序章 どうすれば私は納得できるのか?
1 「当事者になる」以前
ひねくれた感じに育つ
色素がないから経験したこと
挫折といえば挫折
当事者コミュニティへの没入
2 自己解放としての障害学と社会学
障害学との出会い
私のことを説明してくれない研究・資料群
私のことを説明してくれた社会学
3 聞き届けられない語りを聞く
聞き手の期待に応えられない
自分の調査をふり返る
飲み会で語られる「あるあるネタ」 本書の(前半の)構成──歴史の再構成
第1章 注目すべき表現型から注目に値しない遺伝子型へ──遺伝学史におけるアルビノ
1 「奇形・フリーク」の脱聖化
「白い黒人」の神学的解釈
医学的問題への回収
2 黎明期の遺伝学には都合のよかった表現型
メンデル再発見と人間への適用
優生学への応用
3 戦後の遺伝学啓蒙書の地味な定番
使い勝手のよい具体例
近親結婚は自己責任で
4 ゲノム時代の新しい争点の蚊帳の外
20世紀遺伝学の名残
その他の、新たな定番たち
小括 遺伝学から否定され続けたままの100有余年
第2章 社会に働きかける「根性」「たくましさ」「精神力」の養成──弱視教育におけるアルビノ
1 労働力としての共同体への包摂
2 弱視教育の二つの踏み台
3 物理的障壁を除去した後に残るもの
4 弱視への理解の促進を担うのは誰か
小括 適応努力か啓発努力かの二者択一
第3章 アルビノ萌えの「後ろめたさ」からの逃走──オタク文化圏におけるアルビノ
1 邪悪なアルビノと白い美貌
英語圏でのアルビノ表象の伝統と、それへの批判
キャラクター設定としてのアルビノの必然性
常識を超えた破格の美貌
2 綾波レイはアルビノなのか?
「アルビノを思わせる」綾波レイ
綾波レイはアルビノではない・1──制作者の意図に依拠した否定
綾波レイはアルビノではない・2──正確/不正確を基準にした否定
綾波レイはアルビノではない・3──リテラシー不足による否定
3 アルビノ萌えのための当事者の不可視化
誰も傷つかないための「萌え」
アルビノに萌える「同盟」
アルビノに萌える〈私〉の正当化言説・1──政治的正しさ
アルビノに萌える〈私〉の正当化言説・2──常識的な欲望
アルビノに萌える〈私〉の正当化言説・3──虚構性の死守
小括 アルビノ萌えから「逃げちゃダメだ」
第4章 不可視の人びとの新しい声──近年の研究動向と当事者運動の展開
1 社会問題を定義できる主体による問題化
2 人生・生活への社会科学的アプローチ
3 当事者運動の展開
セルフヘルプグループ組織化の契機
日本アルビニズムネットワーク始動までの紆余曲折
4 メディアで語り始めた当事者たち
『恋するようにボランティアを』から『アルビノを生きる』へ
「ユニークフェイス問題/見た目問題」としての発見
小括 当事者主体の問題の可視化
第5章 新しいストーリーの生成に向けて──方法論の検討と調査概要
1 「当事者の時代」の社会調査
調査される側からの批判/調査する側の反省
方法論的・倫理的要請への応答としてのライフストーリー研究
調査する当事者のリフレクシヴィティ
「強い」主体に隠された沈黙へのアプローチ
2 どうやってライフストーリーを聞き取ったのか
語ることができた当事者たち
何のための「語りの方法」なのか
そこに居続けるための倫理
本書の(後半の)構成──ライフストーリーの検討
第6章 歴史の隙間を埋める語り
1 普通に暮らしてるんだっていうのを知ってもらえればいい
2 そうやって子どもたちと生きてきたかなー
小括 昔のほうが大変だった?
第7章 「あるあるネタ」としての問題経験
1 疲れてきちゃうんですよ
2 とにかく普通の子に追いつくために
3 自分のことなんだから自分で言いにいこうよ
4 なっかなか理解してもらえなかった
5 注意されてもしょうがない
6 でも、きれいじゃん
小括 強いられた「よい適応」
第8章 「有名な」当事者が語る目的
1 問題経験だけを語る
「活動家スイッチ」のオン/オフ
「守ってくれてる感」への違和
「みんなが簡単にできちゃうようなことができない」挫折
「相手にされない」クレイム
「気持ちを共有し合う」ドーナツの会設立へ
小括・説得的なクレイムの構成
2 一人で多様性を語る
経験的語りとアクティヴィストの語り
「貴重な資料」の蓄積と継承
教訓としての「自分の経験談」
「みんな違う人生」のうちの一事例
「正しい知識・情報」へのアクセシビリティ
小括・ひとつのモデルよりも多様性へ
3 「ハッピーエンド」として語る
「苦労してああなったってストーリー」を見せない
対処戦略を「覚える」 対処から「武器」へ
小括・運動の成果の裏返しとしての「生きづらさ」
第9章 介入的な聞き手とマイナーな語り手
1 「分かりやすさ」の抑圧
自己抑制による撤退という経験
政治化を強いるモデル・ストーリーの拒否
脱政治化するマスター・ナラティブの揶揄
タブー視を封じる生活戦略
小括・差別される主体から離れて
2 戦略としての語りがたさ
「僕は恵まれて育った」
しなきゃいけない「子どもの話」
「遺伝の問題」の語りがたさ
「困ったこと」探しと、その否定
小括・「面白い話」の回避
終章 脱政治化の歴史から政治的主体化、あるいは政治からの離脱へ
1 受動的な客体から政治的な主体へ
治療・予防すべきものとしての否定
「できる」側への二重の追い込み
差異化される身体と不可視化される経験
運動戦略としての平等の希求
2 「私たち」が定義する「私たち」の問題
情報不足と孤立のなかでの無力化
個人的努力の二つの水準
援助要請の拒否、あるいは問題経験の語りの否定
合理的選択としてのあきらめ、またはがまん
対処戦略という経験知の共有と継承
社会問題としての告発
3 肯定/否定の政治からの離脱
髪を染める、染めない、染めるのを
やめることの意味づけ
生殖をめぐる政治的無関心の語り
おわりに
沈黙と嘘と語りがたさの解釈可能性
あとがき
参考文献