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【2007年12月14日刊行】在日問題を主たるフィールドに、「当事者」イコール「マイノリティ」あるいは「被差別者」という自明視から離れ、自己言及こそ差別を語る道という立場を貫いて差別の日常に迫る、深くてセンシティヴな社会学の誕生!
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倉石一郎【著】
差別と日常の経験社会学
──解読する〈私〉の研究誌

四六判上製 400頁 ISBN 978-4-903690-17-9 3570円
(書評情報:『週刊読書人』2008年2月15日[評者:好井裕明さん]/『出版ニュース』2008年3月上旬号/『図書新聞』2008年9月6日[評者:岸政彦さん]/日本社会学会『社会学評論』59巻3号、2008年12月[評者:足立重和さん])
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社会学のものの考え方や現実への迫り方(フィールドワーク)を前提にしたとき、もっとも「有効」な差別の語り方は、自己言及あるいは語り直し、すなわち繰り返し社会学する〈私〉から出発し、そして最終的にそこへ帰って行きつつ、差別を語っていくあり方である。自己言及こそ差別を語る道、というのはいささか奇妙に思える考え方かもしれない。差別問題を研究しようとするなら、普通ならまずもって差別の「当事者」の生きられた経験に真摯に耳を傾け、凝視し、その全体をできる限り余さず記述するのが筋ではないか。研究者が自分語りなど悠長にしている暇などあるのか。なるほどそうかもしれない。しかしこの批判に二つのレベルで反論したい。第一に、私の立場は「当事者」の姿を浮かび上がらせることの価値を、いささかも否定していない。むしろ、自己言及することこそが、よりよいかたちで「当事者」像を彫り込む道だと考えている。第二に、「当事者」イコール「マイノリティ」あるいは「被差別者」という立場をとらない。そうではなく、私たちは誰でも常に/すでに差別問題の「当事者」であり、とりわけ社会学的フィールドワークの経験は、そのことをある種の痛切さとともに自覚させてくれる場なのだということを強調したい。(「はしがき」より)

【目次】

はしがき

I 地 平

プロローグ

第1章 調査経験を通して生きられる〈差別の日常〉
     ──あるライフストーリー・ インタビューの再解釈
1 リアリズムの〈声〉にかこまれて
2 リアリズム的主題への非リアリズム的アプローチ
3 名前・名のりに焦点を当てた〈差別の日常〉の解読
4 「外登証」に哄笑する場面によせて
5 「しろうと」の効用

第2章 ライフストーリー的想像力の射程と限界
     ──高史明『生きることの意味青春篇』を手がかりに
1 はじめに
2 挿話(一)
3 挿話(二)──ライフストーリー・インタビューの経験の中から
4 顔を見ては話せないこと=『生きることの意味・青春篇』の世界(一)
  ──身体の架橋性と分断性に注目して
5 顔を見ては話せないこと=『生きることの意味・青春篇』の世界(二)
  ──他者の書き言葉の「貼り付け」という所作について
6 おわりに──再び、ライフストーリー的想像力の射程

第3章 教室における日常性批判の(不)可能性
     ──二部学生による「在日」経験レポートを手がかりに
1 本章のはじめに
2 授業風景・レポート課題
3 全体的傾向
4 日常性の反復@
5 日常性の反復A
6 日常性批判の可能性
7 おわりに

II 奈 落

プロローグ
第4章 在日外国籍児童在籍校でのフィールドワーク経験の再解釈
    ──「語りえぬもの」の探索という観点から
1 序論
2 本研究の方法論の吟味──〈ナラティヴ=言語使用〉への焦点化の意義
3 調査者はいかにして参与者となるか──「本調査前史」のナラティヴ解釈
4 本調査期間中における「成員性の揺らぎ」経験と語りの発生との関連
5 「クレーム→語り」シークエンスの実際(I)
  ──研推での中国籍大辻君についての報告が作りだした〈状況〉
6 「クレーム→語り」シークエンスの実際(II)
  ──クラスにおける「対話の欠如」と授業中のボリビア籍児童をめぐる問題
7 「クレーム→語り」シークエンスの実際(III)
  ──本調査に対する最後通牒の場面から
8 暫定的結論

第5章 現場で「最終報告」したこと
    ──5年B組の子どもたちのクラスルーム・ライフ
本章のはじめに
1 まえがき
2 同じ色に染まる子どもたち──〈ファッション、遊び〉といったサブカルチャーから
3 〈休み時間〉という恐怖──私自身の原風景の再現
4 悲しき〈パロディーの天才〉──もう一つの居場所を見つけるための長い戦い
5 帰国してしまった〈彼女〉のこと──教室にとって彼女は何だったのか?
6 忌まわしい記憶──〈タッチゲーム〉はいったい何だったのか?

補遺 語っておかねばならないこと
1 ついに分からなかった「コミュニティ」のありか
2 アンビバレントだった学校調査での私の振る舞い
3 「ビデオ撮影」がもたらした決定的なこわばり
4 日常に抗する〈物語〉

III 匍匐前進

プロローグ

第6章 浮き立たせ、構成する〈力〉
    ──ある在日朝鮮人教育実践記録=物語の解読
1 問題の設定
2 実践記録の分析のための方法態度について
3 安定した物語世界の構築──教育実践記録の分析(I)
4 言語ゲームへの自閉に抗う語り──教育実践記録の分析(II)
5 結論──「語り直し」の二面性

第7章 日常に抗する生の語り=ライフストーリー
    ──知の生産活動〈場〉へのコントロールの視点から
1 本章の問題設定
2 聞き書きの意味づけ論における「抑圧の仮説」
3 聞き書き場面における権力作用に向けて──「あいだ」をめぐる分析
4 聞き書きにおける「余白」部分の発見
5 むすび

第8章 聞き合われ、語り合われる在日=物語
    ──「反ロマンティシズム」的物語論の立場からの一考察
1 「在日の生活史」という問題構成をめぐって
2 反─ロマンティシズム的〈物語〉分析のための基本視角
3 事例分析──「自伝の語り」のコンテクストの発見
4 〈物語〉分析から得られたこと──発話構成原理としての「互恵の倫理」とその意義

第9章 マイノリティにおけるセルフヘルプグループ的運動の可能性
    ──グループありらん(仮)の事例にみる「語りのコミュニティ」の生成
1 はじめに──問題の設定
2 セルフヘルプ的運動としてのグループありらん──その対外的自己表象から
3 解釈枠組──セルフヘルプ運動への社会学的=再帰的視座
4 アイデンティティ・ ポリティクスの中のセルフヘルプ運動──「後期近代社会」の位相で
5 グループありらんにおける「新しさ」の諸局面──社会運動論的考察
6 おわりに──グループありらんの現在

IV 展 望

プロローグ

第10章 内側から切り裂く
     ──「在日」における名前・名のり問題再考
1 はじめに
2 名前言説の「力強さ」
3 「不可視のマイノリティ」という見方の陥穽
4 教育言説というドメインの膨張
5 [通名使用=パッシング(ゴッフマン)]という理解について
6 おわりに

第11章 宙をさまよう第一声
     ──ライフヒストリー実践の『対話』性を問うために
1 「お小さい頃の……」
2 ライフヒストリー実践における反─対話性──全体化への欲望の帰結
3 対話性への道

結論にかえて──差別・日常・解読
1 〈日常〉から半歩はなれて立つということ
2 差別というテーマの破壊力
3 「半歩」の効用
4 差別はどこにあるのか?
5 生き方としての社会学・フィールドワーク