ではない    [3]他者である私
              [4]「自然」    [5]他者という存在
          2 境界
              [1]境界という問題    [2]境界線は引かれる    [3]β?その人のものでないもの
              [4]α?その人のものであるもの    [5]α/β
          3 自己決定
              [1]自己決定は肯定される    [2]自己決定の/を巡る困難    [3]自己決定は全てを免罪しない
              [4]決定しない存在/決定できない事態    [5]自己決定のための私的所有の否定
              [6]条件を問題にするということ
          4 技術について
              [1]技術    [2]「私」    [3]私が私を作為することに対する他者の感覚
              [4]離脱?    [5]他者による規定
          5 生殖技術について
              [1]抵抗の所在    [2]単なる快と不快という代償    [3]偶然生まれる権利

第5章 線引き問題という問題
          1 自己決定能力は他者であることの条件ではない
          2 線はないが線は引かれる
              [1]線引きの不可能    [2]同じであること/近いこと
          3 人間/非人間という境界
              [1]ヒトという種、あるいは、人であるための資格
              [2]人のもとに生まれ育つ人であることを受け止める人    [3]資格論の限界
              [4]その人のもとにある世界
          4 はじまりという境界
              [1]はじまりという問題    [2]生産物に対する権利    [3]他者が現われるという経験
              [4]所有と資格

第6章 個体への政治
          1 非関与・均一の関与
              [1]自由な空間    [2]均質な関与・権力の透明な行き渡り    [3]自己を制御する自己の想定
              [4]関数の不在→個体関与の戦略
          2 主体化
              [1]主体化    [2]二重予定説    [3]公教育    [4]介入・成長・消失
          3 性能への介入
              [1]環境・遺伝への注目と介入    [2]アメリカ合衆国とドイツにおける優生学
              [3]優生学の「消失」
          4 戦略の複綜
              [1]自己原因/被規定性    [2]放任/介入    [3]介入/非関与    [4]個体への堆積

第7章 代わりの道と行き止まり
          1 別の因果
              [1]社会性の主張    [2]真性の能力主義にどう対するのか
              [3]間違っていない生得説に対する無効    [4]因果を辿ることの限界
          2 不可知による連帯
              [1]保険の原理による修正    [2]可知になる時
          3 抵抗としての自由
              [1]抵抗としての自由    [2]自由であるための資格
          4 より「根底的」な批判
              [1]能力主義者である私の否定    [2]関係の自然史    [3]政治学への転換    [4]閉塞?
          5 行き止まりを通り抜ける
              [1]禁じ手を使う    [2]人のいない市場    [3]円環から抜ける

第8章 能力主義を否定する能力主義の肯定
          1 問い
              [1]いくつかの問い    [2]答が答えていないことについて
          2 I<私が作ったものが私である>の否定
              [1]手段性・個別性に関わる批判    [2]手段性の不可避性    [3]個別性の不可避性    [4]Iの否定
          3 II<能力に応じた配分>の否定+肯定
              [1]正しさはないが起こってしまう    [2]廃絶の試みについて
              [3]市場+再分配という退屈な仕掛けの、しかし退屈であるがゆえの採用
          4 III<能力しか評価してはならない>の肯定
              [1]IIIは所有・契約の原理からは導かれない    [2]I・IIはIIIを正当化しない
              [3]IIIの擁護
          5 結論と応用問題への回答と解けない問題
              [1]結論および再確認    [2]他者があることの経験の場――例えば学校について
              [3]遺伝子検査と雇用、保険    [4]他者が他者であるがゆえの差別

第9章 正しい優生学とつきあう
          1 出生前診断
              [1]出生前診断    [2]障害者の社会運動の批判    [3]女性の運動の批判・応答
              [4]残されている問題
          2 女性の「自己決定」という設定の錯誤
              [1]決定の対象は「自己」ではない    [2]負担者であるがゆえの権利という論理
          3 「当事者」の不在
              [1]「本人の不幸」という主張は成り立ちえない    [2]抹殺とする批判を採らない
              [3]範疇に対する差別?
          4 なぜ私達は行うのか
              [1]不快/不都合    [2]死/苦痛    [3]いずれも勝手な行いであることの中の差異
              [4]「正しい」優生学としての出生前診断・選択的中絶
          5 何がなされうるのだろうか
              [1]知らされてよいのか    [2]積極的な権利としての選ばない権利
          6 積極的優生について
              [1]積極的優生    [2]積極的優生は不愉快だから禁止される
          7 引き受けないこと
              [1]否定するのでなく、場から降りること    [2]小さな場に現われる    [3]私から遠ざけること

ごく単純な基本・確かに不確かな境界──第2版補章・1
          1 単純な批判と基本的な位置 
              [1]いたって単純なことが書いてある   [2]根拠?
          2 人に纏わる境界 
              [1]位置   [2]殺生について   [3]人間の特別扱いについて   [4]始まりについて
          3 人に対する人
                [1](非)介入──とくに(予め)よくすることについて 
              [2]承認の重みを軽くすること
          4 人に纏わるもの・世界 
              [1]譲渡を求める/求めないもの   [2]環界
          5 分けられるものの分け方 
              [1]ありうる(まともな)批判について    [2]三つの場面からの三つの層に分けられる分配 
              [3]強制・権力について

いきさつ・それから──第2版補章・2
          1 なりゆき 
              [1]いきさつ   [2]私に対置されるのは私たちではないと思ったこと
              [3]第2版までの些事
          2 その後 
              [1]その後   [2]社会内の境界    [3]「生命」のこと   [4]現在の歴史

おわりに
解説 稲葉振一郎
文献リスト
  索引