日本の医療・福祉は彼らの苦痛を少しでも和らげることができるのか。
からだがやぶれる
希少難病 表皮水疱症
全身に絶え間なく生じる痛み、痒み。
この病いを知らない者から受ける差別や偏見。根治療法がない状況で、日本の医療・福祉は彼らの苦痛を少しでも和らげることができるのか。
表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa)、略して「EB」は、「日常生活で皮膚に加わる力に耐えることができずに表皮が真皮から剥がれて水ぶくれ(水疱)や皮膚潰瘍を生じてしまう病気」(難病情報センター)。
【目次】
はじめに
第1部 EB者のリアル
第1章 EB者による「病い」の語りから
1 「病い」と、「疾患」「病気」
2 H氏が語ったEB
行動の縮小化/日々のケアに翻弄される/経験で掴んだ感覚が基準/
他者からの視線を常に意識/他者との相互関係で変化する自己
3 語りから抽出される多様な問題
行動の縮小化/日々のケアに翻弄される/経験で掴んだ感覚が基準/他者からの視線を常に意識/
他者との相互関係で変化する自己
4 EBの身体に関わって起こること
第2章 排除され包摂もされる身体
1 「痛い・痒い」が伴う「他者とは異なる身体」
2 それぞれに関する先行研究
(1)痛い・痒い
(2)見た目が異なる
3 社会からの相反する意味づけ
(1)他者とは異なる身体
(2)避けられる身体
(3)一般化される身体
4 EB者たちは何を思い、どのように対峙してきたのか
(1)衣類で覆うか病状が悪化するか
(2)好きでこの格好してるんじゃない
(3)「見られたくない」と「見せたくない」
5 EBが治らずとも
第2部 EB者をめぐる社会
第3章 難病対策・難病看護におけるEB患者の位置づけ
1 日本の難病対策のはじまり
(1)スモンの発生と厚生省の対応
(2)患者運動の広がり
(3)「疾患エゴ」を排し薬害から難病対策へ
2 難病医療・看護の変遷
(1)難病対策要綱の3本柱
(2)難病患者の療養生活に関する国の調査研究事業
(3)難病看護と難病看護師
3 周縁化されたEB患者たち
第4章 ケア環境を社会に問い直す
1 EB者たちの背景
(1)患者会の必要性
(2)ガーゼと包帯
(3)孤立
2 友の会と新たなケア材料
(1)友の会発足
(2)医師も知らなかった新しいケア材料との出会い
(3)個人の努力に委ねられる日本のEBケア
3 当事者が声を上げる
(1)すごく謙虚な要望書
(2)「痛くないガーゼをください」
4 「難病患者」に指定されても
第3部 EBと生きる
第5章 EB児をめぐる家族と医療者
1 生まれつきの疾患であるがゆえに
2 妊娠と出産
(1)EBについて知らなかった妊娠生活
(2)混乱する分娩室
3 NICUへの入院
(1)厳重な医療管理
(2)必要な情報がない医療現場
4 退院そして在宅へ
(1)医療の枠組みの内と外
(2)家族総出
5「専門職の知」が存在しない不確実な在宅生活
第6章 生活を規定する要因
1 身体的課題
2 家族的課題
3 経済的課題
4 制度的課題
5 なにがEB者を縛っているのか
(1)重層的な身体制限と消極的な医療
(2)濃厚な家族支援
(3)不安定な就労環境
(4)皮膚障害を軽視する制度構造
6 「濃厚な家族支援」を引き寄せる医療と福祉
7 孤立し見えないEB者たちの困難
第7章 「病い」を再考する
1 「病い」から見るEB者の現状
(1)難病法に包摂されてもなお
(2)障害福祉制度から排除される「完全に欠損しない身体」
(3)QOLの鍵はチーム医療
2 生活を社会に開くために
(1)障害福祉制度に「皮膚障害」を位置づける
(2)毎日、訪問看護が利用できる体制づくり
資料
1 難病について
(1)1972年、難病対策要綱での定義
(2)難病対策要綱から浮かび上がった課題
(3)2015年、難病法による新たな定義
(4)増える指定難病、増える難病患者
(5)難病法による医療費助成
(6)治療開発の現状
(7)医療提供体制
(8)難病者からみた障害福祉制度
(9)「希少難病」の定義
2 インタビューについて
(1)目的
(2)対象者の選定
(3)対象者の概要
(4)インタビューガイド
(5)分析方法
(6)倫理審査およびインタビューデータの公開
初出一覧
あとがき
謝辞
文献表