貧しい国々の「夢」を現実にしたHIV陽性者運動の軌跡
世界を動かしたアフリカのHIV陽性者運動
生存の視座から
世界で一番寿命の短い国々が集中する南部アフリカ。
ジンバブエ34歳、スワジランド35歳、ボツワナ36歳…目を疑うような数字の背景にあるHIV/AIDS問題。
今、そうした国々でも抗レトロウイルス薬(ARV)治療が開始され、急速に広がりつつある。
貧しい国々の「夢」を現実にしたものは、何だったのか。
なぜ、21世紀に入ってからのごく短い期間でARV治療が実施されるようになったのか。
歴史的変化を呼び起こしたHIV陽性者運動を跡付け、さらなるエイズ治療実現のための課題を抽出する。
補論=斉藤龍一郎、立岩真也
【目次】
まえがき
序章
第1章 HIV陽性者の苦しみとエイズ対策の遅れ
1 当事者によりそう対策の欠如(当事者の苦しみ):ザッキー・アハマットという生き方
2 証言する裁判官:HIV陽性者エドウィン・キャメロンの見た南アフリカにおけるエイズ対策の課題
第2章 HIV陽性者運動の展開:NGO・ネットワーク組織の事例
1 トリートメント・アクション・キャンペーン(TAC):南アフリカ
2 ケニア・エイズと共に生きる女性たちのネットワーク(Kenya Network of Women with AIDS:KENWA)
3 ナイジェリア治療アクション運動(TAM)の結成
第3章 アフリカのHIV陽性者運動がもたらした変革1(2000年以降の変革期):国際的な対応
1 国連アフリカ経済委員会主催アフリカ開発会議:アディス・アベバ(2000年12月)
2 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)(2002年1月)
3 国際エイズ治療体制構築サミット最終報告書(2003年7月)
4 3 by 5イニシアティブ
5 アフリカ連合(AU)「エイズ・結核・マラリア・その他の関連する感染症に関する マプート宣言」(2003年7月)
第4章 アフリカのHIV陽性者運動がもたらした変革2:治療薬特許権とARVをめぐる動向
1 エイズ治療薬特許権をめぐる問題
2 ARVを巡る先進国での争い:シアトルWTO閣僚会議で表面化したエイズ治療薬と知的所有権の問題
3 途上国でのエイズ治療の可能性を開く:ブラジルの挑戦
4 南アフリカの農村部における草分け的ARV治療アクセス
5 西ケープ州における抗レトロウイルス薬治療実施の錯綜する諸課題
終章 エイズに関わる当事者運動と生存
補論1 南の国々から広がる地球規模疾病負荷(GBD)との闘い 斉藤龍一郎
補論2 補足──もっとできたらよいなと思いつつこちらでしてきたこと 立岩真也
用語集
あとがき