生殖医療の発展は、多くの人に福音をもたらす一方で、大きな苦悩をもまた生み出している

生命をめぐる葛藤

ドイツ生命倫理における妊娠中絶、生殖医療と出生前診断

小椋宗一郎

[定価]   本体2,500円(税別) 

[ISBN]978-4-86500-119-8 C0036
[判型]A5判並製
[頁数]192頁

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「妊娠葛藤相談」が法制度として整備され、社会に深く根付いているドイツの現状、制度とその経緯から、妊娠中絶や出生前診断、生殖医療などにおける相談(カウンセリング)の重要性を提示し、人間の生命の誕生をめぐる「葛藤」の問題を倫理学的に考察する。

【目次】


はじめに

第1部 妊娠中絶

第1章 「妊娠葛藤」とは何か――生命尊重と女性の人生をめぐる闘争
 第1節 旧東西ドイツと統一ドイツ――妊娠中絶に関する新制度の成立
 第2節 権利の衝突と妊娠葛藤──1993年連邦憲法裁判所判決
 第3節 女性の「最終責任」と刑法の予防的効果
 第4節 反対意見における女性の「人間の尊厳」
 第5節 男性の責任、国家の義務
 第6節 “問題は女性の自己決定権ではない”――米国ロー判決との比較

第2章 ドイツにおける「妊娠葛藤相談」について――義務づけられた相談をめぐる諸問題
 第1節 妊娠葛藤相談に関するドイツの法制度
 第2節 妊娠葛藤相談における困難――『強制された相談』
 第3節 中絶と心のケア

 【コラム】「心理社会的相談」とは何か

第3章 日本における妊娠相談とその問題点
 第1節 日本における妊娠相談の経緯――子ども虐待防止をめざして
 第2節 日本における「妊娠相談事業」の現状と問題点
 第3節 ドイツの妊娠葛藤相談が示唆するもの

第4章 世界における妊娠中絶
 第1節 世界における妊娠中絶の概況
 第2節 妊娠中絶に関する法規制と中絶率
 第3節 若年妊娠と女性に対する暴力
 第4節 普遍的人権と文化相対主義
 第5節 「文化に配慮したアプローチ」
 第6節 世界における中絶論争のアリーナ――カイロ行動計画8.25条

第2部 生殖医療と出生前・着床前診断

第5章 代理出産
 第1節 「代理母」という概念の歴史
 第2節 医師会ガイドラインから代理出産禁止の法制化へ
 第3節 代理出産契約の無効性――1985年12月判決
 第4節 養子縁組と「子の福祉」
 第5節 ドイツと日本――「子の福祉」と「子ども願望」

第6章 不妊に関わる医療と相談
 第1節 不妊治療と生殖医療――医師と患者の対話の重要性
 第2節 不妊についての心理社会的相談
 第3節 「子ども願望」の捉え直しのために

第7章 「新型出生前診断」をめぐるドイツの生命政策
    ――ドイツ倫理評議会答申(2013年)と妊娠葛藤法改正(2009 年)
 第1節 「新型出生前診断」をめぐる日本とドイツの現状
 第2節 ドイツにおける医学的適応
 第3節 出生前遺伝子診断の条件――遺伝子診断法
 第4節 妊娠葛藤法第2a条――児の疾患や障害に関する相談の法的義務付け
 第5節 ドイツ倫理評議会答申――障害を持つ子を受け入れる社会
 第6節 ドイツ倫理評議会における議論の対立――「自己決定」をめぐって
 第7節 子どもの受容と出生前診断の未来

第8章 着床前診断をめぐるドイツの論争――2011年のドイツ倫理評議会答申を中心に
 第1節 胚保護法(1990年)と着床前診断の既遂事例に関する判決(2010年)
 第2節 ドイツ倫理評議会答申「着床前診断」までの経緯
 第3節 「限定的許容」の論拠としての「妊娠葛藤」
 第4節 禁止論の根拠
 第5節 なぜドイツは着床前診断を容認したか

おわりに――「妊娠葛藤」とは何か
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